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◇企業システム◇米IBMがマイクロソフトの新OS「7」のユーザーへの発言に言及

2009-06-22 09:38:50 | アプリケーション

 【SI事業】米IBMは、企業がコスト効率を追求する中、大手のユーザーがマイクロソフト製品ではなく、Lotusコラボレーション・ソフトウェアを選んでいると発表した。最近の新しいユーザー事例としては、The Coca-Cola Company、HSBC、ABB、BASF、Blue Cross Blue Shield、Fidelity Investments、Hyundai、Liberty Mutual、LindeGroup、Mass Mutual、Nationwide、State Bank of India(SBI)、The Hartfordなどがある。また先ごろロサンゼルスで開催されたMicrosoft Tech・Edコンファレンスの席上で、マイクロソフトの幹部はユーザーに対し、Vistaの評価を止めてWindows7のテストへ移行するよう推奨した。さらに、Exchange 2007に移行していないユーザーに対しても同じ内容が繰り返され、Exchange 2007を購入せずに2010年まで待つように推奨している。これに対し、Lotus Notes/Domino 8は07年8月のの販売開始以降、Lotus Notes/Dominoの過去のどのリリース版よりも今回のリリース版を導入する動きが活発となっており、過去のリリース版と比較して倍以上というスピードとなっている。 (日本IBM:09年6月11日発表)

 【コメント】今回のIBMの発表は、露骨にマイクロソフトの製品政策を批判しているところが注目される。もともとIT業界の王者・IBMは他社のことについて口ばしをはさまないことをモットーにしてきたし、実際他社のことに言及することはこれまでほとんどなかった。ところが、今回の米IBMの発表は、これまでのIBMの良き伝統をかなぐり捨てて、マイクロソフト批判をストレートに行っている。これはIBMが、普通のベンダーになってしまったということなのか、なりふりかまわずライバル攻撃をせざるを得ないのか、あるいはこれまで、マイクロソフトに牛耳られてきたデスクトップ市場での反撃の雄たけびなのか、今ひとつ分からないところがある。

 いずれにしても、マイクロソフトのビスタが市場で歓迎されず、ウインドウズ7を投入して挽回を図る、丁度端境期に当る現在、IBMにとってはマイクロソフト追撃にはまたとないチャンス到来であることには間違いないところだ。もともと、IBMはロータス社を買収し、対マイクロソフト対策の決め手としてきたわけであるが、その成果はいまいちすっきりとしてはいない。IBMのホストユーザーへのロータス浸透はある程度成功はしたが、それ以外の一般市場でのオフィスソフトは、依然としてマイクロソフトの独壇場となっているのはご存知のとおり。

 しかし、ここに来て雲行きが俄かに怪しくなってきている。それはオフィスソフトの今後の動向だ。これまでオフィスソフトはマイクロソフトのオフィスソフトが独占してきたといってもよい状況が続いてきたが、欧州の独禁法違反判決後、オフィスソフトの世界にもオープ化の波が押し寄せ、オープンオフィスソフトへの関心が急速に拡大しつつある。ロータスソフトはオープンオフィスソフトを組み込んでおり、状況としては、誠に動きやすい環境にあるといってよいだろう。そんなおり、マイクロソフトがユーザーに対し「7」出荷まで購入を差し控えてほしいという発言は、またとない“敵失”だととらえたのであろう。

 今後、グループウエアの世界市場は混沌とした状態に入って行くことが考えられる。これまではIBMのロータスとマイクロソフトのエクスチェンジがシェアをとっていたわけだが、これからはクラウドコンピューティング勢が力をつけてくることが予想される。具体的にはグーグルやセールスフォース・ドットコムさらにアマゾンなのである。これらが普及すると必然的にオープンオフィスソフトの比重が高くなり、これまでのオフィスソフトのマイクロソフト独占市場に風穴が開くことになるかもしれない。(ESN)