衛星放送で古い連続テレビ小説の再放送を朝やっているが、今週から『君の名は』が始まったようだ。“ようだ”というのは、7時45分というのがちょうど僕の出勤の時間であり、まだ見たことがないのである。明日は土曜日、初めて見ることができる。
『君の名は』は1952年にラジオドラマで放送され、番組が始まると女湯が空っぽになると噂された超人気番組である。その後映画化もされている。主人公真知子のショールの巻き方が“真知子巻き”として流行った。太平洋戦争前後の東京が舞台で、数寄屋橋での出会いから始まるメロドラマである。
さも見たことがあるかのように書いているが、僕はラジオで聞いたことも、映画やテレビを見たこともない。ただ知識としては知っている。単に雑学好きということもあるが、『君の名は』の場合は別の理由もある。それは『哀愁』のリメイクだということである。
『哀愁』は第一次大戦前後のイギリスが舞台。ウォータールー・ブリッジで出会い、愛し合った二人が、運命のいたずらに弄ばれ悲劇の結末を迎えるというメロドラマである。主演はヴィヴィアン・リーとロバート・テーラー。美男美女のカップルである。映画自体もよくできているが(特にお店のロウソクの灯がひとつひとつ消されて行き、真っ暗になっても、それでも踊り続ける二人のシーンなど)、何よりもヴィヴィアン・リーがいい。
『哀愁』は『風と共に去りぬ』の翌年の作品であり、それはヴィヴィアン・リーが一番輝いていた頃だと思う。気性が激しく、自分勝手なスカーレット・オハラと、『哀愁』の弱く、繊細なマイラ、ヴィヴィアン・リーはこの対照的な二人を上手く演じ分けている。ヴィヴィアン・リーというのは僕にとって特別な存在なので、彼女についてはまた改めて書くことにしたい。
というわけで、話は変わってタイトル、邦題の話。『哀愁』の原題は“Waterloo Bridge”、そう橋の名前である。味気ないことこの上ない。最近の邦題は原題をカタカナ読みしたものが多いが、昔の映画会社の宣伝マンには詩人が多かったのか、内容をよく表す素晴らしい題を付けたものが多い。『哀愁』の監督マーヴィン・ルロイに『心の旅路』という映画があるが(これもロマンティックな愛の物語である)、この原題は“Random Harvest”という。訳すと、でたらめな、思いがけない結果、といった感じだろうか。ロマンティックのかけらもない。
広告や情報提供の媒体が数多くある現在と違い、昔はタイトルが興業成績を左右する大きな要因だったのであろう。古い映画の中には、本当に優れた、印象に残るタイトルが多い。
さて、初めてロンドンを訪れた際、行ってきました、ウォータールー・ブリッジに。今にも通りの向こうからヴィヴィアン・リーが歩いて来る、といった雰囲気など露ほどもない、何の変哲もない橋だった。時の流れが悲しい。
が、まあ数寄屋橋よりは ましだろうか。数寄屋橋に至っては、その上下を首都高と地下鉄に挟まれ、今はもうないのだから。せめてドラマの中だけでも数寄屋橋の姿を見てみたいものだ。
『君の名は』は1952年にラジオドラマで放送され、番組が始まると女湯が空っぽになると噂された超人気番組である。その後映画化もされている。主人公真知子のショールの巻き方が“真知子巻き”として流行った。太平洋戦争前後の東京が舞台で、数寄屋橋での出会いから始まるメロドラマである。
さも見たことがあるかのように書いているが、僕はラジオで聞いたことも、映画やテレビを見たこともない。ただ知識としては知っている。単に雑学好きということもあるが、『君の名は』の場合は別の理由もある。それは『哀愁』のリメイクだということである。
『哀愁』は第一次大戦前後のイギリスが舞台。ウォータールー・ブリッジで出会い、愛し合った二人が、運命のいたずらに弄ばれ悲劇の結末を迎えるというメロドラマである。主演はヴィヴィアン・リーとロバート・テーラー。美男美女のカップルである。映画自体もよくできているが(特にお店のロウソクの灯がひとつひとつ消されて行き、真っ暗になっても、それでも踊り続ける二人のシーンなど)、何よりもヴィヴィアン・リーがいい。
『哀愁』は『風と共に去りぬ』の翌年の作品であり、それはヴィヴィアン・リーが一番輝いていた頃だと思う。気性が激しく、自分勝手なスカーレット・オハラと、『哀愁』の弱く、繊細なマイラ、ヴィヴィアン・リーはこの対照的な二人を上手く演じ分けている。ヴィヴィアン・リーというのは僕にとって特別な存在なので、彼女についてはまた改めて書くことにしたい。
というわけで、話は変わってタイトル、邦題の話。『哀愁』の原題は“Waterloo Bridge”、そう橋の名前である。味気ないことこの上ない。最近の邦題は原題をカタカナ読みしたものが多いが、昔の映画会社の宣伝マンには詩人が多かったのか、内容をよく表す素晴らしい題を付けたものが多い。『哀愁』の監督マーヴィン・ルロイに『心の旅路』という映画があるが(これもロマンティックな愛の物語である)、この原題は“Random Harvest”という。訳すと、でたらめな、思いがけない結果、といった感じだろうか。ロマンティックのかけらもない。
広告や情報提供の媒体が数多くある現在と違い、昔はタイトルが興業成績を左右する大きな要因だったのであろう。古い映画の中には、本当に優れた、印象に残るタイトルが多い。
さて、初めてロンドンを訪れた際、行ってきました、ウォータールー・ブリッジに。今にも通りの向こうからヴィヴィアン・リーが歩いて来る、といった雰囲気など露ほどもない、何の変哲もない橋だった。時の流れが悲しい。
が、まあ数寄屋橋よりは ましだろうか。数寄屋橋に至っては、その上下を首都高と地下鉄に挟まれ、今はもうないのだから。せめてドラマの中だけでも数寄屋橋の姿を見てみたいものだ。
「君の名は」は、「哀愁」をまねたものですね。
「哀愁」は宝塚歌劇でもやっていたので、観に行きました。
私は、古い映画に興味があります。
厚かましいお願いだと思いますが、貴方のブログを私のブログにリンクさせていただけないでしょうか?
僕も本当にそう思います。古い映画は良いですよね。
シンプルなんだけど、その分、強く、ストレートに心に響いてきます。
あと、場面と不釣合いというか、不必要なまでに大げさな音楽(効果音?)が好きです。
リンクの件、光栄です。こちらこそよろしくお願いします。
今後ともどうか宜しく。
「風邪と共に去りぬ」の、(タラのテーマ)好きでした。昔の映画は常にバックに音楽が流れていましたね。
水野晴郎さんの解説も良いですが、なくなられた、淀川長治さんの解説も好きでした。