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◇企業システム◇阪急と阪神百貨店の経営統合企業がシステム統合に成功

2008-10-16 14:51:35 | ユーザー

 【ユーザー】阪急百貨店と阪神百貨店の経営統合による持ち株会社として07年10月1日設立されたエイチ・ツー・オー リテイリング(H2Oリテイリング)は、5カ年にわたる「システム全体計画」を策定し、新たな顧客サービスの提供や事業拡大などにも柔軟に対応するシステム基盤を構築し、08年4月から稼働させた。「新システム基盤」は①仮想化技術を用いてグループ内で統合・標準化②既設サーバー約130台をブレード筐体2台(ブレードサーバー32台)に統合③事業継続性や内統部制を強化―などを実現している。 (08年10月1日発表)

 【コメント】百貨店業界が苦戦を強いられているようだ。こんな中、阪急百貨店と阪神百貨店は、経営統合して再スタートすると同時にシステム統合も実現させた。ところで、百貨店の苦戦は、流通の多様化に加え、“戦後世代”が少なくなったことが大きいのではないか。戦後世代は中身よりもどの百貨店の包装紙に包まれているのかが、一つのステータスシンボルになっていた。ところがスーパー/コンビ全盛時代に育った今の世代は、包装紙より中身しか関心がない。東京・新宿の三越に行くと店の中に三越の文字があまり掲げられていないことに気付く。旧世代の人間は三越と聞くだけでありがたかったが、今の世代には通用しそうにもない。百貨店業界にかかわらず、時代の変遷とともに企業合併も増え、この結果システムの統合というテーマがクローズアップされるケースが増えている。この意味で今回のH2Oリテーリングの「新システム基盤」の構築は参考になることが多い。

 今回の「新システム基盤」構築の特徴の一つは具体的な数字が明らかにされていること。これらは、①NECのブレードシステム「SIGMABLADE(シグマブレード)」を中核とした構成で、仮想化技術を用いて、サーバーのCPU使率を従来の約20%から50%以上に高め、システム全体の運用効率(稼働効率)を2.5倍に向上させた。また、システム環境変更やメンテナンスの効率化を同時に実現②ストレージの統合によりディスク容量の約55%削減を実現③ストレージの最新技術「SANブート方式」を導入することによって障害に強いシステムを構築③万一のハードウエア障害時の復旧時間を、従来より最大1/10に短縮が可能―など。このほか、①システム管理手法やサービスレベルを標準化することで、運用コストを大幅に低減②サーバーなどのハードウエアはNECのデータセンターで管理し、事業継続性を強化―などの成果を挙げている。

 これからの企業の情報システム部門は、従来以上にコストに敏感でなくてはその存在価値が問われかねない。アウトソーシングがあらゆる場面で導入が進み、ユーザー企業にはPCだけを設置して処理が可能な“クラウドコンピューティング”もじわじわと企業システムを取り囲む形成になってきた。このほか、アウトソーシングそのものともいえるSaaSなども導入企業が増えつつある。うかうかしていると情報システム部門を素通りした企業システムの構築だって考え始めてきており、すでにこれらに関するセミナーも登場している。企業の情報システム部門が今後も存在価値を維持できるとすれば、事業改革(BPM)とコスト削減のリーダーになれるかにかかっているのではなかろうか。その意味から今回のH2Oリテイリングの「新システム基盤」の事例は、はっきりと成果を数字に表しており大いに参考になろう。(ESN)