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◇企業システム◇米IBM、200以上のユーザーが、他社システムからIBMシステムに移行したと発表

2010-02-10 09:31:59 | システム開発

 【SI事業】米IBMは、09年第4四半期に200以上のユーザーが、サン・マイクロシステムズやHPのシステムからIBMのシステムおよびストレージに重要なビジネス業務を移行させたと発表した。またIBMは、ユーザーの移行プロジェクトを促進および自動化する新しいソフトウェアも発表した。IBMシステムへユーザーの移行を支援するため、4年前に「Migration Factory」プログラムを開始して以来、約2,200の企業がサン・マイクロシステムズやHPから、IBMのサーバーおよびストレージへと移行した。09年は800以上のユーザーがIBM Power Systems、System x、System zのサーバーおよびストレージ・ソリューションに移行したが、その内訳は約550社がサンから、約250社がHPからとなっている。(日本IBM:10年2月3日発表)

 【コメント】ITを駆使したコンピューターシステムは、大きく分類して①企業システム②社会システム③工業システムーの3つに分類できる。企業システムは、一般企業や官公庁などのビジネスシステムを指す。この分野は、従来、メインフレームが主導権を握ってきたが、最近では、オープンシステムのサーバーにWebシステムを載せた形態が主流となりつつある。社会システムは、医療システムとか最近では電力のスマートグリッドなど、社会全体を対象としたシステムを指す。そして、工業システムは、組み込み型システムやCAD/CAMシステムなどである。これらの中で、社会システムは、今後大きな伸びが期待されている分野だ。また、工業システムも、車載システムのニーズの拡大にみられるように、今後大きな伸びが期待できる。

 これらに対して、企業システムは、クラウドなど新しい分野の開拓はあるものの、基本的にはもう市場は飽和したといってもいいであろう。後残るのは、大手ベンダーによる他社ユーザーを如何に自社ユーザーにひっくり返すかという、仁義なき戦いが残っているだけである。IBMは、スマートグリッドなどこれから広がる社会システム市場へ積極的に参入を図ると同時に、飽和した企業システムでは、他社ユーザーを自社ユーザーへと導入する新戦略を打ち出している。特に、オラクルに買収されたサン・マイクロシステムズのユーザーにターゲットを絞った戦略が目に付く。

 競合他社からIBMへ移行した何百件もの事例をもとに、IBMの開発者は、手作業プロセスの多くを自動化することでサンからの移行を促進する新しいソフトウェア・ツールを開発した。このソフトウェアはサンの資産を自動的に発見および識別して移行先のIBM環境への配置計画を行い、業務移行を合理化してハードウェア、ソフトウェア、プロセスすべてにわたって最適化するもの。 このソフトウェアにより、Sun SolarisからLinuxまたはIBMのUNIXオペレーティング・システムであるAIXへと移行するプロセス、そしてアプリケーションおよびミドルウェアをIBMシステムに移行するプロセスを加速できる、としている。この業務中心の手法により、ユーザーによっては移行先への配置計画のステップが週単位から日単位にまで短縮された例も見られる、という。
IBMも随分露骨な表現でサンユーザーの獲得戦略を繰り広げるものだと、関心してしまう。

 ただ、こんな感想も日本国内にいるからできるのも事実。大手国産IT企業は、互いに刺激は避け、まあまあの関係になるケースが多い。しかし、これからは、国産IT企業ともいえども、世界のIT企業と真正面から対決しなければならない局面に立たされることが予想される。その際、他社ユーザーまで手は出さないでは、生き残ることは不可能だ。キリンとサントリーの合併は失敗したが、そうしなければ世界市場で生き残れないところまで来ていることを再認識すべきだと思う。(ESN)