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自尊心より大切なものを持って生きにゃぁいけん。

2009年07月18日 | 


宮本輝【 天の夜曲 】

宮本輝【流転の海】シリーズの第四部【天の夜曲】を読み終える。
この機会に最初から読み返した。第一部から20年でやっと第四部。
第五部が昨年ハードカバーで発売されている。
最初は五部作ということだったんで、やっとあと一巻と思ってたんだけど、
どうも、五部では終わらないようです...。
ただ、この作家の中で熟成されるということが、作品に深みをもたらしている。

人間的すぎるゆえに変わった人である松坂熊吾。
戦後、50歳にして授かった一人息子、変遷するビジネス、
人間の性に翻弄される人生を描いているが、
本当に一つ一つの言葉、情景の描写が含蓄に富んでいて、
どうしてこんな物語が書けるのか不思議。
しかも文句無く面白いところがさらに不思議。

こういう本を読んで、素晴らしいと感じたり、
作者の意図が読み取れたりすると、
「俺も色々人間的に問題はあるけど、
根本的なところで感覚はずれていない」と確認できる。
思えば、偏見なんかもあってそれまで手を出さなかった宮本輝を読み始めたのは、
嫁さん(その頃は恋人だったが)に薦められたから。
男と女が結婚を考える要素は色々あると思うけど、
良い小説を良いと思える、同じ曲を聴いて良いと思える、
そういう感性の一致も重要なことだと改めて感じた。
ズレているところも多いけど(笑)。