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◇企業システム◇福島県会津若松市がオープンオフィスに全面移行

2008-08-26 15:41:24 | アプリケーション

 【アプリケーション】福島県会津若松市は、オープンソースソフトウエア(OSS)のオフィスソフトである「OpenOffice.org(オープンオフィス)」を全面的に採用することを08年5月に発表したが、08年10月から240台のPCをリプレースする際、原則としてオープンオフィスのみをインストールすることになった。既にオープンオフィスを採用しているの自治体は北海道伊達市、栃木県二宮市、沖縄県浦添市、高知県四万十町、兵庫県洲本市などであるが、同市はこれらに次ぐもので、本格的な全庁運用は福島県内では初のケースとなる。今後全国の自治体にどのような影響を及ぼすのか、注目を集めている。 (08年8月22日発表)

 【コメント】同市では現在使用しているマイクロソフトオフィス(ワード、エクセルなど)は、OSSのオープンソフトに全面的に移行しし、業務上マイクロソフトオフィスが必要な場合については併用とすることにしている。同市ではオープンオフィス導入の理由について、次の4点を挙げている。①導入コストの削減(5年間で約1500万円削減計画)②文書の保存形式を国際標準のODF形式に移行させ、文書の長期保存とその利用に対応する③文書形式をODFに統一することにより利便性が向上し、市民の負担が軽減される④今後市の情報システムにOSSの導入を進め、地元IT企業の参入機会を増やす。

 同市では07年8~10月に、職員が試用できるように庁内全PCにオープンオフィスを導入したのに続き、08年5~8月にオープンオフィスの職員研修を実施。そして、08年10月以降、240台のPCのリプレースに際しては、原則としてオープンオフィスのみをインストールすることにしている。これまで同市で標準的に使用してきたマイクロソフトオフィスについては必要に応じ併用していく方針。また、マイクロソフトオフィスで作成された文書の受付などは、これまで通り取り扱いを継続するという。

 今回、会津若松市がオープンオフィスを導入したことは、正に英断であったといえる。というのはまだ全庁的にオープンオフィスを導入している自治体は栃木県二宮町などごくわずかだからだ。何故オープンオフィスの導入に慎重になるのかというと、会津若松市もそうだが、オープンオフィスと並行して従来からのマイクロソフトオフィスの扱いも継続しなければならず、二重に手間がかかることだ。それでも同市がオープンオフィス導入に踏み切ったのは、やはりコストの問題が大きいのだろう。さらに、これを機に市の情報システムへ積極的にOSSを導入し、地場ソフト企業を育成したいという思いが強いのではなかろうか。現状では大手ITベンダー系列のソフト企業だけにソフト開発の業務が回っていき、地場ソフト企業が育ちずらい環境となっている。

 ただ、文書の保存形式について、08年4月以降はそれ以前と状況が変わった。以前はISOの文書形式としてはODFのみが承認され、唯一の国際標準の文書形式として認められていた。このためOOXMLを文書形式としてきたマイクロソフトオフィスは、自治体の入札では徐々に不利な立場に追い込まれていた。ところが08年4月にOOXMLがISOから国際標準の承認がおりたのである。つまり、文書の保存形式としてはODFでなくてはならないという根拠はなくなった。果してこのことが、今後全国の自治体がオフィスソフト導入に際してどのような影響を及ぼすのか、先行きは不透明になってきている。(ESN)