本書はタイトルに YouTube という名前を冠しているものの、内容は YouTube にあらず。2007年初頭、ニューヨークはマンハッタンに滞在した著者がアメリカという国の現代そして未来を政治・経済の観点から綴ったエッセイである。YouTube という単語はネット時代の代名詞として何度か出てくるに過ぎず、それを期待していると見事に肩透かしを喰らう。読者の気を引きたいのはわかるが、やっぱり書籍のタイトルは内容を端的に表すものであって欲しい。ときに斬新あるいは奇抜なタイトルはそれ自体が強力な宣伝となり得るが、単に流行語をくっつけるという安易な発想は、せっかくの読者に対して陳腐なイメージを与えるだけだと思う。
とはいえせっかく借りた本だから読んでみた。エッセイという読みやすい形式であったこともあり、最初の悪印象に反して結構楽しめた。ああだこうだと分析が先行する内容だったら、さぞかし詰まらないものになっていただろう。それだけに著者の体験談は固くなりがちな話題に程よく柔らかさを与えている。
読み終えて益々タイトルの選択を誤っていると感じた。これはサブタイトルに用いられている "メディア革命" という言葉にも当て嵌まる。本書では殊更 IT に関して紙面を割いているわけではないからである。オリジナルのコラムは「世界の街角から」だったそう。それに倣って「ニューヨークの街角から」あるいは「マンハッタンの街角から」でも良かったのではないだろうか。そのほうが余程等身大で本書を表していると思う。ただ自分自身 "YouTube" というキーワードで見つけたのも事実。今の時代、ネット検索に迎合したタイトルの付け方が大事ということか? 何となく出版社側の思惑が見え隠れしていて後味の悪さを感じずにはいられなかった。勿体ない・・・。