10月27日に行われたプロ野球ドラフト会議にて、ジャイアンツの一本釣りが濃厚と思われた東海大学の菅野智之投手を、ファイターズが1位指名&交渉権獲得した事に関し、様々な意見が出ている。
「情の面では忍びないが、結果としては良かったのかも」という記事で記した様に、「欲しい選手を、自由に指名出来る。」というのがドラフト会議の意味合いで在るのだから、万難を排して菅野投手を1位指名したファイターズはプロのチームとして天晴れだし、「情け知らず。」云々とファイターズが批判される筋合いでは無いと思っている。大エースのダルビッシュ有選手が「来季はメジャーに移籍するのではないか?」と噂されている以上、「高いレヴェルの投手を取りに行く。」というのは当然の事だし。
其の一方で「伯父・原辰徳監督の下で、どうしてもプレーをしたい。」、「甥っ子の菅野投手を、自分の手で育てたい。」という原監督&菅野投手の気持ちも、痛い程判る。「理屈の面」と「情の面」で、悩ましい話では在る。
菅野投手は、どういう判断を下すのだろうか?ジャイアンツ・ファンの自分だが、「彼はファイターズ入りした方が良い。」と考えている。伯父と甥という関係だと、どうしても周りに与える影響はマイナス面が多い様に思うから。
又、長野久義選手の場合は「どうしてもジャイアンツでプレーしたいから。」という思いからドラフトでの指名を2度拒否したけれど、菅野投手の場合は「ジャイアンツでプレーしたい。」というよりも、「原監督の下でプレーしたい。」という思いが強い様に感じられ、そうで在れば例え“遠回り”をしてジャイアンツに入ったとしても、其の時に伯父が監督を続けているとは限らない訳だし。
で、話を元に戻すが、様々な意見の中には雫石鉄也様の様に、ドラフト制度自体に疑問を呈されている方も居る。「ドラフトは憲法違反ではないのか」という記事を、読んで戴きたい。
ドラフト制度に関するメリット及びデメリットを挙げるならば、大方次の通りだろう。
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=ドラフト制度のメリット及びデメリット=
【メリット】
【デメリット】
・ “実質的に”、選手側には「チームを選択する自由」が無い。(「職業選択の自由」が侵されている。)
・ 何のチームも有力選手を自由に指名&獲得出来る可能性が出た事から、企業努力を怠るチームが現れる事も。
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「ドラフト会議は、職業選択の自由を侵すシステムではないか?」という声に対して良く用いられるのが、「ドラフト制度は『プロ野球選手になるという自由』は保証しており、『何処のチームに行けるかの自由』が無いだけ。プロ野球界全体を会社と考えれば、12チームは其れ其れ部署と言って良い。我々一般人は何処の会社に行きたいかを決める自由は在るけれど、入社したら何処の部署に行くかを決める自由は無く、其れと同じ話だ。」という論。
其れに対して雫石様は、「だったら、12球団、新人の待遇は全て同じにしなくてはならない。金銭面は選手其れ其れ能力が違うから、収入の多寡は仕方が無い。しかし、球場のロッカーから、入居する寮、食事に到る迄、12球団が統一した規格を作り、全く同じ待遇で新人前主を遇しなくてはならない。何処の球団に入っても、金銭面以外は全く同じ待遇、金銭は貴方の活躍次第、というのでないといけないのではないか。」と指摘されている。「何処の球団に入っても、金銭面以外は全く同じ待遇。」というのは現実的に不可能だろうけれど、仰っている事は正論。
***************************** 【パ・リーグ】 ホークス: 2011年(今年) ファイターズ: 2009年(2年前) ライオンズ: 2008年(3年前) バファローズ: 1996年(15年前) ゴールデンイーグルス: 優勝経験無し(球団発足は6年前) マリーンズ: 2005年(6年前) 【セ・リーグ】 ドラゴンズ: 2011年(今年) スワローズ: 2001年(10年前) ジャイアンツ: 2009年(2年前) タイガース: 2005年(6年前) カープ: 1991年(20年前) ベイスターズ: 1998年(13年前) *****************************
「ドラフト会議は、職業選択の自由を侵すシステムではないか?」という批判に対し、プロ野球界は「FA権取得迄の期間短縮」という形で、選手が希望するチームへ早く移籍出来る様にはした。国内移籍のFA権取得は累計7年(累計1,015日)というのが最短で、此れならば“働き盛り”の年齢で、憧れのチームに移籍する事も可能だろう。「ドラフト会議で選手達が好きなチームを選べない代わりに、頑張って実績を残せば、昔よりも早い段階で好きなチームに移籍させて上げる。」という事だ。だから「職業選択の自由云々の問題」に関しては、ドラフト会議は其の“補償”を考慮していると自分は判断する。(実績を残せなかった選手達に関しては、当該しないけれど。)
特定のチームが突出して強いというのは、個人的に好ましく思っていない。「毎年、何のチームが優勝してもおかしくないという、戦力が拮抗した状態。」というのが理想的で在り、プロ野球界も盛り上がる事だろう。だから「チーム間の戦力均衡化が図れる。」というので在れば、ドラフト制度は決して悪いシステムでは無いと思う。
しかしだ、上記の「各チーム、最後にリーグ優勝を果たしたのは何時?」を見て戴ければ判る様に、パ・リーグの場合は「1チームがリーグ優勝を果たすのに必要な平均年数」(優勝経験の無いゴールデンイーグルスの場合は、便宜的に「球団発足年から6年間優勝していない。」という設定で計算した。)が約5.3年で在るのに対して、セ・リーグの場合は8.5年と3年以上も多くなっている。近年で言えばドラゴンズとジャイアンツ、そしてタイガースが優勝争いをし、カープとベイスターズが低迷を続けているという構図だ。
何度も書いている事だけれど、セ・リーグではジャイアンツの次に好きなのはカープ。「資金的に決して恵まれていない中、猛練習と知恵で頑張っている。」というのが、カープを好きな理由。だから、何とかカープには優勝を果たして貰いたいのが、最後の優勝から四半世紀も過ぎている現実。「チーム間の戦力均衡化が図れる。」というドラフト会議の御題目、パ・リーグでは結果を出しているけれど、セ・リーグは「否。」と言っても良い。
総合的に考えると、自分は「ドラフト制度」の存在自体を否定は出来ない。「チーム間の戦力均衡化が図れる。」というのが少なくともパ・リーグでは果たせているし、セ・リーグに関しても「ジャイアンツ等がカープやベイスターズを草刈場にして、FA権を得た選手達を無闇矢鱈と取り漁らなければ、現状よりはもっと戦力均衡化が図れた筈。」と思うし。
唯、ドラフト制度の存在は否定しないものの、改善点は未だ未だ在りそう。「長期間低迷し続けているチームに対して、もっと違う形で指名権の優位性を与える。」(指名権の優位性を得る為に、態と低迷するチームが出て来る可能性も在り、其れは悩ましい所だが。)とか「選手の希望を、もっと掬い上げる方策はないか?」等々。物事に「ベスト」というのは中々無いけれど、「ベター」なら在ると思うのだ。
球団経営者の都合だけで、選手本人はまな板の上の鯉でいいのでしょうか。
プロ野球界全体が1つの会社だというのは詭弁だと思います。経営者も違うし株主も違います。自動車つくりがしたいと願う人は、トヨタ、日産、ホンダ、どこに入るのも自由でしょう。自動車業界全体が1つの会社という理屈はなりたたないでしょう。
本当にプロ野球が1つの会社なら、日本プロ野球ホールディングという会社をつくって、その傘下に各球団があり、利潤はいったん親会社に集約して、それを順位が上位の球団から配布していけばいいでしょう。もちろん1つの会社だから、選手の待遇は同じにします。
「プロ野球界全体が1つの会社」という考え方は当たっている部分も在り、違っている部分も在る様に思います。「経営者も違うし、株主も違います。」という点で言えば、1つ1つのチームを一般企業の「部署」と考えれば、其処を実質的に統括している「部長」が「経営者」と置き換えられなくもないし、非常に苦しい設定では在りますが「派閥」を「株主」と言えなくもない様な。
唯、我々は「此の会社に行きたい。」として自らが応募出来るのに対して、選手達は「自らの応募が出来ない。」という違いは在りますね。意に沿わなければ「断る。」という形で、自らの意思を示すしかない。
「日本プロ野球ホールディングという会社を作る。」という案、此れは面白いと思います。でも実際問題としては、某ナベツネ辺りは「そんなのは社会主義のシステムだ!」と猛反発しそう。自らの都合で「資本主義の論理」を持ち出したり、「社会主義の論理」を持ち出したりと、とても身勝手な御仁ですから。
プロ志望者は膨大な数おり、球団はそこから少数を選び取ります。「選手の意思」を問題にするなら、そもそも指名されなかった選手はどうなるんでしょう。希望を言っていい逸材選手と、そうでないその他大勢との線引きは一体誰が決めるのでしょうか?
プロバスケットボールのbjリーグも、新人選手はチームを選ぶことはできません。「リーグがまとめて採用した」という扱いで、各チームに振り分けられているそうです。
プロリーグの側が、自分達の発展のために選手を選んでいるのであって、逆ではありません。「それがいやならいいよ、プロ志望の選手は他にもたくさんいるのだから」というのが、理不尽ではあってもプロスポーツの世界というものかと思います。
菅野智之投手の交渉権をファイターズが獲得した事に対して、菅野投手の祖父で在る原貢氏が「ファイターズからは『(指名に)行きますから。』という挨拶が一言も無かった。此れは人権蹂躙。ドラフトに掛けるなら、挨拶が両親の所に普通在る。」と憤慨したとか。他チームからの横槍が入る等、ドラフトの戦略上「隠密作戦」は在っておかしくないし、ドラフトに掛かる選手達、特に下位指名の選手達には事前の挨拶が在るとは思えず、「事前の挨拶が無いから人権蹂躙。」という原氏の論理は“理屈の上で”(感情面は別にして)理解出来ない。「孫は能力が高いのだから、特別扱いされないのはおかしい。」的な感覚が見え隠れしている様で、望ましくないコメントだったと思います。
bjリーグは、そういうシステムになっているのですね。で在るならば、或る意味プロ野球の方が選手達の“拘束度”は低いと言えるのかも。唯、バレー界全体の発展を考えると「在り」なのかもしれないけれど、選手達の気持ちを考えると複雑な気も。選手達が単なる「駒」扱いされている様に感じなくも無いし・・・。
仮に、選手の意向が尊重されるようになり、ドラフト制度が廃止されたとしましょう。
子供たちは先ず強いチームにあこがれます。知名度の高いことも有利に働くでしょう。結果、財力があり有名でもあるチームに有力選手が集中し、採用枠に漏れた選手は仕方なく第2候補、第3候補を目指すことになり、常勝軍団とお荷物球団がはっきりしてくるでしょうね。ドラフト導入以前がそうであったように。
「あそこでなきゃいやだ」と駄々をこねるようでは、ほんとにプロ野球が好きなのかどうか、疑ってしまいます。プロ野球が好きなのではなく、その球団が好きなだけ?プロになる自覚と根性があるのかどうか。
実力主義の世界だからこそ、どのチームに籍を置いても、其処で能力を発揮して一流を目指し名声を勝ち取っていく。プロの人気商売だからこそ、そうあって欲しいと願うのですが。
かつては反骨精神旺盛な選手もいくらかはいたようで、能力はあってもあえて弱小球団に飛び込んだ選手もいたようですが、収入から待遇面まで格差が付いてしまったら、果たしてそんな無茶をする選手が現代に現れるかどうか。
特定のチーム許りが優勝争いに絡み、特定のチーム許りが最下位争いをしている状況というのは、決して好ましくない。そういう意味ではパ・リーグは健全で、逆にセ・リーグは不健全と言えましょうね。
唯、特定の組織だけが利益を享受するというのはどうかと思うけれど、企業努力を必死で行っている場合で在れば、或る程度の利益を享受するのは悪い事では無いし、逆に企業努力を明らかに怠っているチーム迄、「平等」という手を差し伸べるのも疑問が在る。何処のチームも企業努力を怠らず、其の結果として戦力が拮抗し、利益も生まれるというのが、野球ファンとしては望ましい。
「寄らば大樹の陰」という思考が最優先される人も勿論居るでしょうが、「働き場所を見出せなければ、結果として自分は活躍出来ない。」と考える賢明な人も居ると思うんです。ドラフト制度を廃止したとして、一時的には有名チームに選手がどっと集まるかもしれないけれど、軈ては他のチームを優先的に志望する選手達も出て来るのではないかという気もしています。
とは言え、基本的には「ドラフト制度維持」の立場ですけれども。ドラフト制度を維持しつつ、もう少し選手達の意向も反映される形がないものかと。逆指名とかでは無く・・・。
AK様の今回の書き込み、冒頭の部分で「其の儘載せるのはどうかなあ。」と感じる表記が在りましたので、「当該部分を削除する形」で載せさせて貰いました。(削除により、AK様の論旨に影響を与える事は無いと判断しました。)申し訳御座いませんが、御了承下さい。
【AK様の書き込み】
コメント陣を拝見するとドラフト否定派、ドラフト肯定派の方に分かれておられるようですが、私の意見。
ドラフトがなかったら横浜ベイスターズ、千葉ロッテ(昔の)は1990年代の時点で無くなっていたのではないか。
しかしどう考えても条件悪そうな球団には入りたくはないわなあ。
和田(中日)、清原、内川みたいな例もある。大体ドラ1の有望株が活躍するとは限らない(例:那須野、一場)。そのときまで待つと言う手はある。
菅野君について:爺様が出てくる感じは現在の大方の日本人には奇異に映るのではないか。よほどの農村部にでも行かなければ祖父母が進路に口出すする例は稀になっていると思う。口出ししても無視されるほうが多いであろう。
一年の浪人が吉と出るだろうか?スポーツ選手の輝ける時間は短い。しかし本人の人生なのでどうでも良い(本人の意思が殆ど見られないという意見もあるが、あの環境で本人の意思などないであろう)。
1982年のドラフト会議、ジャイアンツは此の年の超目玉で在る荒木大輔投手を1位指名するも競合し、籤で外れました。其の外れ1位として取ったのが、“球界の大エース”となった斎藤雅樹投手。2006年の坂本勇人選手も堂上直倫選手の外れ1位ですし(堂上選手も非常に良い選手ですが。)、運命とは面白い物です。
今や大スターのイチロー選手も、プロ入りはドラフト4位と決して上位指名では無かった。1位指名されたからプロの世界で活躍出来るという訳では無く、「ドラフト1位」というのは「入って暫くの間は、1軍で起用され易い。」という程度の意味合いしか無い。自分が好きだった選手の1人・西本聖投手なんぞはドラフト外で入団し、努力で超一流選手に上り詰めたのだし。
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【AK様の書き込み】
菅野君についてだが、原一家と東海大と巨人の物語を知っている人は一体今いくつ以上なのだろうか。書いてる記者も知らないのではないか。デスククラスでも怪しい物がある。おそらく今40歳ぐらいの人は原辰徳の全盛期は知っているが、甲子園のスター時代や「親子鷹」物語は知らないのでは。
とりわけ日本ハムのファンは新しい人、若い人が多いと思います。首脳陣も良くも悪くも新しい、啓けた人が多いと思う。一方で古さの象徴のような巨人、原貢は彼らには悪しき因習の象徴の様に映ること、そしておべっかをつかう記者、テレビに悪印象を持つ人が増えるであろうことは想像に難くはないです。だけども正義を振りかざしたクリーンな世の中が住みづらいこともありますわな。
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原辰徳“選手”が最初にマスメディアの注目を集めたのは、彼が高校1年の時ですから、1974年ともう37年も前の事になります。東海大で活躍した頃、例えば大学4年の時でも1980年ですから、31年前の話。此の時に小学1年でも6~7歳ですから、原親子の「親子鷹」を知っているのは30代後半がギリギリといった感じでしょうね。
今回の問題、「情」と「道理」の何方に重きを置くかで、其の考え方は変わる事でしょう。個人的に「情」の部分も理解出来るけれど、「道理」としてファイターズの判断は決して間違っていないと考えています。「ルールに反せず、且つ『正しい。』と判断した事は、何事も恐れずに遂行する。」というのは、非常に勇気在る行為。
「正義を振りかざしたクリーンな世の中が住みづらいこともありますわな。」→「白河の清きに魚も住みかねて もとの濁りの田沼恋しき」という落首が思い浮かびました。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E6%B2%BC%E6%84%8F%E6%AC%A1#.E4.BA.BA.E7.89.A9)