ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「隠されたトラウマ~精神障害兵士8000人の記録」ETV特集 アンコール

2018-10-29 06:12:17 | ドキュメンタリー


こういう話を知る度に、戦争というのはどこまで恐ろしい出来事をつくりだしてしまうのかとぞっとする。
人間というのは何かの困難に立ち向かうときにそれをどう対処していくかを考えてしまうものだ。勝ち目のない戦いのなかで更に戦況が悪化していくなかで自分らの弱い部分から犠牲にしていこうとする。そしてそのことを目的のための当然のことだと自分等で納得してしまう。

戦争で犠牲になった人の数を見るとその数の巨大さに呆然とする。だがそういう感覚も戦争の中において麻痺してしまうのだ。
戦時中、成人男性の次は少年兵までが集められる。そこまでは知っていた。
だが精神や知能に問題がある人たちまで送り出されることになっていたとはまったく知らなかった。この番組は日中戦争から太平洋戦争の時代に知的障害のあった人々が戦場へ送られたこと、そして戦場で精神に障害を負った人々が隠蔽されてきた事実を丹念に追いかけた記録だった。

当時でも海外からの情報でシェルショック(戦争神経症)というものがあることは日本でも知られていたらしい。だが「日本の兵士は勇敢であるからそうした症状を起こすものは皆無である」とされたというのだ。
よく聞く話ではないか。「わが校ではいじめは一切ない」というやつである。人間として当然あっても不思議ではないことを自分達は優秀だからそういうことはない、として隠し闇に葬り去る。
戦時中戦後、精神障害兵士たちの多くは帰国しながら帰国したとされない、未復員となって療養所などで生活することになるのだ。優秀な日本人にはそうした障害はあり得ないのだ。
だが互いに殺し殺される、同胞のなかでも激しい虐め・暴力が横行しそれに恐怖を感じて自殺した若者もいる。そんなことが日常となる戦争で精神を蝕まれていくのはむしろ当たり前ではないか。

戦争から引き出される狂気は底知れない。勝利するためにはどんなことでもやってしまう。真面目な人間ほどおかしくなっていく。

戦争はやってはいけないものなのだ、と改めて思う。

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