遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「兎の森」改訂

2010-04-01 | 現代詩作品
兎の森



わたしは恐竜になりそこねた
ウサギだった頃
人生の明暗や
美貌という濃淡の
属性からも自由になりたくて
中世の森をかけめぐる
ひとりの孤独が一番のなぐさめであった
今日も
「理性は小声でしゃべる」という
中世の森に来て
詩や小説は
私語りの花盛りだと
見知らぬ小鳥が教えてくれたことを思いだす
そんな夢からさめて
ベッドを転がり落ちる朝
窓から見下ろす
外は雪
いちめん悔恨の雪
恐竜になり損なった
ウサギの耳目という器質的な淋しさ
詩や小説の
私語りの寒さにふるえる
ふるえながら
わたしは多情なウサギと交尾を繰りかえす
こんな孤独がほかにあるだろうか
雪はため息の結晶
毀れた食器のかけら
遅延する社会の
勃興をねがうように
中世の森の向こうを流れる脳髄の川を
三月生まれの
夕月は
静かにただよう
桃色の胎児ではないか



*今日から4月ですね。こちらの町の桜はあと1週間で満開を迎えそうですが、
あなたの地区の桜は、いかがですか。