断片/黄昏の向こう側で
(市振のタラ売り))
朝靄をひきさいて
上りの列車がはいってくる
駅のベルは
時間の遠近をみだす
根のおおきな風呂しきをせおい手に手に荷物をもった
市振のおばさんたちが三、四人(能生や糸魚川からも)
改札口をがやがやぬけて駅横の
おきっぱなしのリヤカーに
方から荷物を内いているところまでが
影絵のようにみえる
あ!いつものおばさんたちは
かならず家に立ち寄る
けど学校をずる休みしている少年のわたしを
呼ぶ声がする
寝床のなかから青ざめた老人が
手招きをしている
え!写真でしかきおくのない祖父のぼやけた顔だ
戦後まもなく
家族に隠れて酒のかわりのメチールを飲み過ぎて
逝ってしまったはずの
(「菊正宗」を本人かけて「霧島」を棺にいれたという)
節操のないじかんに
青ざめる
「たらいらんけねー」
市振のおばさんたちの声がちかずいてくる
う!過去と未来の挟み撃ちだ
宙に浮きながら落ちれば肋骨がひび割れそうだ
じかんの遠近には順列はない
なにもかも消すことだ、と
消したはずだが
タラ売りのさみしい声の
じかんが
軒下でえんえんと
天日に干されていた
以上です。
(市振のタラ売り))
朝靄をひきさいて
上りの列車がはいってくる
駅のベルは
時間の遠近をみだす
根のおおきな風呂しきをせおい手に手に荷物をもった
市振のおばさんたちが三、四人(能生や糸魚川からも)
改札口をがやがやぬけて駅横の
おきっぱなしのリヤカーに
方から荷物を内いているところまでが
影絵のようにみえる
あ!いつものおばさんたちは
かならず家に立ち寄る
けど学校をずる休みしている少年のわたしを
呼ぶ声がする
寝床のなかから青ざめた老人が
手招きをしている
え!写真でしかきおくのない祖父のぼやけた顔だ
戦後まもなく
家族に隠れて酒のかわりのメチールを飲み過ぎて
逝ってしまったはずの
(「菊正宗」を本人かけて「霧島」を棺にいれたという)
節操のないじかんに
青ざめる
「たらいらんけねー」
市振のおばさんたちの声がちかずいてくる
う!過去と未来の挟み撃ちだ
宙に浮きながら落ちれば肋骨がひび割れそうだ
じかんの遠近には順列はない
なにもかも消すことだ、と
消したはずだが
タラ売りのさみしい声の
じかんが
軒下でえんえんと
天日に干されていた
以上です。