南野島男のGood Times

日常感じたことを面白おかしくエッセイ風に書きつづります。
これぞ笑いと勇気の玉手箱!

JAZZ喫茶椎の実

2014-03-26 00:09:28 | Weblog

長崎にはかって多くのJAZZ喫茶があった。

FANFAN、BUNBUN、BLUE NOTE、CABIN,COMBO、思案暮留、マイルスなどなど。その中でも僕がJAZZを好きになったきっかけを作ってくれたのが椎の実という店だった。

その店は長崎市内の田上という街外れ、つまり僕が住んでいた近所のバス停の近くにありそれはそれは小さなJAZZ喫茶だった。店内は10人も入れるかなという狭さで、カウンターに座り見上げるレコード棚に埋もれたスピーカーから聞こえてくるマイルスのトランペットの響きはまるでレコード棚の後ろで演奏してるんじゃないかと思わせるような臨場感がたまんなかった。

僕は椎の実のおかげでJAZZが好きになってしまった。当時のマスターはゴンさんと呼ばれる人でニットの帽子が似合う粋なマスターだった。JAZZ喫茶でありながら椎の実で食べるうどんは格別に美味かった。マスターのゴンさんは元々のオーナーではなく、創業者のママから引き継いでやっていた。創業者である椎の実のママはさだまさし氏の叔母さんにあたる方で、彼女のひとり息子、つまりさだまさしの従兄弟が黒浜海水浴場の海の事故により亡くなり彼の精霊流しを歌ったものがあの名曲「精霊流し」になっている。歌詞の中に出てくる「あなたが愛した母さん」とは椎の実のママのことで、後々椎の実のママという歌をさだまさし氏は歌っている。

僕にJAZZを教えてくれた大好きだった椎の実は今では跡形もない。店があった場所は道路拡張で道路に消えてしまい昔そこに椎の実というJAZZ喫茶が存在したことなど誰もしらないだろう。しかし確かにこの場所には椎の実という伝説のJAZZ喫茶があって薄暗い照明の中、狭いカウンターに座りレコード棚の奥から聴こえてくるJAZZに心を痺れさせていた僕はいたのだ。