企業システム・レビュー・ネット

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◇企業システム◇NTTと米エンタープライズDBがPotgreSQLで資本提携・協業

2008-10-08 17:08:08 | DB

 【DB】NTTと米エンタープライズDB社がオープンソースデータベース「PostgreSQL」の機能拡張と普及促進で包括的パートナーシップを締結した。NTTの100%子会社であるNTTインベストミント・パートナーズ(NTT-IP)からエンタープライズDBへの出資を含む、包括的なパートナーシップについて合意したもの。両社はPostgreSQLおよびその関連技術を対象に、①大規模な分散データーベース環境を実現できるレベルまで拡張性や可用性を向上させる機能開発②NTT事業会社や一般企業ユーザーへの普及促進―で協業する。 (08年10月7日発表)

 【コメント】オープンソースソフトウエア(OSS)のデータベースソフトの2大製品はMySQLとPostgreSQLである。MySQLはサン・マイクロシステムズが買収し経営基盤を確立、現在サンが販売促進に全力を挙げており、今後普及速度が上がることが見込まれる。今回、Postgre Plusの提供元の米エンタープライズDBにNTTが資本参加し協業を開始したことは、オープンソースDB全体の普及にとって大きな意義を持つ。エンタープライズDBのエドボイジャンCEOによると、NTTの出資は、米IBM、米ソニー・オンライン・エンターテインメントにつぐものという。NTTグループはOSSについては以前から取り組んでおり、今回の出資に当たっても宇治則孝副社長は「NTTはグループを挙げて『コスト削減効果』や『自力でシステムの故障解析がしやすい』などのメリットのあるOSSを推進している」と語っている。

 もともと、PostgreSQLは、米国カリフォルニア大学で開発された「Postgre」をベースとするOSSのDBMSである。Posgres開発コミュニティ「PosgresSQL Global Development Group」が組織され、世界中にいる開発者が改良を重ね、これにより、機能、性能、信頼性が向上し、現在では商用DBMSと比べても遜色ないといわれている。もし、商用DBと比べ劣っているとすれば、販売力とサポート力であろう。今回NTTがエンタープライズDBと協業したことにより、これらについて大きく改善が図られたと考えてよかろう。特に期待されるのが、一般企業ユーザーがPostgreSQLを利用した高信頼な企業システムを容易に構築するためのソリューション・パッケージングを共同で検討し、開発すること。この成果はエンタープライズDBのPostgres Plus製品シリーズに組み込んでリリースされるという。OSSを導入したくてもノウハウがない企業ユーザーにとっては朗報だ。

 一方、PostgresSQLのライバルのMySQLは、サンが08年10月30日-31日の2日間、「MySQLユーザコンファレンス2008」を東京ステーションオンファレンスにおいて開催することにしている。「MySQLのパワーを最大限に」をテーマに、MySQL製品の広範囲にわたる魅力と能力とが紹介される。MySQLの一つの売りは、グーグルがMySQとInnoDBを使って最小のダウンタイムでの24時間運用が求められるクリティカルなビジネスシステムを稼働させていること。今回PostgreSQL陣営にNTTグループが参加したことによって、企業の基幹システムへのPostgreSQLの利用が促進され、両者の競合が激しさを増すものと見られる。(ESN)


◇企業システム◇野村総合研究所が「OSS基盤構築サービス」を標準化

2008-10-05 07:13:03 | システム開発

 【システム構築】野村総合研究所(NRI)は、従来から提供してきたオープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」のサービスの一つである「OSS基盤構築サービス」を標準化した次のような4つのサービスパッケージの提供を開始した。①Webアプリケーションサーバ導入サービス(Tomcat/JBoss)②Webアプリケーションサーバ基盤構築サービス(Tomcat/JBoss/Apache/Oracle/MySQL/PostgreSQL)③データベース導入サービス(MySQL/PostgreSQL)④オープンソース・システム基盤構築サービス(Tomcat/JBoss/MySQL/PostgreSQL)。NRIは、OpenStandiaではこれまで170を超えるプロジェクトでの導入実績を有しているが、新サービスでは今後3年間で200社への導入を目指すことにしている。 (08年10月2日発表)

 【コメント】OSS(オープンソースソフトウエア)は、徐々に企業システムに導入され始めてはいるが、まだまだ一部の企業に限られ、Webアプリケーションサーバー以外では広く普及しているとは必ずしもいえない状態である。この原因はいろいろと挙げられる。なんといっても大きいのはOSS技術者の不足である。これは今後の改善を待つしかないが、それ以外にもOSS普及を阻害している原因が考えられる。まず、OSSへの信頼性である。一般のユーザーはこれまでベンダーの提供するパッケージソフトに慣れており、OSSのような形態のソフトの扱いに慣れていない。この点についてはOSSが登場して大分年月を重ね、十分に信頼があることは確認済みと考えても良いだろう。特に最近ではMySQLをサン・マイクロシステムズが買収したように、大手IT企業のバックアップ体制も充実しつつあるので心配はなかろう。

 OSSのソフト特許侵害をを心配するユーザーもいるかも知れないが、これもほぼクリアできたと見てよさそうだ。一時はユーザーも巻き込んでソフト侵害訴訟も辞さないといったこともあったが、その後大きな問題は起きておらず(実はソフト企業において小さなOSS特許訴訟は起きている)、OSSのソフト特許侵害問題をサポートする専門の組織もでき、安心してもよかろう。なによりも大きいのがOSSへの抵抗勢力の代表格のマイクロソフトが、一転してOSS容認に回り、今ではノベルと提携し積極的OSS市場に参入しようとしていることだ。このことはOSSが市場において認知されたと見てよいだろう。さらに、OSSの性能を心配する向きもあるが、多くの調査でむしろOSSの方が性能が高いことが立証されてきている。

 OSSの技術者不足と並び、ユーザーのOSSに対する不安はサポートの点だろう。これについてはNRIなどOSSに習熟したソフト企業がサービス体制を整えつつあるので問題はなくなりつつある。これらを見てみるとユーザーがOSSに対し二の足を踏む理由はないはずだが、現実はちょっと違っているようだ。あるコンサルタントに「何故OSSが企業システムに普及しないのか」問うてみたところ、「私もユーザーにOSSを勧めるのだが、反応がイマイチ」という答えが返ってきた。今、企業システムにOSSを導入しなければならない理由は、まずコスト削減である。コスト削減をしないと経営者はIT化に積極的でなくなるからだ。企業経営に役立つシステムを安く構築することこそ、今後各企業の情報システム部門やCIOに求められる重要課題だ。

 そして、日本のユーザーだからこそOSSの導入に積極的に取り組まねばならない。IT市場は現在ほとんど欧米のソフトベンダーに席巻されている。このことはわが国の産業構造からして不健全だし、翻ってやがてはユーザーや中堅中小ソフト企業に問題が降りかかってくる。決定権のすべてを海外にゆだねることによって、失うものは小さくない。(ESN)


◇企業システム◇NTTデータなど6社が非機能要求項目一覧を公開

2008-10-04 09:40:42 | システム開発

 【システム開発】NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、OKIの6社で構成する「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(非機能要求グレード検討会)」はこのほど、同検討会の成果を公開する「公式Webサイト」を開設し、「システム基盤の要求項目一覧(非機能要求項目一覧)」を公開した。同一覧は、これまで目に見えず、分かりにくかった非機能要求の項目を洗い出し、体系的に整理したもの。この一覧をチェックリストとして利用することにより、非機能要求の検討が容易になる。同検討会では来春を目処に発注者と発注者の共通認識を持ちやすくするための改善策を図っていくことにしていく。 (08年9月29日発表)

 【コメント】NTTデータなど6社は「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討委員会(発注者ビュー検討会)」を設け、これまで要求仕様の中でも機能要求にに係るガイドラインとして「発注者ビューガイドライン(画面編)」(07年9月18日発表)、「同(システム振舞い編)」(08年3月18日発表)、「同(データモデル編)」(同)をホームページ上で公開してきた。今回は、要求仕様の中でも非機能に係るガイドラインの中間結果の発表が「非機能要求グレード検討会」により行われたもの。要求仕様の機能要求とはアプリケーションそのものであるのに対し、非機能要求とはシステムの性能、レスポンスタイム、セキュリティ、システム障害時の耐久性など、主にシステム運用管理にかかわるものをいう。今回公開された「非機能要求項目一覧」のテーマは、①可用性②性能・拡張性③運用・保守性④移行性⑤セキュリティ⑥環境・エコロジー―の6項目。同検討会では今後この6項目について検討を行い、来春を目処にガイドラインの作成を行う予定。

 前回の「発注者ビュー検討会」、そして今回の「非機能要求グレード検討会」の成果が次々と発表されているが、この間ユーザーにおけるシステム障害事故が相次いでいる。これらのシステム障害事故が発生するから、ガイドラインづくりが急がれるのか、あるはこれらのガイドラインは、実際に稼働している企業システムに対して無力なのかは、暫く様子を見てみないと分からない。問題はガイドラインの作成でなく、できたガイドラインが実際のシステム開発にどう適用されるのかという問題だ。ベンダーにとってシステムを受注することは至上命令であり、競合企業と競い合ってとってくるものだ。他のベンダーより1円でも安く、1日でも早く完了させるということが前提となる。そうなると今回のようなガイドラインがどこまで生かせるか、はなはだ心もとない気がする。ベンダーはこれまで赤字案件を抱え、これが業績の足を引っ張り、否応なく改善を求められた。結果的には赤字案件の縮小に繋がったようで、これはこれでいいのだが、これがシステム障害事故の減少に繋がるかは必ずしも保証されない。

 これまで発表されたガイドラインはあくまで各社の努力目標であり、責任目標ではない。そこに大きな問題が潜んでいるように思われる。証券業界ではインサイダー取引などの不正取引の撲滅のため、監視機関を設置し、違法行為には刑罰で臨んでいる。企業システムに対してもそろそろ、証券業界と同じような対応をしないと、今後大事故に繋がりはしないか。ガイドラインづくりはいよいよ大詰めに差し掛かっているが、今度は業界挙げてガイドライン順守の検討会の設置の検討をしてはどうか。もし、これをしないのであれば、このガイドライン作成の努力は水泡に帰すかもしれないのである。(ESN)