犬山の駅は3面6線。真ん中の3番線に到着。隣や向かいのホームから忙しそうに列車が発着している。
小牧線は全列車がここ犬山で折り返しているようだ。
同じく犬山を起点にする広見線はこの先、新鵜沼まで直通する列車もあるらしい。
主軸となる名鉄犬山線は中部国際空港へ向かうミュースカイなどの有料特急も走っており、華やか印象だ。
この駅からは名古屋方面に戻らず、犬山線で北上を続けることにする。
2つ先の新鵜沼駅から名鉄岐阜を結ぶ各務ヶ原線へ乗り入れる岐阜行きの急行が来たので乗車。
15:41 犬山駅発 <名鉄各務ヶ原線 急行>
観光客であろう外国人団体もおり、座席はほぼ満席。
次の犬山遊園駅は国宝・犬山城の最寄駅。是非とも訪れたいが、明治村や桃太郎神社など周囲に魅力のある施設が点在しているのでまた別の機会に降りることにしよう。
犬山遊園-新鵜沼間では木曽川をトラス橋で渡る。やけに幅の広い橋は以前自動車と共用だったため。
木曽川と言えば篝火のもと行われる鵜飼。これもいつの日か見てみたい。
橋を渡りきると新鵜沼。犬山と同じく多くの列車が発着するため広々としている。
ここからは各務ヶ原線。「かがみがはら」という読みは最近地名の本を読んで知った。
新鵜沼を出ると進路を西に変え、終点の岐阜を目指す。
のどかな田園地帯をひた走る。
右手にはJRの高山線並走し、背景には険しい山々がすぐそこまで迫っている。名古屋を中心に南北に広がる平野の端っこに近い。
乗車したのは急行のはずだが途中から各停へと変わった。
車窓を眺めていても起伏は少なく、住宅と田畑が続くが、「切通」という駅名があり気になる。
岐阜に近づくと、色んなものをオーバーパスする高架線となり見晴らしが良い。周囲に高架より高い建物が少ないからだろう。
名鉄岐阜駅はビルに挟まれた地上にある。日がもう傾いているので、ホームは薄暗い。
名鉄は昔、岐阜を中心に路面電車に近い路線を多く敷いていたが、10年前頃までに全廃。名鉄岐阜駅に乗り入れるのは名古屋本線と各務ヶ原線だけだ。
地上の各務ヶ原線と、名古屋本線のホームは離れており、連絡通路を渡って乗り継ぐ。
岐阜は終着駅のため頭端式ホームになっている。
一番外側、1番線に停車中の快特・豊橋行きに乗車。パノラマカーの付いた一部特別車だが今回は一般車に乗る。
16:18 名鉄岐阜発 <名鉄名古屋本線 快特>
JR線の高架を潜って出発。
西日が射して暖かく、すでに眠い。
羽島方面へと分岐する竹鼻線と分岐すると木曽川を渡る。
先程、犬山で渡った時よりも明らかに川幅が大きくなっている。
このあと木曽川は長良川、揖斐川と並走し、伊勢湾へと流れ出る。
地図と共に旅に出ると景色の中で気になったことをすぐに調べられるから良い。
気付けばぐっすり寝ていて、乗客が増えているなと思えば名鉄名古屋駅だった。
見覚えのある、早朝に出発したホームだ。
様々な乗り物を乗り継いで歪な一周から戻ってきた。
乗車区間の被ることがない一筆書きは気持がいい。
預けた荷物を引き取って今日はホテルに向かう。
休日とはいえ夕方の名古屋駅は混んでいて、慣れないから人とぶつかりそうになる。
名古屋の人は歩くのが速い気がする。
ホテルは栄だが、JR中央線を使って大曽根経由で行く。
短距離ランナーの高蔵寺きに乗車。
17:04 名古屋駅発 <JR中央線>
首都圏に住んでいると中央線というと平野を西へまっすぐ走る印象だが、名古屋方面は高蔵寺をすぐると山間路線になる。
とはいえ西側の名古屋‐塩尻間は乗車したことがない。
中山道に沿った馬籠、妻籠宿などを歩いてみたいものだ。
金山からは市街を高架で走るので、名古屋の計画的で幅の広い道路を眺める。
東京よりも街がすっきり整った印象を受ける。電線も地中に埋められているようだ。
大曽根駅で名鉄瀬戸線に乗り換える。
先程、この駅から名城線に乗り換えたため、ここから先の栄町駅までの乗車は初めて。
尾張瀬戸方面のホームではたくさんに人が列車を待っている。
栄町行は真っ赤な列車が来た。
17:10 大曽根駅発 <名鉄瀬戸線>
薄暗い夜の闇を高架で走っていく。
この時間の上り列車の乗客は少なく、一人につきロングシート1つが与えられている様な感じだ。
途中駅から乗る人もいない。
入ってくるのは冷たい風だけで、静けさが沁みる。
いつの間にか地下に潜って、名城線と並走して南下する。地上には久屋大通が走っている。
17:19 栄町駅着
今日の乗り継ぎはこれにておしまい。
瀬戸線の真っ赤な車両は今年中にも引退するようで、ホームでシャッターを切る青年が3人ほどいる。
それに混じってじっくり写真を撮ってみる。
スタイリッシュとは程遠い重厚なボディ。
何処か野暮ったさが拭えないところがいい。
わかる、わかるよそんなにシャッターを切ってしまう気持ちが・・・・!
青年たちはひと通り撮り終わると、反対側の車端部まで駆けていった。
栄町の改札前から地上へ続く大階段を登ると、セントラルパークに出る。久屋大通に挟まれた細長い公園。
振り向くと内藤多仲の傑作、名古屋テレビ塔が反り立っていた。
もう少し暖かければゆっくりと公園を散策して、飽きるまで塔を愛でたいが、どうにも寒いので地下を歩く。
栄は地下街が恐ろしいほど発達していて、すべての用が地下で済んでしまいそうだ。
この時期は暖かくていい。
飲食店街にファッション雑貨店も並んでいる。
驚いたことに角を曲がる度に書店を見つける。1km²あたりの書店点在率は日本でも有数だろう。
ホテルに荷物を置いてもまだ出歩ける時間があったので、名古屋の松坂屋に行ってみる。
松坂屋美術館で開催されている『スヌーピージャパネスク展』が気になっていた。
この展覧会で展示されるのは、日本国産のスヌーピー。
米国産であるスヌーピーが海を渡り、日本の伝統工芸技術によって再生産されているのだ。
備前焼や那智黒石で生まれたスヌーピーは何とも艶やかで思わず手触りを確かめたくなる。
スヌーピーがテーマの全国伝統工芸展だと思っていただければ間違いない。
一般生活には程遠い伝統工芸はお堅いイメージが付きまとうが、思ったより順応性があるのだと思う。
旅は日常の気分転換も兼ねていると思うが、旅行中も何処かで旅の気分転換をすると面白い。
旅先で何ら関係のない展覧会を見たり、ホテルでいつもと同じTV番組を見て少しだけ現実を想うのもいい。
流れる景色を一日中見てきたため、自分の速度や距離で見る展覧会は対照的。
思いのほか満足して、いくつかのお土産を購入し、ホテルへと帰る。