ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「アメリカ“刑務所産業”」

2018-11-28 05:56:59 | ドキュメンタリー


「アメリカ“刑務所産業”」

このドキュメンタリー、本当に怖かったです。
アメリカって良いなと思う部分と恐ろしいと思う部分が極端です。

日本って駄目だな~と毎日言ってるようなところがあるんですが、アメリカの闇ってまじで怖い。ディストピアっていうのはアメリカの中にすでにあるのだと思わせられました。

「アフリカ系アメリカ人として、アカデミー賞で初めて監督賞を受賞したロジャー・ロス・ウイリアムズが手がける。刑期を繰り返した親友の死をきっかけに取材を始めた彼は、黒人を標的にする警察と差別的な判断を下す司法が“刑務所産業”を支えていると指摘。企業が群がる市場規模は9兆円に達し、“受刑者数を多く・刑期を長くする”傾向を生んでいるという。世界の公共放送が参加する「Why Slavery?」シリーズの5本目」

ドキュメンタリーを進めていくのは『ぼくと魔法の言葉たち』の監督ロジャー・ロス・ウィリアムズ。私は不勉強で彼を知りませんでした。なのでこのドキュメンタリーの中で自身も高校時代に友人と麻薬売買を行っていたという話を聞き、この人は何者だろうと思いました。
ロジャー(監督)は「この町にいたら自分はダメになってしまう」と考え町を飛び出すのですが、友人トミーはそのまま町にとどまり犯罪を続け「アメリカの刑務所システム」に飲み込まれてしまった、というのです。
「アメリカの刑務所システム」とは何なのでしょうか?

アメリカでは現在200万人以上の受刑者がいるそうです。その大規模な人数は儲かるビジネスを生み出しているのだというのです。刑務所内の電話は法外な価格をつけることができ、刑務所内独特の家具が製造販売がされて大きな利益となっています。また貧困層は高額な保釈金を払えず保釈金業者から借金することになりその返金支払いに苦しみます。
受刑者たちは刑務所の運営を自分たちで行いますが、その労働に対して一般の最低賃金以下どころか1ドル以下のの給料しかもらえないか、ただ働きの場所もあるのです。
しかも受刑のための費用がかかるとして多額の借金を背負うのですが、この賃金では到底返すことはできず借金を抱えたまま出所しますが、無論働き口はたやすく見つからず再び犯罪に走るか、収入を得られなければ借金の返済日を過ぎた時点で再び逮捕されるのです。州外に逃れることはできません。

このどちらにしても刑務所に送り返されてしまう、という無限のループからは逃れることはできないとロジャーは語ります。
この刑務所システムに組み込まれてしまうのは貧困層であり、その多くが黒人です。

アメリカは奴隷制度を廃止しましたが、この刑務所システムという奴隷制度からは逃れられないのです。

本来ならば・・・と番組は問いかけます。
この刑務所システムにかかる費用を犯罪者を更正することに使えるはずではないのか?と

だけども「金が儲かる」という呪文はあらゆる不正を歪ませてしまいます。
貧しい人々の人権を踏みにじったとしても「犯罪に対する当然の報いだ」という言葉で正当化してしまうのでしょう。
それを改善していくという道はあえて見つけたくないのです。そこに利益はないからですね。

ディストピアは怖い、と思っていましたが実はもう私たちはその中にいるのかもしれません。



このドキュメンタリーで思った別のこと。

この放送のディレクターであるロジャーは幼いころから自分がゲイであることを自覚していたと言います。それを許さない田舎町では自分を隠さねばならず、そのためもあって町を出ていったと。
ゲイである、という「人と違う特徴」が自分を救ってくれた、とロジャーは語りました。

友人だったトミーは自殺し、ゲイであることに悩んだロジャーは町から逃げ出して映画監督となり友の死でアメリカの闇を知る。

人生はどうなっていくのかわからないものです。




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