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◇企業システム◇野村総合研究所が「OSS基盤構築サービス」を標準化

2008-10-05 07:13:03 | システム開発

 【システム構築】野村総合研究所(NRI)は、従来から提供してきたオープンソース・ワンストップサービス「OpenStandia(オープンスタンディア)」のサービスの一つである「OSS基盤構築サービス」を標準化した次のような4つのサービスパッケージの提供を開始した。①Webアプリケーションサーバ導入サービス(Tomcat/JBoss)②Webアプリケーションサーバ基盤構築サービス(Tomcat/JBoss/Apache/Oracle/MySQL/PostgreSQL)③データベース導入サービス(MySQL/PostgreSQL)④オープンソース・システム基盤構築サービス(Tomcat/JBoss/MySQL/PostgreSQL)。NRIは、OpenStandiaではこれまで170を超えるプロジェクトでの導入実績を有しているが、新サービスでは今後3年間で200社への導入を目指すことにしている。 (08年10月2日発表)

 【コメント】OSS(オープンソースソフトウエア)は、徐々に企業システムに導入され始めてはいるが、まだまだ一部の企業に限られ、Webアプリケーションサーバー以外では広く普及しているとは必ずしもいえない状態である。この原因はいろいろと挙げられる。なんといっても大きいのはOSS技術者の不足である。これは今後の改善を待つしかないが、それ以外にもOSS普及を阻害している原因が考えられる。まず、OSSへの信頼性である。一般のユーザーはこれまでベンダーの提供するパッケージソフトに慣れており、OSSのような形態のソフトの扱いに慣れていない。この点についてはOSSが登場して大分年月を重ね、十分に信頼があることは確認済みと考えても良いだろう。特に最近ではMySQLをサン・マイクロシステムズが買収したように、大手IT企業のバックアップ体制も充実しつつあるので心配はなかろう。

 OSSのソフト特許侵害をを心配するユーザーもいるかも知れないが、これもほぼクリアできたと見てよさそうだ。一時はユーザーも巻き込んでソフト侵害訴訟も辞さないといったこともあったが、その後大きな問題は起きておらず(実はソフト企業において小さなOSS特許訴訟は起きている)、OSSのソフト特許侵害問題をサポートする専門の組織もでき、安心してもよかろう。なによりも大きいのがOSSへの抵抗勢力の代表格のマイクロソフトが、一転してOSS容認に回り、今ではノベルと提携し積極的OSS市場に参入しようとしていることだ。このことはOSSが市場において認知されたと見てよいだろう。さらに、OSSの性能を心配する向きもあるが、多くの調査でむしろOSSの方が性能が高いことが立証されてきている。

 OSSの技術者不足と並び、ユーザーのOSSに対する不安はサポートの点だろう。これについてはNRIなどOSSに習熟したソフト企業がサービス体制を整えつつあるので問題はなくなりつつある。これらを見てみるとユーザーがOSSに対し二の足を踏む理由はないはずだが、現実はちょっと違っているようだ。あるコンサルタントに「何故OSSが企業システムに普及しないのか」問うてみたところ、「私もユーザーにOSSを勧めるのだが、反応がイマイチ」という答えが返ってきた。今、企業システムにOSSを導入しなければならない理由は、まずコスト削減である。コスト削減をしないと経営者はIT化に積極的でなくなるからだ。企業経営に役立つシステムを安く構築することこそ、今後各企業の情報システム部門やCIOに求められる重要課題だ。

 そして、日本のユーザーだからこそOSSの導入に積極的に取り組まねばならない。IT市場は現在ほとんど欧米のソフトベンダーに席巻されている。このことはわが国の産業構造からして不健全だし、翻ってやがてはユーザーや中堅中小ソフト企業に問題が降りかかってくる。決定権のすべてを海外にゆだねることによって、失うものは小さくない。(ESN)