ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

結婚の形~「月は無慈悲な夜の女王」あるいは「フロン」

2018-08-23 20:37:52 | 思うこと


画像はハインライン「月は無慈悲な夜の女王」の表紙であります(って写ってるからわかりますね)(なお訳者は現在も矢野徹のようです。よかった!)
 
なぜ今回のタイトルが「結婚の形」で「月は無慈悲な夜の女王」か。読んだ方ならお判りでしょうが、この本に書かれている月世界の様子の中でとりわけ読んだ当時の子供だった私を驚かせたのは主人公マヌエルが属していた「家系型(ライン)」という結婚形式でした。
本書の説明によるとこの彼の「家系型」結婚は100年近く続くものだといいことです。なぜならこの結婚は複数の男性と複数の女性の合意から成り立つものでその後も新しい婿や嫁を加えていくことになるからであります。生まれた子供たちは(もちろん生物学的には一組の男女の結晶ですが)全員の夫婦が責任を持つことになる、というものです。
月世界の結婚形式がすべてこれというわけではなく様々な形の一つであるとされています。ヒロインであるワイオは最初この結婚形式には反発を覚え「私は地球虫型の一対一がいいわ」と言うのですが・・・。
(余談ですが、月は無慈悲な夜の女王 家系型結婚、と検索したら昔の自分のブログが出てきてめげました)
読んだ当時はそのままこの形式に憧れる、というには至りませんでしたが、年齢を重ねるにつれて「家系型結婚」だったらよかったのに、と思わずにはいられません。月世界に生まれ変わったら是非この形式で結婚したいと思います。
地球虫スタイルは本当に地球人に合っているのでしょうか?一夫多妻型に賛成する女性はそうそういないと思いますが(男性にとってもたいがいは負担でしょうが)一夫一婦制で心底幸福を感じている人も少ないように思えてならないのです。それはある種の理想なのかもしれませんが、そう思い込んでいるだけなのかもしれないし、それが理想だとしたらなぜ離婚率が増加していくのでしょうね。経験豊かな年長夫婦と若い未熟な夫婦たちが合意の下で結ばれ自由と責任を分け合いながら支えあう、なかなか良いと思うのです。無論、これも問題はあるでしょうが、特に男性というのは集団の中では規律を重んじる傾向がるので今現在の形の中より家庭的になれるのではないでしょうか。

結婚の形は他にもあります。

年齢を重ねるほど(またこれ)思ってきたのが「妻問婚」
今の話なので、平安貴族のように妻が実家にいることはなく(いてもいいけど)とにかく妻(と子供)が住む家を夫が時々帰ってくるという形式。
良いんですがある程度お金が必要ですよね。二つの住居と光熱費がかかります。
また平安時代のそのままなら子供は妻のもとにいるでしょうが現代ならどちらが引き取るかという問題にはなるでしょうし、平安時代そのままの一夫多妻という形には拒否感が生まれるでしょうから、妻もまた多夫という形をとってしまうかもしれません。月世界の固定型家系結婚ではなく自由形多夫多妻の形ですね。
その場合の様々な問題はここでは省略いたします。


そういうことをなんとなく思ってきたわけですが、そんな私が巡り合った著書が岡田斗司夫「フロン」です。


この著作には現在の日本の結婚の形から生まれる問題(ご自身の問題も含めて)から多夫多妻への方向性を示唆してあります。まさに私がぐねぐねと考えてきたことの答えの本でした。
面白いのはアマゾンで書かれているレビュー。勿論岡田さんの定義に賛同のものも多くありますが、拒絶反応も少なくない。それには「夫も家庭回帰している」「話題がもう古い」「自分の問題のすり替え、言い訳」「世の中は逆のほうに行っているのに的外れ」などとあります。
そうでしょうか。私が見まわすぶんでは現実世界でもネットの中の不満でも妻からの夫への不満がたえず語られており、その多くは家事を分担できないというものです。夫からの妻への不満もありましょうが、その多くはこの多夫多妻もしくはハインラインが描く家系型結婚で解決できるように思えます。
「月は無慈悲な夜の女王」においてハインラインはヒロイン・ワイオが職業的宿主母親(プロフェッショナル・ホスト・マザー)で8人も赤ちゃんを産んだとしている。
ホストマザー=代理母と書いたほうがわかりやすいですかね。
「月は」は1965年から66年にかけて連載されたとなっています。イギリスで初の体外受精による出産が1978年であり、アメリカで代理母制度が始まるのが70年代後半となっているようですからハインラインが「代理母(ホストマザー)」をヒロインに経験させたのは予知と言うべきことでしょう。しかもそれはお金持ちの中国人の依頼で体の大きな白人女性である彼女がバイト的にやっていることだということも含めて。つまり強制的ではないということですね。
然るにここで述べたいことはハインラインの提唱する「家系型結婚」も未来の結婚の予見ではないかということです。

岡田さんはSF好きでハインラインもお好きのようですから心の中にハインラインの家系型結婚も少しあったのではないでしょうか。むしろ固定的な団体結婚の形より個別の多夫多妻のほうが今でも受け入れやすいのでは、と考えられたのではと思ったりもします。あくまで想像です。

若者がなかなか結婚できないでいる現状、離婚率の高さ、わが子への虐待、少子化などの重大な課題が現在の地球人に迫っています。
昔の強制的結婚のほうがよかったのでは、とすら思えてしまうのですが、後戻りはできないのです。その道の先は侍女の物語」に記されています。
私たちはどうすればより良い世界を築けるのか、たえず考え続けねばなりません。たえず進まねばなりません。
ハインラインの描く月世界は一つの道しるべにならないでしょうか。

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