遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「片道切符」

2010-04-05 | 現代詩作品
片道切符



行く先の書いてない
切符をにぎり
火をくぐり
水をくぐって
あぶり出るあいまいな不安や恐怖に
乗り合わせた人の
命運ははかりしれない
だから
荒れ野にはじめてレールを引いた人のことを
思うと
手元の切符が
震える

震えながら
死んでなおその先の場面を
生きようとしている
詩の道ってどこにあるのか
行旅死亡人と名付けた
無縁な人々が
電車内での遺失物と
区別がつかない、ついの栖
他人が見ない、見えみないわけではない
手一杯の自己がいて
自己愛のツタが
民俗資料館のめぐりに蔓延している

金沢発上野行きの
夜行列車「北陸」「能登」が
ついに路線から消えてしまい
帰郷できなくなった
新生ふるさと喪失者たちは
純文学のように
消滅に向かう
過渡期さえみえないで
動画に夢中の
だれもが作家だと思いこむひとはいない
という特権的な傲慢が
消えたわけではない

それどころか
パッケージ旅行ではないから
個人の幸福感を
追求するにはわがままでなければ
うまくいかないのか
行く先のない
切符では
とりかえしできない、しようとも思わない
行旅死亡人の
生涯と変わらない
孤立化が
どこで断ち切ることが出来るか


*こちらは(北陸)今にも雨が降りそうな朝です。
さて、今日も頑張りましょう!