ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ガリレオの苦悩」

2008年11月12日 | 書籍関連
東野圭吾氏の本が、2冊同時刊行された。「ガリレオの苦悩」と「聖女の救済」で、共に探偵ガリレオ・シリーズで在る。前者は5つの短編から成り、後者は同シリーズ2作目の長編。先ずは、短編集を手にした。

「天才物理学者・湯川学が、一見『超常現象』と思われる不可解な事件を科学の力で解き明かして行く。」というこのシリーズは、東野作品の中で最も有名な存在になったと言える。「『落下(おち)る』では遠隔操作による死体転落事件」、「『操縦(あやつ)る』及び『密室(とじ)る』では密室殺人」、「『指標(しめ)す』では超能力の真贋」、そして「『撹乱(みだ)す』では予告殺人」が題材。此処迄書くと、「あれ?もしかしたら・・・。」と思われる方も在るだろう。実は「落下る」と「操縦る」の2作品、先月に特別編として放送されたドラマ「ガリレオΦ」に用いられているのだ。

文系の人間の中には、理系科目に強い苦手意識を持っている人が少なくない。自分もそので、理系科目の試験が嫌で嫌で堪らなかった。しかし社会に出て或る程度経った頃から、数学や理科関係の本を読む機会が増えた。必要に迫られて読む様になった訳では無く、単純に「欠落している知識を得たい。」という気持ちから。特に理科関係の本を読んでいると、普段の生活で何気なく見聞している事象の根底に、「そんな理由が在ったのか!」と感動めいた思いをさせられる事が結構在り、余計にその手の本が読みたくなるもの。東野圭吾氏が自身のエッセー集で触れていた様に、潜在的な理系人間というのは意外と居り、その導入部を如何に見付けるか(又は、見付けさせるか)が鍵なのかもしれない。

そんな潜在的理系人間の心を、この探偵ガリレオ・シリーズは擽る様に思う。今回の短編集、例えば「密室る」の中には、一見何でも無さそうなのだけれども、ミステリーを読み漁っている人間ならば「これは、何かしら大きな意味合いを持ってるに違いない。」と思わせる記述が在る。それは判るのだけれども、「では、どういう意味合いなのか?」というのが、哀しいかな文系人間の自分には判らない。湯川が謎解きをする過程で、やはりその記述に大きな意味合いが在った事が判明し、それが具体的にどういう事なのかが提示されるのだが、それによって「そういう事なのか。」という感動が自分の中に生まれる。「少しは頭が良くなったかも。」という満足感と共にだ。

探偵ガリレオ・シリーズは面白い。「これからもこのシリーズを続けて書いて欲しい。」という気持ちは在るが、同時に「魔球」や「手紙」、「流星の絆」といった泣かせる長編も期待している。

総合評価は星3.5個

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5 コメント

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まきゅー・・私もイチオシです! (おりがみ)
2008-11-12 12:48:02
この時期に読むと、また一段とぐっときちゃうおはなしかも。
野球のボールやバットの動きって「とっても物理だなぁ」って思います。湯川センセに野球場の事件を解決させる新作希望です。(無理?)
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Unknown (マヌケ)
2008-11-13 21:02:23
東野圭吾作品がベストセラー上位独占ですね。 理科実験セットがどうしても欲しくて、学校で使うとか、みんなが持っているとか、もう高学年だったので泣きわめくは無理だったのでどうにかこうにか親を理屈で攻めて買ってもらいました。 フラスコや試験管やビーカー、アルコールランプなどのセットでした。 まずやったのが砂糖と塩を混ぜたらどんな味がするのだろうと思い、実験と言うよりも料理か?なのですが、試験官に入った砂糖と塩の混ざった濃厚な水を一気しました。 そして吐きました。 これがバカな子供の好奇心のなせる技です。 買ってもらったはいいが、結局ほとんど実験らしいことはやらずじまいでした。 小学校から中学まで理科は大好きでしたが、高校に入ると数学に近いものがあり、まったく嫌いになってしまいました。 数学と物理化学をしなくてよいという理由で文系です。 教育の方法が理科嫌いの生徒を生み出しているような気もします。 物理や化学が世の中の何に応用されているのかをもっと教えてくれれば将来の職業選択も見据えた努力の仕方があったかもしれません。 と、後悔のような念もあります。 あくまでも個人的な後悔ですが。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2008-11-13 21:38:52
書き込み有難う御座いました。

「東野圭吾氏という作家がいる。」。4年前に書いた記事「賞に縁遠い男”東野圭吾”」の出だしです。20年程前に彼の作品に魅了されて来た自分ですが、4年前の段階ではそれ程知名度も高くなく、故にそういった書き方をした訳ですが、今や押しも押されぬ人気作家。隔世の感が在ります。

子供の頃は「○年の科学」に付いた付録や、クリスマスのプレゼントで貰った「電子ブロック」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF)に夢中になりました。それが学校で試験の為に勉強しなくなったと途端、理系科目は大の苦手に。教える側も短期間で色々教えなければならないという制限が在りますし、その中で全ての生徒に理解させるというのは難しいでしょうね。それは判っているのですが、仰る様に「その理論が、世の中にどう役立っているのか。」といった切り口等、生徒がもっと興味を持てる教え方が在れば良いのだろうけど・・・と思いますね。
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Unknown (久保課長)
2008-11-19 17:38:52
子供の頃から算数・数学が他の科目よりは得意だったので高校まで理系クラスに在籍しておりました。が、物理・化学が全くダメで結局、「文転」して大学は文系に・・・。
こんな私でも「ガリレオシリーズ」は、詳しい原理まではわからなくても読んでて非常に楽しいですね。以前、同じ東野圭吾著の「天空の蜂」を読んだ際は原発の仕組みに妙に惹かれ、色々調べてみたこともあったかな。

マヌケさんもおっしゃってるように、科学が世の中でどういうふうに実際に使われてるかを学校で教えてくれてたら、もっと興味を抱くことができ、そのまま理系の道を歩んでいたかもしれません。
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>久保課長様 (giants-55)
2008-11-20 00:13:56
書き込み有難う御座いました。

小学校の頃は算数や理科が嫌いでは無かったのですが、中学に入ってから嫌になって行きました。高校に入って暫くは「理系に進みたい。」という思いが在ったものの、頭が付いて行かず、早い段階で文系転向を決めた次第。超初期理系崩れと言えますが、潜在的には理系科目を勉強したいという思いが今でも在り、だからこそ東野作品に惹かれてしまうのかもしれません。
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