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小説「2023年日本転移」23話

2020年12月30日 | 小説

             23話 縦貫幹線計画

政府の輸送体制確立命令を受けた第二人事総局陸上課が進めている縦貫幹線計画
は困難に対処しつつ順調に建設は進む。
初期から建設中の中央領域幹線、長野ー上越。長野ー新潟。長野ー松本ー甲府ー
富士。長野ー上田ー前橋ー宇都宮ーひたちなか。松本ー富山。
これらの複線を回復、複複線に拡大中であり高圧電力線暗渠も並走させている。
将来建設予定である燃料輸送用暗渠の用地も準備。道路も当然並走の計画。
主体は建設省建設課だが国軍と国民救援隊から40万、陸上課も20万を投入中。
目的は4本のレールを用いての大型列車による大量あるいは重量物の輸送。
船舶輸送壊滅に対する苦肉の対応。
船を建造し荷役施設を建設し道路まで作るのは15年ぐらいを必要とするだろう。

縦貫幹線計画(複複線、道路、電力線、通信、水道、油送パイプ等の幹線含む)

北部縦貫幹線。
宇都宮ー郡山ー福島ー仙台ー一関ー花巻ー守岡ー八幡平ー弘前ー青森。

南部縦貫幹線。
松本ー中津川ー岐阜ー長浜ー京都ー福知山ー津山ー新見ー三次ー広島ー山口ー
下関。

国民救援の要から南部縦貫幹線は30工区で同時建設が進行中。
国民救援隊に組み入れた被災民の大部分を全工区に投入。
陸上課は車両、建設機械、輸送、資材供給、住居、労務、建設管理と多くに
関与し多数の困難と問題を乗り越えている。
建設は電力幹線を先行させ複線を建設し全線開通を待って複複線を建設する。
原油は在るが精製能力不足により燃料は貴重であり建設の電気動力化が進む。

杉原総理は2通の縦貫幹線計画報告書を読み終えた。
建設省と第二人事総局からの報告
「うむ、ほぼ同じと判断して良いだろう・・・」
わずかな時間を利用しコーヒーを楽しむのが唯一の安らぎ
(災害前の世間は無能老人とか老害と罵詈雑言を浴びせていたが・・・
第二人事総局、予想以上に役に立つ。これが無ければ治安は崩壊し日本は絶滅
した・・・怪物対処、組織された老人が居なければ政府も絶望だった。
官僚組織はとっくに壊滅していたからな・・・外国に逃げた官僚が多すぎた)
(南部縦貫幹線の建設が順調に推移したら北部縦貫幹線の建設を開始・・・
問題は建設要員の確保だな・・・東北に壮年は少ない、老人ばかりでは・・・)
コーヒーを飲み置くと目を閉じて腕を組んだ
(子供の投入で解決は無理だな・・・どこかから・・・そうだ!台湾・・・
生存者はおよそ600万人と伝えられてる、食料を提供すれば・・・船だな。
貨物船を修理し沖縄との航路を維持すれば充分人員輸送は可能。
台湾の西方は壊滅と聞いた・・・食料生産全滅につながる・・・すでに限界?)
(通信が問題だ・・・無線が届かんとはな。航空機による伝令が最速とは・・)
「いずれ海底ケーブルで解決だ、空軍の主任務が伝令とは転移前なら笑い話だ」
思わず声に出ていたのに気付いて気を引き締めた。
総理の皮肉を聞かれるのは、よろしく無い。

第二人事総局の鈴木は久しぶりに仲間の特別高齢者を訪れた。
(身動きできず話せずとも生きていてくれれば良いが・・・そろそろ迎えが)
「みなさん、久しぶりです、お加減は?」
返事はむろん反応さえ皆無を予想したが、首が動いて目が鈴木を見つめた
「私を判りますか?鈴木です!」疑問より嬉しさが心を満たした
「うーーううーーー」目に涙が・・・
「良かった、良かったですね!」大声を出すが涙も滲んできた・・・
(ああ・・・生きていた、自分にもまだ将来が・・・5年、10年が在るのだ)
どの部屋も同じく意識は回復している。
4人の真ん中に在るのは模様のある灰色の石・・・どこかで見たような?
(そうだ・・・探検隊が持ち帰った標本。黒石と違い動いた動画は無いが
規則違反。だがあれから数か月岩のままか・・・無害なら騒ぐことも無いな)
みなの顔色も良いと感じながら満足し仕事に戻った。

2024年5月15日。
家を選択した多くの集団が海峡を船で渡り北海道に上陸、予定農場に分散した。
ユウマ家は北見に向かって未だ移動中、現地含め家は60個と聞かされていた。
(なんで俺たちを北見に・・・銃と銃弾を持ってるから?現地に撃つ相手が?)
この道中でも意外と過ごしやすい気候にユウマは首を傾げた。

政府と人事総局による作付は進んでいる、海洋動物捕獲も順調。
不安は気象だったが偵察による地形条件を考えると激変は無いと判断された。
収穫を終えて収量が確定すれば1年計画に移れるだろう。
怪物に対する防衛計画を考えられるのだがと内閣の全員が想う。
無人偵察機による地形掌握は進んだ。
難点は内海に出口は無い、海水は流れ出ていくが艦艇で降りるのは不可能。
南方出口付近は真っ黒の岩が無数に林立し船の侵入を阻む。
物凄い海流の強さ、近づけば最大出力でも脱出不能・・・
その先は激流が続く落差1500mの流れ。
政府でさえ島の外周500キロを偵察するだけで限界。島外は無数の岩島と激流。

長距離通信を失い、飛行も高度3200以下に制限、艦艇は外に出る海路無し。
食料生産は余裕なし、近代工業は壊滅し肥料生産も草創期の方法に戻った。
日本と台湾は巨大な島に閉じ込められた。島に人影は見えない・・・

 

 

 

 

 

 


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