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サブカルとサッカーの話題っぽい

【小説】みをつくし料理帖 今朝の春

2010-10-11 | 小説

今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫) 今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
価格:¥ 620(税込)
発売日:2010-09

 読了。同シリーズの第四巻にあたる作品。

 今回も面白かったです。特にひとつめのエピソード「花嫁御寮」と、ふたつめのエピソード「友待つ雪」は、読んでいて色々な意味でハラハラドキドキする話でした。怖いくらいに又次が退場フラグをビンビンに立てまくってたので、何らかの形でいなくなってしまうものだとばかり思っていたら、ゆるい感じで元鞘に収まってくれてよかったよかった。
 しかしまあ、これまでも「澪が料理で問題を解決!」的な『美味しんぼ』系のノリと、様々な人間模様が織りなすドラマという二つの柱が存在する作品でしたが、今回は物語の筋がかなり人間ドラマ寄りになっていた印象がありますね。もちろんそれが悪いというわけではなく、そちらの要素も十分楽しめるんですけど、正直「寒紅」におけるおりょうさん一家の話は限りなくどうでもよかったなあ。両親を失ったことで言葉を失ったという太一のエピソードは、"過酷な運命を背負わされた子供"の姿を、おそらく澪や野江といった登場人物の辿ってきた道筋と照らし合わせる形で描写しているんだろうけど、なんかこう、どうしても本筋から離れている感が否めないんですよね。直前の「友待つ雪」において、だったら澪が野江を身請けすればいいじゃない! という物語の最終目標っぽいモノが提示され、ぶわーっと気持ちが盛り上がっていただけに、浮気がどうとかいう話をされても興ざめというか、盛り上がった気分に水を差されたというか、そんな感じで。
 そして、最後のエピソード「今朝の春」も、物語の内容云々より、料理人の命である指を怪我させちゃってどーすんのよという思いが強かったなあ。出刃包丁の扱いを誤った描写があっさりめだったこともあって、最初は「え? そんな重傷だったの?」って驚いてしまったし。
 や、なんつか、澪が野江を身請けするのに四千両が必要だとして、それが『みをつくし料理帖』の最終目標だとして、ただでさえ目標が遠くに設定されすぎている感があったというのに、そのうえ澪の指が自由に動かなくなるフラグまで立てられると、ちと僕は萎えてしまうのですよ。
 うん。ぶっちゃけると鬱すぎんだよねwwwwww
 ままならない人生、やるせない出来事、といった事象を描きつつ遠回りでもいいから一歩ずつ進んでいく人々を描いてゆく――というのが作品の色であると理解したうえで、僕がこの作品を娯楽小説として捉えているのもまた事実であって、だから山あり谷ありが続きすぎると「ハイハイ、また不幸ですか」、「ハイハイ、持ち上げて落とすんですね」みたいな捻くれた視点を持ってしまうんだよなー。
 というわけで、いくら面白くてもあんまりダラダラ続けられても途中で飽きそうですし、次あたりでテコ入れなり、終幕に向けての突端なりが見られないとキツイかもしれませんということで一つ。