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◇企業システム◇JR九州がメインフレームからオープンシステムへの移行に成功

2008-10-20 08:18:35 | ユーザー

 【ユーザー】JR九州は、約2万本のプログラムが動作する大規模メインフレームシステム2台による基幹システムを16台のサーバーのオープンシステムに移行させることに成功した。これは国内最大級のマイグレーションとなるもので、システム構築はJR九州システムソリューションズとNECが担当。これにより、①TOCの最大50%削減②従来比約40%の省電力化③従来比約90%の省スペース化④決算処理の2時間短縮―などを実現させた。 (08年10月14日発表)

 【コメント】これまでメインフレームは大手企業の基幹システムには欠かせないものとして君臨してきた。しかし、Web時代に突入した現在では大鑑巨砲のそしりをまぬかれない。JR九州では約2万本ものプログラムがメインフレームで処理されてきたわけで、これをオープンシステムに移行させるとなると一大プロジェクトとなるが、NECとの協力の下、成功裏に終わらせることに成功した。特に注目されるのはTOCの最大50%削減効果だ。つまりシステムコストが半減したわけで、企業経営から見ると大成果といえよう。通常だとTOC削減はせいぜい20~30%といったところが普通だ。これを半減させたことは、問題がない限りメインフレームシステムはオープンシテムに移行させるべきだという結論になる。現在メインフレームシステムを稼働させているユーザーは、ベンダー側の意見はひとまず置いて、もう一度ゼロベースで考え直すべきであることを、今回のJR九州のマイグレーション事例は教えてくれている。

 JR九州は、今後、駅ビルテナントなどでのICカード乗車券「SUGOCA」を活用したショッピングなどの新サービスを計画している。この際、システム構築で求められるのは柔軟性だ。これまでの企業システムは一回システム開発を行うと、3-5年は新たなシステム構築は行わないといった不文律があった。しかし、現在のように企業システムをめぐる環境が急ピッチに変化するとなると、3-5年のシステムの停滞は許されない。この対策としてはSOAが有効であろう。今回のJR九州はこの辺を読み取って、NECのサービス実行基盤「WebOTX」を採用し、SOA対応を実現させている。新しいシステム構築はゼロからソフトを開発するのではなく、いかに既存のソフトを利用して組み合わせて使うかがポイントとなってくる。こうすれば柔軟なシステム構築が可能になり、最小限の開発期間で済ますこともできるし、コストも削減できる。構築手法もとりあえずシステムを開発し、手直ししながら徐々に完成させるアジャル手法なども考えてみる価値があろう。

 今回のJR九州のマイグレーションで完成したシステム構成図が面白い。メインフレーム全盛の時代は、システム構成図の真ん中にメインフレームが大きく書かれ、その周りに“周辺端末装置類”がぶら下がって小さく書かれていた。これに対して今回完成したマイグレーションシステムのシステム構成図を見ると、一番上にストレージが大きく書かれている。昔のメインフレームは企業のステータス的な位置づけが大きく、企業経営への貢献度はその次といった感じがしていた。しかし、Webシステムを迎えた現在では、コンピューターシステムがいかに企業経営に貢献できるのかが問われている。そうなるとCPUよりもストレージに蓄積されたデータが一番大事という結論になる。システム構成図一つとってもその企業の姿勢が鮮明に反映される。(ESN)