「――ハメられた」
ここに至って、俺はすべてを理解した。
そう。
俺はハメられた。術中にハマった。友人だと思っていたやつらに裏切られた。
なんてこった。まさか年の瀬も押し迫ったこの時期に、己の尊厳を脅かされることになるなんて。こんな悲劇、想像すらしていなかった。
俺は今、近所の本屋の前にいる。
ごく普通の個人経営の店だ。それなりに広い。雑誌はひととおり入荷するし、定番のコミックや新書などの一般書籍の品揃えも悪くないし、絵本なんかも売っている。もし見つけにくいマニアックな本が欲しければ、注文して取り寄せてもらうこともできる。インターネットショップ全盛の波が押し寄せる中、なかなか頑張っている店だと思う。
が、ここがどんな店なのかというのは、俺に降りかかった不幸に直結しない。
問題は、もっと直接的に俺を取り巻く状況である。
少しだけ時間を遡る。
冬休みに突入して間もなく、うちに電話がかかってきた。雄二からだ。
やつが言うには、同じクラスで彼女のいない独り身どもがクリスマスに向けて祈祷をすると決めたようで、その場所に俺の家が選ばれたのだとかなんとか。なんでも恋愛風水的に優れている場所で祈祷をすると、身体の中に「モテ気」を取り込んでクリスマスまでに彼女を作ることが可能らしい。
オマエらは死ねばいいと思う。アホか。よっぽどそう返してやろうかと思ったが、実際にそう言ったが、よくよく話を聞いてみると、暇人どもが暇しているから遊び場として俺んちを提供しろというだけだった。
それならば俺としてもやぶさかではない。ひとり暮らしをしている俺のうちが格好のたまり場だというのは理解できる。ただしゲンミツにいえば、俺はシルファちゃんとふたり暮らしをしているので、ちゃんと許可は取っておいた。蛮族がいるあいらはらンボールかられないれおくれすと返された。シルファちゃん可愛い。雄二可哀想。
さて、ここからが本題。
血に飢えた(誇張表現)クラスメイトたちがやってきて、しばらくはごく平穏に過ごしていた。テレビゲームで対戦したり、各々好き勝手に漫画を読んだり、持参したペットボトルを傾けたり、ベッドに座ってだべったり。まあ、彼女もいない、金もない高校生が集まってすることなんてこんなもんである。
そして当然、ローテーションでやることを変えているうちに、なにをするにも飽きてきた。
そして突然、こんなことを言い出すやつがいた。
「みんなでUNOやろうぜ」
UNOは幼稚園児から大人まで楽しめる最強の娯楽だ(NOT誇張表現)。実は二学期の途中から、クラスで休み時間にやるのが流行っていたのだ。購買のパンを賭けたり、パシリを決めるのに使ったり、男子も女子も混ざって妙に盛り上がっていた。まるで小学生のような俺たち。
提案には、俺を含め全員が同調した。
UNOが始まった。
もちろん、賭けあり、酒はなしのルール。最初は気になってる女子の名前を言うとか、いかにもくだらない罰ゲームをしていたのだが、そのうち徐々にエスカレートしてきた。三度目に負けたやつが四度目のゲームのためにカードを切っているときに言った。ついに出た、と誰もが思っただろう。その内容を聞き、誰もが「くっだらねえけどやることになったら面倒だなあ」という顔をした。
じゃあ、ビリのやつがエロ本買ってくることにしようぜ。
バカだ。バカすぎる。
しかし、熱気でハイになった頭にはなんでも面白く感じてしまうもので、それくらいどーってことねーやという空気が蔓延していたせいで、俺は気づかなかった。
そう。
このとき、すでに、俺はハメられていたのだ。
雄二をはじめ、この場にいる皆が目配せをしていたことに気づけなかったのだ。
結果から言えば、俺がビリだった。それまで一度もビリになっていなかったのに、ここ一番の勝負で負けてしまった。当たり前だ。ひとりだけゲームに参加しなかったやつが、後ろから俺の待ち札を皆に報せていたのだ。勝負が決まった瞬間にネタバラシされた。
まあ、それでも、べつにいいやと思った。
どうせ余興に過ぎないし、罰ゲームの内容も大したことないと思っていた。
だから罰ゲームを受けることにしたのだ、
が。
わざわざ他人をハメようなんて考えるやつらが、そんなに生易しいはずがなくて。
買ってくるエロ本のタイトルと、買ってくる店を指定された。
証拠としてレシートをもらってくるようにも言われた。
そして、指定されたエロ本は前に雄二から借りたことのある雑誌で、指定された店は近所の本屋で、
そこの店では、エプロン姿の草壁さんがレジ打ちをしていた。
そう。
完膚無きまでに、俺はハメられたのだ。
「――難易度高えー!!」
俺の絶叫が、灰色の空にむなしく響く。
"バイト少女"と買いたがりの道化【ピエロ】
結局、店の前で十分近く迷った。
買おうか買うまいかという悩みではなく、このまま店に入るか入らないかという悩みだ。超前段階。
でも実際きつい。今の俺は普段の河野貴明ではなくてエロ本を買おうとしてる河野貴明なんです。汚らわしい欲望にまみれた俺なんかが草壁さんの視界に入っていいのかなって考えちゃうんです。この場合、自分の意志かどうかというのは関係ないんです。はい。
だからといって、いつまでもこうしているわけにはいかない。冷たくなった指先に息を吹きかける。哀愁の漂う仕草だ。心が卑屈になっていると、なんてことない動作まで卑屈に感じてしまうものなんだ。
いっそとんずらしちまうか、とも思うのだが、用意周到なことに罰ゲームの罰ゲームまで用意されているのだから始末に負えない。もしも指定の店で指定のエロ本を買ってこれなかったら、シルファちゃんと握手をしたうえで一緒に写真撮影をさせろと要求されているのだ。
ええそうですね。もちろん雄二のバカが言い出したに決まってますよね。バレバレなのにしらばっくれやがったので、借りていたエロ本は郵送で自宅に送ってやるつもり。差出人「向坂雄二」、受取人「向坂環様」で。新年が明けるころには血の雨が降るだろう。
最初は、それこそ全部バックれてしまうことも考えた。だが、メイドロボに偏執的な愛情を抱く雄二のことだ。俺がどんなにダメと言ったところで、そう簡単に諦めたりはしないだろう。そして雄二ひとりならまだしも、ノリのいいクラスメイトたちが加わったら、シルファちゃんの貞操(手と肖像権のこと)を守りきれるかどうか怪しい。これでシルファちゃんの人見知りが酷くなったりしたら、俺の貞操(姫百合家的な意味で)のほうが危うい。
プライドと貞操なら、たぶん貞操のほうが大事だ。
そう結論づけて、とりあえず本屋に入ることにする。失うプライドなんて微々たるもの。これからやろうとしていることは、所詮健全な男子高校生の範疇からもれない程度のごくごく一般的な行為でしかない。自己弁護がむなしい。この際、エロ本を買う汚れ河野貴明が草壁さんの目に触れてしまうのは、仕方ないと割り切ることにしよう。
「いらっしゃいませ」
風が凪ぐような穏やかな声が、瞬時に親しみの色を増す。
「あっ、貴明さん。こんにちは」
「こんにちは。草壁さん、ここでバイトしてたんだね」
「はい、冬休みの間だけですけど」
「そうなんだ」
「言ってませんでしたっけ?」
「うん、知らなかったよ」
「このお店にはよくこられるんですか?」
「たまにね。でも冬休みになってからはきてなかったから」
「そうでしたか」
パーフェクト。どこから聞いても健全なクラスメイト同士の会話。これなら片方がエロ本を買おうとしているなんて誰も思わないだろう。この調子でいけば、案外すんなりミッションコンプリートできるかもしれない。思いのほか落ち着いてる自分に驚く。
「なにかお探しですか?」
「ちょっとね。参考ちょ」
噛みまくりじゃん俺!
動揺しまくりじゃん!
「参考書でしたらあっちの棚ですね」
思いやりスルー。
草壁さんは天使。
「そ、そう。じゃあちょっと見せてもらおうかな」
「どうぞごゆっくり」
この店には何度もきているので本の配置は大体わかる。奥まった場所にある参考書コーナーの更に奥の行き止まり。分量にすればわずか棚の三分の一しかない最果ての地に、目当てのエロ本たちが設置してある。
同じ側の手と足が出ないよう気をつけながら、心持ちこっそりとレジの前を通りすぎようとすると「そういえばその奥」と言うので、思わず立ち止まって背筋を伸ばしてしまったのだが、おそるおそる振り返って草壁さんの様子をうかがうと笑顔で「この前店長さんに言われて棚の整理をしたのでお捜しのものがなかったら遠慮なく聞いてくださいね」ときた。びびった。冷や汗が吹き出した。こんな調子でダイジョウブなのか? エロ本をレジに持ってこられるのか?
草壁さんにぎこちない笑みで返してから、気を取り直して奥に進む。
参考書コーナーはそのままだったが、成人コーナーは跡形もなくなっていた。
「整理した棚ってこれかよ!」
ピンポイントすぎる!
つーか店長、草壁さんにそんなことやらせてるのか。セクハラじゃないか。柔和なおじさんって印象だったのにこれから見る目が変わりそうだ……。いや、仕事なんだしそんな甘いこと言ってられないだけか……。
すごすごレジに引き返すと、草壁さんは相変わらずの笑顔。
天使の微笑みが、ちょっと恐ろしくなる。
だって考えてみれば、草壁さんは「棚の整理をした」って言ったのに参考書はそのままだったじゃないか。それで「お捜しのものがなかったら」ってことは、俺の目当てがその「整理した棚」にあるとわかってたってことだ。考えすぎだろうか。できれば考えすぎであって欲しい。
「どうしました?」
「いや、その、」
なにを言ったものかと頭を捻る。しまった。カムフラージュするなら、もう少し参考書コーナーにいるべきだった。これじゃあ実は参考書に用がないって白状したようなものだ。
「ちょっと草壁さんと話したくて。冬休みになっちゃったから教室で会えないし」
ザ・ジゴロ発言。こういう台詞を素で言える大人にはなりたくない。
「まあ」草壁さんは目を丸くする。「そんなふうに言われたら嬉しくなっちゃいます」
騙しているみたいで心苦しくなるが、日常会話の続行を敢行。
「あのさ、けっこう空いてるよね。この店」
「たしかにそうですね。私がいる間はすごく混んだりはしないですし」
「時間によるのかな。バイトは何時まで?」
「お昼から五時までですけど……ひょっとしてお誘い、ですか?」
「い、いやいやいや、そうじゃないんだけど」
「ちがうんですか……残念です」
やめてください。俺はそんな人間じゃないんです。照れながら上目遣いで見られたりする資格のある男じゃないんです。エロ本買いにきてるんです。
「ほ、ほら、混んでたら忙しくてこうやって話もできないでしょ?」
「あ、はい。私のこと気遣ってくれるんですね。貴明さん、やっぱり優しいです」
やめてください。嬉しそうな顔で「優しい」なんて評価される資格ないんです。俺はエロ本買いにきてるんです。
これが褒め殺しなら効果覿面すぎる。真綿で首を絞められてる心持ち。
「でも、ここ数日は特に空いてる感じがしますね。私もお客さんとしてくることがありますけど、そのときにはもっと混んでいますし」
「へえ」
店内を見回してみると、部活帰りらしき制服姿の中学生の一団と、OLっぽい女の人と、乳母車を押す母親がいるだけだ。年末だからもっと人がいそうなものだが、常にこんな感じならたしかに空いていると感じるだろう。
「ていうか、女の人が多いね」
正確には女性ばかりだ。中学生たちは三月までこのみも着ていたセーラー服姿である。男よりも女のほうが読書が好き、なんてデータあったかな。
「そうですね。最近ずっとそうなんですよ」
「え?」
「アルバイトを始めたばかりのころは男の方もいらしたんですけど、なんだか徐々に割合が少なくなっているような気がします」
なんだそれ。
「ちょうどさっき貴明さんが入っていった――」
草壁さんはそう言って、俺が出てきたばかりの一角を指さし、
「参考書のコーナーがあるじゃないですか。皆さんあそこに入られるんですけど、レジにくる途中でびっくりした顔をして戻っていっちゃうんです。しかもそのまま帰ってしまうお客さんが多くて……」
先達たちの悲運を俺は嘆いた。
人目を忍んで本屋に入り、関係ない真面目な本を何冊か手に取り、本命のエロ本を死に物狂いで物色して、それらを何段かに重ねて入念な下準備をほどこし、意気込んでレジに持っていこうとしたら同年代で飛び抜けた美人の女の子がいたらさ。
そりゃトラウマになりかねん。
少なくとも心の傷が癒えるまで、この本屋にこようとは思わないだろう。
くそ。やはり難易度が高いなんてもんじゃなかった。他人事なら笑い話なのに、いざ自分が同じ立場に置かれてみるとシャレにならない。しかもそのレジの女の子が顔見知りって、クラスメイトって、なんの嫌がらせですか。いや、紛うことなき嫌がらせなんだが。
「そんなことが何度もあって、さすがに私も気になったので店長さんに相談してみたんです」
草壁さんは、ただ自分の経験を話して聞かせているつもりなんだろう。特別にかしこまることもなく、あっさりした口調で続ける。
「そうしたら、あそこに置いてあった本を買いやすいように移動しようということになったんですよ」
「移動って……どこに?」
「ここです」
レジの脇が成人コーナーになっていた。
お茶を飲んでいたら間違いなく水平射出していた。
店長バカだな! 完全に見る目変わったよ! 灯台もと暗しっていうか、こんなの尚更買いにくいよ! 客減るに決まってるじゃん!
「えっと……ですね。女の子って意外とそういうの気にしないですよ?」
その「女の子」には草壁さんも含まれるのだろう。
その「そういうの」はとどのつまりエロ本を買う行為を示しているのだろう。
だから貴明さんも気にしないで買っていってくださいね、と。
天使の笑顔は、そう俺に語りかけていた。
「バレバレでしたか」
俺、超敬語。後ろ暗いことがあると丁寧な言葉遣いになる。
「まあその……はい。貴明さんのことでしたら大抵はわかっちゃいますから」
普通に言われたらくすぐったい台詞なのに、この状況で言われるとただただ自らの業を呪いたくなる。いわばハートフルラブコメディからハートフルラブを引いたのが俺。つまり単なるコメディです。ピエロです。
しかし、考えようによってはラッキーだ。できるだけプラスに、ポジティブに考えることにしよう。恥部を見られたのが理解のある草壁さんでよかったじゃないか。まさに不幸中の幸い。
これが小牧姉妹や久寿川先輩だったらマジで手の打ちようがなかった。笹森さんやまーりゃん先輩だったら脅迫の材料にされていた。るーこだったら宇宙全土に俺のしょうもなさが伝わっていた。まだ運は尽きていない。むしろ俺は運がいい。
なにもかも最底辺まで落ちてしまったのだから、もはやエロ本を買うのに抵抗はない。さっさと指定された本を買い、家に戻ってエセ友人どもをぶん殴ろう。涙は寝る前に、ひとりで流せばいいのだ。
俺はうつむいたまま、恥ずかしくて顔を上げられない。草壁さんも空気を読んでくれているのか無言だった。ひょっとしたら黙々とエロ本を物色してると思われてるかもしれないが、はは、もうどうでもいいや。ええと、指定されていたのはたしかアイドルのグラビア雑誌で……あった。
新年特大号、とか書かれてるのが無性に腹立たしい。八つ当たりだとわかっていても感情のコントロールは難しかった。泣きそうになるのを必死で堪えながら、グラビア雑誌に手を伸ばす。棚から引き抜くと、大きな胸を強調したポーズを取るアイドルのふとももあたりに踊るキャッチコピーが目に入った。
清楚な黒髪美少女大特集!!
「無理だろ!!」
「きゃっ」
人目も憚らずに全力で突っ込みを入れた。
ダメ。無理。絶対。
たとえ自分のすべてを放り出したとしても、この雑誌を草壁さんに差し出すわけにはいきません。
なんなのアイツら。どうしてこういうくだらないことにばっかり頭が回るの。あまりに行き届いた策略っぷりに逆に拍手してやりたくなるわ。全部わかってたんだろうなあ。草壁さんがここでバイトしてることも、新年特大号が「清楚な黒髪美少女大特集」だってことも。
ああ、リアルな殺意ってこういう感じなんだ。なんて清々しい伝奇的な気分。
「あの、貴明さん」セカイに絶望した俺にかけられる優しい声。「ちょっと待っててくださいね」
汚れた自分の視界に草壁さんを映すことすら躊躇われたが、うつむいたままでいるのも感じが悪いので顔を上げる。すると草壁さんは、レジの後ろに備えつけられた電話の受話器を手にとって、どこかに通話しようとしていた。
「――あ、レジの草壁です。すみません、ちょっと自宅から連絡がありまして。はい、ええ」
草壁さんの声は、電話のときにも一オクターブ上がったりはしない。
「いえ、それはだいじょうぶです。十分ほどお時間を頂ければ。はい。すぐに済みますのでその間だけレジを代わって頂ければ。――はい、ではよろしくお願いします」
電話越しにお辞儀をして、草壁さんが受話器を置いた。
そして俺のほうに顔を向けて、
「すみません貴明さん。私ちょっと席を外さないといけなくなっちゃいました。ですから」
にこりと微笑む。
「なにか買う物があるようなら、べつの店員の方に会計してもらってください。では失礼しますね」
「あ……」
草壁さんの動きは迅速だった。エプロンのポケットからレジスターの鍵を取り出し、鍵をかけると、あっという間にレジから出てくる。それから軽く会釈をして、春のそよ風みたいに黒髪をなびかせながら、俺の脇を通り抜けていった。多くは語らず、今の俺にとって一番必要だと考えたことを、俺のために実行に移してくれたのだ。
「……あり、がとう」
ありがとう、草壁さん。
やっぱり君は天使だったよ。
俺の心に、すでに迷いはなかった。草壁さんの気遣いを、想いを、無駄にするわけにはいかない。彼女みたいなそよ風にはなれないかもしれない。が、できるだけ速やかにエロ本を確保し、できるだけ速やかにこの場を後にしよう。それが俺にできる唯一のことだ。
「すみませーん。お待たせしましたー」
草壁さんと入れ替わりで、べつの店員さんがレジに入る。
一も二もなく、俺はグラビア雑誌を渡そうとする。
「――って、河野貴明!?」
名を呼ばれ、俺は知った。
神は死んだ。
天使も消えた。
希望の火なんて、初めから灯っていない。
「なんであんたがここに!?」
それはこっちの台詞だった。
べつの店員さん=由真でしたか、そうですか。
王手から逃げたらべつのマスで王を取られたみたいな絶望感。
「ちょっ、な、ななななな、なに買おうとしてんのよあんた!」
由真、顔真っ赤。
俺、顔真っ青。
ちくしょう。俺もうこの店こないよ。ちくしょう。
めでたくないめでたくない。
以上。ひとりのピエロと、ふたりの〝バイト少女〟のお話でしたとさ。
おしまい