カンピオーネ! 5 剣の巫女 (カンピオーネ! シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫) 価格:¥ 630(税込) 発売日:2009-11-25 |
読了。
作者さん曰く今回は「学園編」とのことで、たしかにこの作品にしては珍しく日本国内が舞台の物語でした。で、最初に結論から言ってしまうと、今回はあまり面白くなかったです。その理由は二つありまして、
・護堂の同級生の言動が総じてスベっているため、読んでいてところどころキツイ箇所がある。
具体的には、同級生が異性の好みについて熱弁を振るったり、プールの覗きを企てたり、モテまくる護堂をやっかむ描写など。こういうのって悪しき慣例というか、様々な媒体で似たような展開が使われすぎていて「またか」と思ってしまう感じ。特にこの『カンピオーネ!』の作者さんって、ヒロインたちとの絡みを書くと「質の良いエロゲライター」なのに、モブキャラを交えた賑やかしを書くと「質の悪いエロゲライター」になってしまうので、こう何というか、すごくもどかしいです。ちゅうか率直に言って、基本ヒロインたちがヤキモチを妬いて護堂が振り回されるだけという、日常描写の幅の狭さが気になりますね。
あと、つけ加えるなら、この手のラノベである時期から示し合わせたように登場するようになった「オタク系の知識に精通したキャラ」は、そろそろ賞味期限切れじゃないかなあ。新たなキャラ様式の登場を望みます。
・リリアナの扱いがヒロインの中で飛び抜けて悪い。
ちょくちょくリリアナに対して向けられる「旧態依然とした尽くすタイプのヒロイン=都合のいい女どまり」という指摘は作者さんの(ハーレムモノに関する)哲学なんだろうし、おそらく後々リリアナが「都合のいい女」からの脱却を図るという展開が用意されていて、そこに繋がるネタ振りでもあるんだろうけど、ちょっとコレが微妙なのですよ。や、好きなキャラが冷遇されてるように感じるという以上の意味で。
どういうことかというと、ぶっちゃけ護堂と万里谷の相性がいいという設定自体がかなり眉唾なんですよね。護堂自身の独白や、エリカや静花の指摘による「作中の登場人物の視点」では散々アピールされているけど、僕が「読者の視点」で作中の描写を見ている限りでは、わざわざ特筆するほど他のヒロインと相性の差があるとは思えないわけで。なんか「作者の見えざる手(=この二人はこういう関係なんですよーという説明)」が見えてしまっている感じで気持ち悪いんですよね。
逆に護堂とエリカがツーカーの関係というのは、作中の描写を見ていて納得できるので異論を差し挟む余地はないんですけど、そのせいで余計に万里谷というキャラクターの薄さが目についてしまうんだよなあ。ようするに、僕が読者として見た場合の万里谷の評価(=エリカ以外のヒロインと比べて横ばい。むしろ下位)と、作中でキャラクターたちが下す万里谷の評価(=エリカに比肩するナンバー2)に開きがあるせいで、作者さんが「そういうことにしたいだけじゃん」と思ってしまうと。
皮肉にも今回の5巻の内容そのものが万里谷をプッシュするものだったため、4巻まではヤキモチを妬く機械でしかなかった彼女がいきなり大きな発言力を手に入れてしまったことにすげー違和感を抱きました。僕がリリアナ贔屓ってのをさっ引いても、万里谷はキャラクターの立たせ方をミスったように思えるんだけどなあ。どうなんだろ。
以上。証明終了。
そういえば、今回はこれまでのような知識を与えるという体でキスするという展開がない代わりに、神の加護を与えるという体でキスをする描写がありましたが、加護を与えることによって熱くなる場所を「己の下腹部あたり」とか「東洋医学で丹田と呼ぶ場所」とか「体の最奥ともいうべき場所」とかボカしてたけど、もう性器って言っちゃえばいいのにって思ったのは僕だけではないはず。だから「錬成した」を「射精した」と見間違えたのも僕だけではないはず。このへんの、主人公とヒロインにどうにかしてエロいことをさせようって意気込みは素晴らしいよなあ。
あ、あと、個人的にこの手の話で、男装の麗人的なキャラを好意的に受け止められた試しがないので、沙耶宮さんの今後の動きがとても気になります。『アスラクライン』にも似たようなキャラがいたけど、ああいう言動を好意的に受け止めるのは難しいし、だからといって突然「いい人」になられても困るし、動かし方が難しいワリにリターンの少ないキャラだと思うんだけどな。この手の話にはこういうキャラを出さないといけないルールでもあるんでしょうか。
とりあえず、新ヒロインの恵那はまだキャラが掴みきれないのでよくわかりませんということで一つ。