【クラウド】富士通は、同社のデータセンターのクラウド基盤を最大限活用し、パソコン、プリンタ、複合機、オフィスに設置された部門サーバなどのICT機器のライフサイクル(企画・設計、導入、運用から撤去・廃棄まで)をトータルに支援する「ワークプレイス-LCMサービス」の販売を開始する。同サービスは、企業内において多様化・マルチベンダー化するICT機器の調達、導入、日常運用や最新環境への移行など、さまざまな作業を、全て月額料金で提供するアウトソーシングサービス。従来、パソコンのみを対象としていたサービスにプリンタ、複合機、サーバなどICT機器全般に対象を拡げ、また、モバイルアクセスやセキュリティ対策など、エンドユーザー環境に求められる幅広い業務に対応する。さらに、各種業務ソフトウェアをインターネット経由でパソコンに提供するサービス DaaSをサービスメニューに追加することで、ハードウェアからソフトウェアまでワンストップで利用できる環境を提供する。(富士通:09年12月28日発表)
【コメント】各ベンダーとも現在、クラウドサービスの拡大に努めている。09年がクラウドの”啓蒙”の年だとすると、2010年は、さしずめ各ベンダーがしのぎを削ってユーザーニーズに如何にフィットしたサービスメニューを企業ユーザーに提示することができるか、クラウドの“具現化の年”とみてよいであろう。逆にいうと先進的な企業ユーザーを除き、大多数の企業ユーザーは、まだ本格的にクラウドサービスを導入しているわけではなく、その有効性の検証を始めているといところである。この際、より具体的なクラウドサービスを企業ユーザーに提示できるベンダーだけが、他ベンダーの一歩先にいくことが可能とするわけで、この意味から2010年は、各ベンダーのクラウドサービスが、企業ユーザーから選別されるスタートの年となりそうだ。
富士通は、このほどクラウドサービスの一つのメニューとして、クラウド基盤を活用し、エンドユーザーのICT機器を支援する「ワークプレイス-LCMサービス」を販売開始した。同社は、04年より約400社のユーザーに提供してきたパソコン向けの支援サービス「PC-LCMサービス」を大幅に強化し、「ワークプレイス-LCMサービス」として、ICT機器の対象を広げ、ユーザーの運用コスト・管理負荷を抑えながら、柔軟性を確保したエンドユーザー環境の実現させたもの。つまり、クラウドサービスというと、サーバー側のサービスと考えられがちであるが、同社は、発想の転換を図り、クライアント側からのクラウドサービスを提供した。
これはいいアイデアである。クライアントの管理には多くの企業ユーザーが頭を悩ましており、ベンダー側からの新しい提案を待ち望んでいる状況にある。つまり、今回の「ワークプレイス-LCMサービス」のミソとなるのが、仮想デスクトップサービス(DaaS)である。これは、 クライアント仮想化環境を短期間で導入し、クラウド基盤から各種ソフトウェアをご提供するサービス。同社によるとこのDaaSは、価格の高価なシンクライアントに対抗できるサービスとしている。つまり、シンクライアントは、初期導入コストが高額になりやすい点が導入の障壁となっているが、同社では、この課題を解決するため、最新技術を搭載した同社のトラステッドなクラウド基盤上に、クライアント仮想化管理システムを標準で実装し、DaaSとして提供することで、ソフトウェアの初期導入コストを軽減できたという。また、ソフトウェア移行・運用のテンプレート(雛形)を用意し、導入期間を大幅に短縮したとする。
今回の富士通以外にも、最近各ベンダーからクラウドサービスが発表されているが、その中の一社が日商エレクトロニクスだ。同社は、企業のプライベートクラウド構築を支援するために、日本HP、マイクロソフト のテクノロジーを活用した新製品として、「プライベートクラウド スタートアップキット」の販売を開始した。これは、プライベートクラウドに最適な拡張性と俊敏性を備えた日本HPのiSCSIストレージ「HP LeftHand P4000SAN」に、システムのサービス継続性を実現するマイクロソフトのWindows Server 2008 R2の「Hyper-V 2.0」と「System Center Virtual Machine Manager 2008 R2」とを搭載したもの。これにより、プライベートクラウド導入までの煩雑な選定時間を短縮するとともに、初めてでも簡単にコストパフォーマンスに優れたプライベートクラウドを構築することが可能となるという。2010年は、クラウドサービスを提供するベンダーにとって勝負の年となりそうだ。(ESN)