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◇企業システム◇マイクロソフトとノベル、WindowsとLinuxの相互運用で提携強化

2008-08-25 16:49:09 | システム開発

 【システム開発】米マイクロソフトと米ノベルは、06年11月開始されたWindowsとLinuxの相互運用での両社の提携事業について追加投資を実施すると発表した。今回の追加投資はMicrosoft Windows ServerとSUSE Linux Enterprise Server間に相互運用性をもたらせるようなソリューションを必要としているユーザーに、ノベルが実施しているツールやサポート、教育ならびにリソース提供プログラムを強化することに重点が置かれる。また、マイクロソフトは、最大1億ドル相当のサポート付き利用証明書をノベルから購入し、ユーザーに提供する。今回の追加投資は08年11月1日から実施される(08年8月25日発表)

 【コメント】マイクロソフトは当初、OSS(オープンソースソフトウエア)のLinuxに対して、OSSはソフトウエア特許違反の恐れがあるとの立場から、Linux陣営に対し徹底抗戦の構えを見せていた。そして、カーネル部分が無料のLinuxは、アプリケーションやサポートまで含めるとWindowsのほうが安く済むといったコスト比較キャンペーンを張り、この結果マイクロソフトとLinux陣営との間はかなり険悪な状態に陥ってしまっていた。しかし、マイクロソフトがいかにLinuxに対し牽制球を投げようとしても、Linuxを導入するユーザーは増え続け、現在ではWindowsの強力なライバルとして無視できない存在になっている。このような情勢に対し、マイクロソフトはLinuxを敵対するのではなくLinuxをWindowsに取り込む新戦略に大きく方向転換を図った。この背景にはヨーロッパにおけるマイクロソフトの独禁法違反裁判が微妙な影を及ぼしたとも考えられる。

 この結果、マイクロソフトが目を付けたのがLinuxOSのSUSEを扱うノベルであった。現在、Linux市場はレッドハットが一人勝ち状態で他のディストリビューションは、レッドハットとの差が出るばかりといった状態にある。このような状況下でノベルとすれば“敵の敵は味方”という論理でマイクロソフトと組むことで、現状の閉塞状況を何とか打開したいという意向が働いたものとみられる。2社が提携することによって、マイクロソフトはLinuxユーザーにWindows環境を食い込ますことが可能となる。さらに、マイクロソフトは仮想化ソフトでシトリックスと提携したが、このシトリックスはOSSの仮想化ソフトのXenを買収しており、Linuxユーザーに対し仮想化ソフトを容易に提供できる体制作りが既に出来上がっていることも見逃せない。一方ノベルは広大なるWindows市場に対し、SUSEを食い込ます絶好のチャンスが到来したことになる。マイクロスフトは「他の(注=レッドハットを指すものとみられる)Linux環境をSUSE Linux Enterprise Serverに移行するための支援が必要とされているケースも多く含まれている」と指摘しており、マイクロソフト=ノベル連合で、レッドハットに揺さぶりをかけようとする姿勢がありありと読み取れる。

 このような動きに対し、レッドハットは今後どのような対応をするのであろうか。カギはIBMが握っていると考えてよいのではないかと思う。もともとIBMは「OS2」崩壊後、マイクロソフトに対抗するためLinuxに力を入れてきたが、中でもレッドハットとの関係は強い。先頃米IBMは“脱マイクロソフトPC戦略”を打ち出し、IBMのオフィスソフトである「ロータスシンフォニー」の全世界普及を強力に推し進める意向を明らかにしたが、このロータスシンフォニーは、OSSのオフィスソフトである「オープンオフィス」との連携を明らかにしている。この流れの中でレッドハットとIBMがさらにパートナー関係を強化して、マイクロソフト=ノベル連合に対抗するのか、暫くは市場動向から目を離すことはできない。(ESN)