特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

バネばかりに落下した物体が次の反動で浮き上がる条件

2019-08-18 20:23:27 | 力学

1. まえがき

 下記の問題が載っていた。はじめ、問題の意図や意味も汲み取れなかった。

2. 問題

 図のように質量の無視できるバネの下端が床に固定され、上端は水平に保たれた固くて厚さの無
 視できる薄い板(質量2m)の重心に取り付けられている。この時、バネの自然の長さからd縮ん
 で静止した。この時の板の位置を最初の釣合の位置とする。板の重心鉛直上方の高さHの位置か
 ら大きさの無視できる小物体(質量m)を初速度なしで落とし、板に衝突させた。衝突後小物体
 は跳ね返らずに板と一体になって動き始め、床に到達する前に最も低くなる位置に到達した。そ
 の後、ともに鉛直上向きに運動してから、小物体は板から離れ、鉛直上方に飛び出た。バネは鉛
 直方向にのみ伸び縮みし、バネ定数は一定であり、空気の抵抗は無視できるものとする。重力加
 速度の大きさをgとし、以下の問に答えなさい。

 問 衝突後、小物体がバネの運動により、板から離れて飛び出るために必要な高さHを求めよ。


3. 解法

 始め意味が分からなかったのは幾つかの不明点があった。

 ・ 小物体が離れることの意味・・・・離れる条件として、バネは単振動をしており、最大上部
   に達したとき、下向きに最大(最小?)の加速度をもちます。この加速度が -g より小さけ
   れば、mの -gによる落下は、2mの台の下降についていけず、浮き上がる。という方針で計
   算した。
 ・ 板と小物体の衝突の条件・・・・運動量保存則がなりたつ。
 ・ バネ定数が与えられていない・・・板の質量2mと初めの静止位置dから求まる。

 3.1 条件定数の計算

  まず、2mとバネの釣合で、

    kd=2mg → k=2mg/d・・・・・・①
  とバネ定数がわかる。

  mと2mの衝突で運動量保存が成り立つと仮定すれば、mの衝突前の速度は落下の位置エネルギ
  ーに相当するので -√(2gH) だから、衝突後の(m+2m)の速度v₀は

    -m√(2gH)=3mv₀ → v₀=-(√(2gH))/3・・・・・②

 3.2 運動方程式

  運動方程式は上下方向を y軸に取って
    3my''=-ky-3mg → y=-3mg/k+Acos wt+Bsin wt 、w=√(k/3m)・・・・・・③
    y(0)=-d , y'(0)=v₀
  だから
    y=-3mg/k+(3mg/k-d)cos wt +(v₀/w)sin wt
  したがって、
    y''=-w²{(3mg/k-d)cos wt +(v₀/w)sin wt}

  この最上部の加速度は cos/sin の係数の2乗和の平方根 -w²√{(3mg/k-d)²+(v₀/w)²} であ
  り、これが、-gより小さければ浮き上がる。

    -w²√{(3mg/k-d)²+(v₀/w)²}<-g・・・・・④

  ここで、①②③を使って
    (3mg/k-d)²=(3d/2-d)²=d²/4 , (v₀/w)²=(2gH/9)3m/k=(2gH/9)3d/(2g)=Hd/3
    w²=k/3m=2g/(3d)

  これを④に入れて
    (2g/3d)√(d²/4+Hd/3)>g → d²/4+Hd/3>(9d²/4g²)g² → H/3>9d/4-d/4=2d
     → H>6d
  を得る。

4. 別解

 別解としてエネルギーを使った解法があった、計算は簡単で結果も一致する。バネが自然長に
 なったところでエネルギーの比較しているのだが、回りくどく、ゴチャゴチャしてハッキリし
 ない。さらに、小物体が離れる論理がどうもわからない。


 手順が簡単で結果も一致するので、なんとか考えた結果、以下のように理解できた。結局、離
 れる論理は上のものと同じ、「バネの最上部での加速度が -gより小さくなればよい」となる。

 すると上の運動方程式③で y''=-g とすると、y=0、つまり、バネの自然長のとき、-g となる。
 したがって、この自然長以上の振幅になればmは離れることになる。この時は、速度が0で、バ

 ネも自然長だから、位置エネルギーしかない。

 位置エネルギーの基準を始めの釣合位置、y=-d にすると、この自然長でのエネルギーは位置
 エネルギーのみで、
   3mgd  ・・・・・・・・・・⑤
 となる。衝突直後のエネルギーはバネのエネルギー
   kd²/2=mgd    ・・・・・⑥ (①式を代入)
 と、(m+2m)は②式の速度を持つから運動エネルギー 

   (3m)v₀²/2=mgH/3・・・・・⑦
 の和となる。結局、エネルギーが保存によって、⑥+⑦のエネルギーによって、最上部に達す
 る。そして、このエネルギーが⑤より大きければ、バネの自然長を超え、バネが縮むとき、-g
 より小さくなって、小物体は浮き上がる。つまり
   mgd+mgH/3>3mgd → H>6d
 となる。

以上


実数の定数Nに対し、実関数 f(x,y,z)=xy+yz+zx+Nxyz が x+y+z=1、x,y,z≧0 を満たすとき、fの値の範囲を求む。

2019-08-18 18:17:21 | 解析(極値)

つぎの自作問題というものがあった。

[問題]x+y+z=1、x,y,z≧0 と実数の定数Nに対し、実関数f(x,y,z)=xy+yz+zx+Nxyz のとりう
    る値の範囲を求めよ。

[解]fは有界閉集合上の連続関数だから、最大最小が必ず存在する。したがって連続関数fの範囲は
   その最大最小の範囲なので、これ等を求めればよい。ラグランジュの未定乗数法を使う。
   これによって求めた、停留点は上の閉集合の内部であるから、まず、境界の最大最小を求めて
   おき、ラグランジュの結果と比較して、最大最小を求める。

1. 境界の評価。

 x+y=1 , z=0 の境界を考えると f=x(1-x) なので

   0≦f≦1/4・・・・①
 となる。 対称性から、他の境界も同じとなる。

2. ラグランジュの結果(領域の内部の評価)

 λを消してまとめると (x-y)(1+Nz)=(y-z)(1+Nx)=(z-x)(1+Ny)=0
 を得る。すなわち、(x-y)=(y-z)=(z-x)=0 を選ぶと
   x=y=z(=1/3)・・・・②
 となる。他の選び方により
   x=y かつ 1+Nx=1+Ny=0・・・・③
 または
   y=z かつ 1+Ny=1+Nz=0 ・・・・④
 または
   z=x かつ 1+Nz=1+Nx=0・・・・⑤
 がある。

 2.1 N≧0 のとき

  N≧0 のときは x,y,z≧0 のため、1+Nx などは正となり、③➃⑤がなりたたず、条件は②
  のみになり、

    x=y=z=1/3
  となる。

  f≧0 は明らか。 f(1,0,0)=0 なので、f=0が最小値。

    f(1/3,1/3,1/3)=3/9+N/27=1/3+N/27
  すると①と比較して
    (1/3+N/27)-1/4=1/12+N/27>0
  なので、
    0≦f≦1/3+N/27

 2.2 N<0 のとき

  ③の条件、x=y かつ 1+Nx=1+Ny=0 のとき、x=y=-1/N, z=1-2x=1+2/N となる。
  すると

    f=1/N²+2(-1/N)(1+2/N)+N(1/N²)(1+2/N)=-(1/N+1/N²)
  対称性から、➃⑤の時も同様。

  以上から
    a=min{0,1/3+N/27,-(1/N+1/N²)}
    b=max{1/4,1/3+N/27,-(1/N+1/N²)}
  とおくと
    a≦f≦b
  となる。

以上