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真夜中の映画&写真帖 

渡部幻(ライター、編集者)
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傑作中の傑作・・・神代辰巳の「赫い髪の女」の鮮烈でかっこいいオープニング

2010-07-16 | 映画作家











憂歌団のけだる歌が流れるなか、トンネルの向こうからやってくる、赫い髪の女。
大型トラックがすれ違い、その瞬間、振り返り、その髪を揺らした女のスローモーション。
彼女の横をトラックがすり抜けると同時にストップモーションとなり、タイトルが出る。

「赫い髪の女」

70年代で最高の映画作家の一人神代辰巳の代表作、このファーストシーンは真に映画的だ。
たった73分の上映時間。
そのなかに繰り広げられる「男と女の性」。
主演は宮下順子と石橋蓮司である。

わびしげな雨で湿気ったシネマスコープ画面は、文字で形容しがたい脱力感に満ちている。
この世に男と女が存在するかぎり逃れられぬセックスの、その哀しさと滑稽が、かったるく横溢する。
神代はそのさまを「仕っ方ねえなあ……」と見つめている。そのたぐい稀なるやさしさ。
なにもかもが整理されてしまう21世紀。
彼のような「才能」が存在することが許されたなんて、70年代は「いい時代」だと思う。


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