Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

闇夜の高尾山.3

2014-11-19 00:00:29 | とりっぷ!


↓前章
http://blog.goo.ne.jp/fujizero3/e/50916dfd8d56256e9e3f9fb2c32fc827






登っているというよりも、どんどんと山の奥に入っている気もする。
周囲に人工的なものは何もない。

ゆらゆらと揺れたいくつかの光線が木々や地面を照らし出す。
しばらくのあいだは同じよな道が続いて休憩スペースも見当たらない。

我々のように夜間に登山する物好きはいるにせよ、夜間に下山する物好きはもっと少ないだろうから人と出逢うことはまずない。
人の気配がしない夜の山中は意外にも怖くないが、人がいたら逆に怖いかもしれない。

そんなことを誰しも思うのか、山の怖い話を始める奴もいる。

こんな人数で歩いていれば、一人くらいいなくなってもおかしくないとか言う。


高い木々に囲まれた休憩場所に出た。
だいぶ長い距離を通して歩いたので、ベンチに腰を下ろして休憩をとる。

歩き疲れて黙ったまま過ごしていると、様々な音がする。

ぱきぱきと枝が折れる音、鳥の声。
低い鳴き声はフクロウだろうか。

巨大な自然の中で、ちっぽけな我々は飲み込まれてしまいそうだ。
賑やかに歩いているうちは不思議にも強気でいられるけれど、やはり自然は大きく底が見えない。
知らないことがまだまだたくさんありそうだ。

そんなことを考えているうちに、か細い足音と光線が麓の方から近づいてくる。
思わず身構えてしまう。人間じゃなかったらどうしよう。

目の前に現れたのは大人数の登山客だった。
「こんばんは」と交わす挨拶は、互いが人間であるかという確認の意味も兼ねている。

健脚そうな男女が目の前を通り過ぎていく。
姿が見えなくなってもしばらくは足音が聞こえてきた。



私たちもそろそろ先に進まなければならない。
山の雰囲気に飲み込まれて、休憩をしすぎたようだ。
先程の登山客を追うようにしてふたたび山道を登っていく。

山頂が近くなるといくつもの散策路が終結し始めて複雑である。
中にはコンクリートの道路もある。
周囲が開けてきて、いよいよ山頂が間近にまで迫っている。

 




4:00

あっけなく山頂に到着。
土曜日ということもあってか多くの若者たちがいる。
途中で人に会うことは少なかったから皆1号路から登ってきたか、相当早い時間から登っていたかのどちらかだろう。

賑やかすぎてしまうから、もう少し小仏方面へと歩みを進めてもみじ谷付近の茶屋の前で夜明けを待つことにする。
薄暗がりの中では茶屋も老婆の住む東北の一つ家のように怪しい雰囲気がある。

いざ、暗闇を歩いてみると森や動物と言った自然は怖くないのに、人工物が怖い。
自然畏怖ではなくて人気畏怖。



山麓に向けて置かれているであろうベンチに思い思いに腰をかけると、不眠と疲労が重なって眠気に襲われる。
気がつけば何人かベンチですやすやと眠っている。

だんだん眠くなってくるのと反比例して、周囲は徐々に明るくなってくる。






うっすらと夜が明けてくると山々のシルエットが見えきた。
朝もやがかかっていて、どこか深山幽谷の雰囲気がある。
先程までは真っ暗闇で何も見えなかったところに輪郭ができ、色が付く。
「夜のとばり」とはよくいくけれど、覆い隠すものがなくなって、いよいよ一日が幕を開けるわけだ。
鳥のさえずりがまさにPreludeのようだ。


朝は気持ちがよいが、夜を歩いてくきたあとの明るい世界は少し寂しくもある。
ゆっくりと深呼吸をして夜の旅を振り返ったら、山を下りることにしよう。

 



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2 コメント

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Unknown (高尾山好き)
2014-12-01 10:56:35
続きの記事をありがとうございます。
想像しながらとても楽しく拝読しました♪
勇気はないですが、夜と早朝の高尾山の
空気に触れてみたいなあと思いました。

子どもの頃、雑司ケ谷霊園と護国寺をよく
遊び場にしていて、江古田は通学で乗り
降りしていました。今後もブログのアップを
楽しみにしております。
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コメントありがとうございます! (-)
2014-12-02 23:58:15
読んで頂けてうれしいです!

山手には下町とはまた違った雰囲気の懐かしさがあって好きです!
江古田も含めて、20世紀のゴタゴタ感に愛おしさがあります(^^)

今後も様々な小旅行記を投稿したいと思っておりますので、これからもよろしくお願いいたします。
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