D9の響き

Guitarを肴につらつらと・・

Perfect Angel('74)/Minnie Riperton

2008-04-03 22:48:50 | vocalist
私がまだ洋楽を聴き始めた頃に偶然耳にし、その後ようやく詳細が分かったという歌が多数あります。
その中のひとつがMinnie Riperton(ミニー・リパートン)の“Lovin' You(ラヴィン・ユー)”です。
本日はこの名曲が収録された彼女のソロ第2作“Perfect Angel(パーフェクト・エンジェル)”をご紹介しましょう。

'47年11月8日シカゴ出身の稀代の名歌手が、苦労の末ようやく世に認められた記念すべき作品です。
この作品からシングルカットされた“ラヴィン・ユー”が'75年のビルボード・シングル・チャートNo.1を記録し、アルバム自体ももゴールド・ディスクを獲得する売れ行きだったそうです。
残念ながら、この4年後、彼女は不帰の人となります。
享年31歳・・あまりにも早逝でした。

personnel:
Minnie Riperton(vo)
Richard Rudolph(g on#8)
El Toro Negro(d on#1,pf on#2,5 e-pf on#3,4,6,7,8,9 harmonica on#9)
Michael Sembello(g on#4,9 g-solo on#3)
Marlo Henderson(g except#4,8,9)
Sneeky Pete(p-steel.g on#2)
Reggie McBride(b except#8)
Ollie E.Brown(d on#2,3,6,7,9)
Rocki Dzidzornu(per on#4,5,9)
Denise Williams(cho on#5,6,7)
Lani Groves(cho on#5,6)
Shirley Brewer(cho on#5)
Yvonne Wright(cho on#5)

今回、この作品を入手して初めて知った事実があります。
上記の面子3人目に記載の“El Toro Negro”なる人物とは、誰有ろう“Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)”その人なのです。
そして、その彼から2曲提供もされ、クレジットには記載がありませんがプロデュースも担当してもらってるようです。
スティーヴィーが偽名なのは、主に彼の所属レーベルとの問題が原因だったようですが、スリーヴ裏に載せられた“非常に特別なファン”からのメッセージなどから戦略の一環だったのでは、という説もあるようですね。
ミニーはソロキャリアの開始直後、スティーヴィーと交友を結びバックコーラスのメンバーに加わってます。
彼からもその才能を絶賛されていた関係で、この作品での絶大な支援を授かったようです。
このあたりの経緯は、邦盤ライナーにあった詳しい資料で初めて知った事実です。

その他、目を引く面子としては、彼女の最愛の夫でありソングライティング面での相棒でもあったRichard Rudolphが唯一#8でアコギを弾いてます。
・・あの“ラヴィン・ユー”の生ギターがそれですネ。
また、ギターで参加してるMicael Sembello(マイケル・センベロ)の存在が興味深いですね。
3曲で弾いてますが、ジャジーな雰囲気が濃いプレイがなかなかです。
彼の初期キャリアとして自身のサイトでもクレジットされてます。
コーラスではDenise Williams(デニース・ウイリアムス)あたりに目が行きますね。
スティーヴィーの名曲"That's What Friends Are For"でも歌ってたあの方です。

tracks:
1.Reasons
2.It's So Nice(To See Old Friends)
3.Take A Little Trip
4.Seeing You This Way
5.The Edge Of A Dream
6.Perfect Angel
7.Every Time He Comes Around
8.Lovin' You
9.Our Lives

ミニーはソロ以前に“The Rotary Connection”というR&Bバンドのヴォーカリストとして活躍しており、かなり高評価を受けていたようです。
この辺まだ未確認ですが、このバンドはジャジーなアレンジを売りにしており、その辺を継承したような音創りも目指していたようです。
意外なコード展開やエレピの柔らかい音色、よく走るメロディアスなベースライン、手数が多くシャープなショットのドラムスなど、従来のモータウン系R&Bとは全く違うアレンジと言っても良いと思います。
中にはカントリーロック調や、カリプソ、アフロあるいはラテン調の曲もあったりと、サウンド的にはジャジーでソウルテイストがあるソフトロック的な作品に仕上がってますね。
一言で形容すれば、まるで“陽だまり”のような作品でしょうか。

#2,6などはカントリー調のバラードだったり、#4,9あたりはカリプソ&アフロ風、と実にホンワカムードですね。
リズムも緩めで、アンプラグド的な雰囲気が濃厚です。
R&B嗜好を強く感じるのが#5“The Edge Of A Dream”あたりで、ガールズコーラスがモータウンを連想させるようですが、ちょっとアフロっぽかったりしますね。
少々ブルーズロックな#7“Every Time He Comes Around”などは、ほんとに湿り気ゼロですね。
ヘタウマ風のギターが結構いい味出してます。
“私は決してブルーズを歌わない”といい続けていたそうですが、確かにこの歌を聴く限りブルーズには不向きだと思わせるような天性の“明るさ”を感じます。

そんな中、アルバムタイトル曲である#6“Perfect Angel”が抜群にカッチョエエですね。
ジャジーなメロディやサビのコーラスの煌びやかさに加え、印象的なベースラインの美しさにぐっと惹かれます。
・・これは一応次点かな。
#3“Take A Little Trip”と共にスティーヴィーが書いたものですが、どちらもほんとにジャジーでいい感じです。

ま、何と言っても一押しは#8“ラヴィン・ユー”しかないでしょう。
この曲は、ミニーがソロキャリアを始めてすぐに移り住んだフロリダの自宅で、子供達が昼寝をとる際に歌ってた子守歌だそうです。
夫の生ギターとスティーヴィーのエレピに加え、クレジットでは“神”とされてる小鳥達の囀りをバックに歌われる名バラードですね。
このオリジナル盤のラストでは、愛娘マヤの名を連呼しながらきっちりエンディングを結んでるのにびっくりしました。
私が長年聴き続けてきたベスト盤“The Best Of Minnie Riperton”では、フェードアウトで終わってるんですからネ。
そして、この心地よいエレピがスティーヴィーのプレイであったという事実・・実に納得出来ます。


【Minnie Riperton】

5オクターヴ半という驚異的なレンジを有した天性の歌姫は、生前何事にもポジティヴな考えを持っていたと聞きます。
例えば、半分水で満たされたコップを見て、“半分しか入っていない”と感じるか“半分も満たされている”と感じるかは、その人の意識次第で違って来ますよね。
ミニーは後者だったそうです。

病に握られた自分の余命を計りながらの毎日でしたから、そう考えるようになったのも理解できるような気がします。
事実としっかり向き合い、実り多い記憶に昇華するための、彼女なりの意識改革だったに違いありません。
短くも精一杯生き抜いた彼女の生き様が、私にはとても眩し過ぎます。

茨の道の厳しさは、とうてい本人しか分かり得ない事実なのでしょうね・・今も昔も。


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2 コメント

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240様 (elmar35)
2008-04-04 20:15:02
コメントありがとうございます。
ご無沙汰してます。(笑)
・・珍しいですか、ん、確かにね。
最近は勤めてロックの名盤と呼ばれてるモノを出来るだけ聴くようにしてます。
この作品はいわゆる名盤ではないのですが、懐かしモノということでチョイスしてみました。
なかなかコメント入れる機会が持てなくてごめんなさいね。
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こんばんは (240)
2008-04-04 00:33:46
elmar35さんにしては珍しいセレクトですね^^。
私もミニーは詳しくないのですが、ベスト盤を聴いて、意外にもクロスオーバーなバック演奏に、とても満足した記憶があります。
この人のアルバムを聴くと、その前向きな姿勢に、ただただ敬服するばかりです。
音楽面のみならず、その生き方も素晴らしい方ですね。
記事TBさせて頂きました。
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