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◇企業システム◇NTTデータなど6社が非機能要求項目一覧を公開

2008-10-04 09:40:42 | システム開発

 【システム開発】NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、OKIの6社で構成する「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(非機能要求グレード検討会)」はこのほど、同検討会の成果を公開する「公式Webサイト」を開設し、「システム基盤の要求項目一覧(非機能要求項目一覧)」を公開した。同一覧は、これまで目に見えず、分かりにくかった非機能要求の項目を洗い出し、体系的に整理したもの。この一覧をチェックリストとして利用することにより、非機能要求の検討が容易になる。同検討会では来春を目処に発注者と発注者の共通認識を持ちやすくするための改善策を図っていくことにしていく。 (08年9月29日発表)

 【コメント】NTTデータなど6社は「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討委員会(発注者ビュー検討会)」を設け、これまで要求仕様の中でも機能要求にに係るガイドラインとして「発注者ビューガイドライン(画面編)」(07年9月18日発表)、「同(システム振舞い編)」(08年3月18日発表)、「同(データモデル編)」(同)をホームページ上で公開してきた。今回は、要求仕様の中でも非機能に係るガイドラインの中間結果の発表が「非機能要求グレード検討会」により行われたもの。要求仕様の機能要求とはアプリケーションそのものであるのに対し、非機能要求とはシステムの性能、レスポンスタイム、セキュリティ、システム障害時の耐久性など、主にシステム運用管理にかかわるものをいう。今回公開された「非機能要求項目一覧」のテーマは、①可用性②性能・拡張性③運用・保守性④移行性⑤セキュリティ⑥環境・エコロジー―の6項目。同検討会では今後この6項目について検討を行い、来春を目処にガイドラインの作成を行う予定。

 前回の「発注者ビュー検討会」、そして今回の「非機能要求グレード検討会」の成果が次々と発表されているが、この間ユーザーにおけるシステム障害事故が相次いでいる。これらのシステム障害事故が発生するから、ガイドラインづくりが急がれるのか、あるはこれらのガイドラインは、実際に稼働している企業システムに対して無力なのかは、暫く様子を見てみないと分からない。問題はガイドラインの作成でなく、できたガイドラインが実際のシステム開発にどう適用されるのかという問題だ。ベンダーにとってシステムを受注することは至上命令であり、競合企業と競い合ってとってくるものだ。他のベンダーより1円でも安く、1日でも早く完了させるということが前提となる。そうなると今回のようなガイドラインがどこまで生かせるか、はなはだ心もとない気がする。ベンダーはこれまで赤字案件を抱え、これが業績の足を引っ張り、否応なく改善を求められた。結果的には赤字案件の縮小に繋がったようで、これはこれでいいのだが、これがシステム障害事故の減少に繋がるかは必ずしも保証されない。

 これまで発表されたガイドラインはあくまで各社の努力目標であり、責任目標ではない。そこに大きな問題が潜んでいるように思われる。証券業界ではインサイダー取引などの不正取引の撲滅のため、監視機関を設置し、違法行為には刑罰で臨んでいる。企業システムに対してもそろそろ、証券業界と同じような対応をしないと、今後大事故に繋がりはしないか。ガイドラインづくりはいよいよ大詰めに差し掛かっているが、今度は業界挙げてガイドライン順守の検討会の設置の検討をしてはどうか。もし、これをしないのであれば、このガイドライン作成の努力は水泡に帰すかもしれないのである。(ESN)