ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

彗星の住人

2003年09月12日 | 読書
彗星の住人
島田 雅彦著 : 新潮社 : 2000.11

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最近こんなに夢中になって読んだ小説があっただろうか?
 4代100年にわたる恋の物語、登場するのは蝶々さんとピンカートン、マッカサー元帥に原節子、描かれるのは日米関係史。

 波乱万丈の恋物語が一人の盲目の女性によって語られ、その聞き手は彼女の姪である。さらにその語り部と聞き手二人を描く超然者たる作家の語りがある。
 物語は複雑で、過去を自在に遡りまた現在へと揺れ戻し、再び大過去から小過去へ向かって流れる。

 「純文学書き下ろし」と銘打たれた小説であるが、エンタメ作品としてのおもしろさを存分に味わえる作品だ。作家が歴史について語りたいこと、戦争について、外交問題について、ナショナリズムについて、それらの硬質な部分のエッセンスが中性子星なみに凝縮されている。そして超新星へと大爆発を遂げるそのいまわの際でこの作品は終っている。
 
 早く次が読みたくてたまらなくなること請け合い。もー、わたしはこの続き『美しい魂』が読みたくて読みたくて身もだえしております。
 
 歴史に題材をとり、20世紀を総括する意欲に満ちたファンタジーとしては、『海辺のカフカ』よりはるかに血沸き肉踊る作品。

 ぜひNHKの大河ドラマにとりあげてほしい。無理だろうなぁ。(bk1)