【アプリケーション】日本オラクルは、従来サーバー導入型で提供していた電子請求アプリケーションをSaaS型で提供すると発表した。この「Oracle Self-Service E-Billing On Demand」は、登録顧客の情報の管理と閲覧、請求金額の管理、電子請求書の発行や支払い状況の確認と、顧客、サービスなどを軸にした請求と支払いにかかわる分析を行うことができる。また、標準技術を基盤にしているため、既存のCRMシステムや財務会計システムとの柔軟な連携が可能。 (日本オラクル:09年3月11日発表)
【コメント】各社からSaaS型ソフトの発表が相次いでいる。日本オラクルも09年3月2日にはSaaS型CRMアプリケーションの最新版「Oracle CRM OnDemand Rlease 16」を発表している。従来パッケージ型ソフトで提供していたものをSaaS型に移行すると、ユーザーはどのようなメリットが得られるのか。最大のメリットは、法制度の改正などでアプリケーションソフトを移行しなければならない時であろう。つまり、ベンダー側のサーバーのソフトを変えるだけで、ユーザー側のアプリケーションが即座に最新のものに切り替えることができるようになる。
ただ、何でもかんでもSaaS型がいいかというと、現時点では疑問点も少なくない。長期的にSaaSを利用するとなると、定額の料金を定期的に納めなければならないのでコストがかさむことが考えられよう。また、セキュリティについても完全に保証されているわけではない。既にセールスフォース・ドットコムでも米国でトラブルが発生したと報じられた。いずれにしてもSaaS型ソフトは、大手企業では基幹系システム以外での利用がまずスタートし、その後基幹系システムにも採用が進むものと考えられる。
一方、SaaSの普及を図るための組織的な取り組みも着々と進んでいる。ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)は09年2月26日に「ASP・SaaS データセンター促進協議会」を設立した。これにより、SaaSのセキュリティ上の問題点の対策を業界挙げて取り組もうとする新たな取り組みであり、今後SaaSの普及にとって重要な役割を演じることが期待されている。
さらに経済産業省が推進しているJ-SaaSが4月からサービスが開始される見込みだ。このJ-SaaSはインターネットを介してサービスするもので、J-SaaS上のポータルサイトを通じて財務会計、給与計算、税務申告など様々なサービスが多額の初期投資を必要せずに活用できる。このため従業員20人以下の中小零細企業でもITを容易に活用できるのが謳い文句だ。既に3月からJ-SaaS運営事務局が主催する「J-SaaS全国キャラバン」がスタートしており、全国10カ所でイベントを開催することにしている。また、3月19日(木)には東京の丸ビルホールにおいて日本経済新聞社主催により「J-SaaSフォーラム」が開催されることになっているなど、サービス開始に向け各種の取り組みが活発化している。(ESN)