D9の響き

Guitarを肴につらつらと・・

Pray For Rain('02)/Atlantis

2006-11-29 16:58:32 | allan holdsworth
今日は例によってAllan Holdsworth先生ネタですが、かなりマニア向けかもしれません。
ミレニアム以降のマイナーな客演盤2枚を今回と次回に分けて紹介します。

まず本日は‘Atlantis(アトランティス)’というバンドの2nd‘Pray For Rain(プレイ・フォー・レイン)’です。
Atlantisは、南カリフォルニア・・最近ではSoCal(Southern Californiaの略)と呼ばれてるそうですネ・・を拠点に'90年半ばに結成され'97年に1st‘Atlantis’でデヴューしたプログレ系の連中です。

【Atlantis('97)】
当時のメンツは、Ken Jaquess(ケン・ジャックス:b)、Teknobudd(テクノバッド:kb)、Matt Hedrick(マット・ヘドリック:d)の3名だったようですが、ドラムが抜けKenとTeknobuddのユニットとして'02年にリリースされた2ndが、今回採り上げる作品となります。

中心人物の一人Ken Jaquess(b)は、つい最近自身のクールなHPを閉鎖してしまいましたが、SNSのMySpaceにサイトを開いてます。
そこの情報では現在41歳・・'65年頃の生まれでしょうか・・私と近いじゃないか!(笑)

SoCalに生まれ育ち、現在はロス在住のようです。
11歳でギターを始め、13歳でベースに転向。Bootsy Collins(P-Funk)のフリークで、Jazz/Fusion系の音楽をこよなく愛し、フェイヴァリッツはStanley ClarkeBob MagnussonJohn Paul JonesGeddy LeeChris SquireJohn Wettonらの名を挙げてます。
音的には野太くガリガリ気味のフラッシーな手管が持ち味で、ピック弾き主体なところでChris Squireをイメージさせます・・もうちょいヘヴィーかな。
ただBootsyの信奉者だけあってグルーヴ重視の重いノリが好みのようですネ。
キャリアとしては、New Cross(現Rain Of Thought)、Dresdenなど多数のプログレ系のバンドで経験を積んで来たようです。

もう一人のキーマンであるTeknobudd(kb)はこの作品からTeknobudd‘X’を名乗りヴァージョンアップを図ってますネ。
本名はJorge Vasquez(ホルヘ・ヴァスケス)というそうで、サーチをかけても素性がはっきりしません。
同姓同名のMLBの選手や怪優がいますが・・あんなんと一緒にすなっ!・・って意味でステージネームを名乗ってたのかな?

【the others】
・・メディアでの彼の評価は、なべて高いですネ。
音的には、ソリストではなくアンサンブル重視のタイプで、例えばホッピー神山氏みたいなイメージかも。

あと、めぼしいメンツとしてはKarl Johnson(カール・ジョンソン:g)くらいで、この方もMySpaceにサイトを持ってます。

目立った活動はなさそう(私が知らないだけかも?)ですが、次回採り上げる予定のバンドで再びKenと合流してます。

またリズム隊2名・・Hank Wicke(ハンク・ウィッケ:d)がリリース時の正式メンバーで、Bob Craft(ボブ・クラフト:d)がヘルプとなってます。
ほぼ半分ずつプレイをシェアしてますが、彼らも詳細が分りませんでした。

そして、今回唯一のウイーク・ポイントとなっているヴォーカルDavid Bodnar(デヴィッド・ボドナー)・・彼も素性が分りません。
これだけバックがいい素材に恵まれてたにも関わらず、Ken達がどうして彼を選んだのか理解に苦しみます。
声の感じは、B級(C級?)のカレッジ・バンドに良く居そうな‘腰砕けヴォイス’で、例えば酔っ払ったMichael Stipe(REM)みたい・・あるいは睡眠不足のMike Patton(Faith No More)なんて声もあります・・Webでネ。

【LtoR:M.Stipe&M.Patton】
とにかくダメ・・残念!!

・・そんな彼らの作品に、1曲だけAllan Holdsworth先生がGソロで客演してるんです。(笑)

Kenによれば、'81~'82年頃・・丁度先生がSoCalに越してきた頃から付き合いがあり、幾度と無くセッションを行ったこともあり、かなり仲が良い間柄とのことです・・これも、あながちウソではなさそうですがネ。(笑)

前置きが長くなりました・・曲に移ります。

1.Pray for Rain:
有史以前のプリミティヴな人類が抱く自然の脅威への畏怖・・殺伐と乾燥した大地に雷鳴が轟き荒れ狂う嵐・・風よ吹け雨を齎せ・・。
・・農耕民族でないと生まれない発想から、どうもエジプトやメソポタミアを意識したフシが感じられる大作ですネ。
SEを効果的に入れながらドラマチックに展開してゆくこのタイトル曲は、例えばDream TheaterのPull Me UnderとMetropolis Pt.1(either from Images And Words)を混ぜたような感じかな。
全然テクニカルなことはやって無くても、実に重厚な世界を構築してる様は凄いの一言・・これでヴォーカルさえ良ければ最高のキラーチューンになってたのに・・。

2.Magnificent Desolation:
詩の世界では、#1の延長といった感じです。音は幾分スペーシーな感じかな。
キーボード主体の音空間がまるでGenesisのようです・・シングルノートでのギターのバッキングが結構複雑なことをやってますネ。

3.Lelune:
ドリーミーなバラード・・アルペジオで紡がれる音の渦が風のように流れてゆきます・・サビでのツインGでのハモリもいい感じです。
弱いヴォーカルながらコーラスを重ねロマンチックな音に仕上げようという意図は感じられますネ。

4.Again:
2分弱の短いインスト・・5拍子で結構熱い曲・・ギター頑張ってますね!(笑)

5.The One:
これもGenesisぽい雰囲気です・・KbがTony Banksみたいですね。
もどかしい想いを彼女にどう伝えよう・・かなりテンバッてる様子がサウンドにも上手く現れてますな・・でもテーマがちょっと違うような気も・・。
・・Gのリフ構築技術は一聴の価値あり!

6.Hills of Time:
再び#2みたいな世界・・歩む茨の道の苦しさは夜も続きます。
途中、ブレークから転調しクリシェで展開してゆくサビがカッコいいですネ・・これもDTみたい!いいっすね・・一押しかも。(笑)
・・曲の良さがすべてのマイナス要因を凌駕してます・・カッコイー。

7.Secret Realm:
#6の続きみたいな感じかな・・夜の帳の中で思い浮かべる辛さに涙しながら・・。

8.Ocean to Cross:
そしてこの曲が最大のハイライト・・Holdsworth先生登場です。
ベースがゴリゴリ唸り、まるで呪文のように変拍子でシークエンシャルに続くシンセに乗って
・・出た!ウネウネソロ。
曲想としては大海の大きくうねる波間を、一艘の船が時折差し込む陽の光を受けながら希望の新天地へ向かって突き進む様のようです。
先生のギターもそんな小船の必死で渡ってゆくイメージを上手く表現しいるようですネ。
バックのKarlも先生と入れ替わりながらイカしたラインを刻んでいます・・ヴォーカルが惜しい!

9.Forest Cathedral:
森の奥に打ち捨てられ朽ち果てた神殿を前に想う太古の淡い夢物語・・。
Kenの夢想する古代の世界は、まるで終わりなき物語のようです。
・・エピローグに相応しい、組曲風でドラマチックな美しいアレンジですネ。

繰り返し聴き込んでみると、気になって仕方がなかったヴォーカルの弱さも、不思議になじんでしまいます。
バックの構築がかなり緻密で完成度が高いせいもあるのでしょうが、もしかしたら敢えて歌を削いだのかも・・って思ったりもしました。
欧米のプレス・レヴューを読んでいても、やはりこのヴォーカルの弱さが気になると、度々指摘されてますネ。
・・やっぱり、残念!


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