ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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ルードヴィッヒ

2006-12-06 22:56:38 | 映画
ドイツ、ロマンティック街道の終点フュッセンにある、ノイシュヴァンシュタイン城。
別名白鳥城とも言われ、旅行パンフレットの表紙やジグソーパズルなどでもたびたび見かける、白亜の美しい城である。
この城の美しさの特筆すべきところは、それが美しいドイツの森の中にあるということだ。
森というか山の中腹に聳え立っていて、美しい自然と白亜の人工美がえもいわれぬコントラストを描いている。
フュッセンはノイシュヴァンシュタイン城と近くのホーエンシュヴァンガウ城という観光資源があるだけの小さな町だが、
この小さな美しい町を私は二度訪れたことがある。
最初は学生時代の卒業旅行で。二度目は新婚旅行で。

ノイシュヴァンシュタイン城もホーエンシュヴァンガウ城もバイエルンの若き王、ルードヴィッヒ二世が建造した絢爛豪華な城である。
初めて訪れたときには、閉館時間が迫っていて城の中には入れず、
麓の小さなホテルからライトアップされた幽玄な城を飽かずと眺めていた。
二度目は中に入ることもできてそのあまりの豪華さ派手さに度肝を抜かれた。
ルードヴィッヒが中世趣味だったこともあって、
城自体は近世に建てられた比較的新しいものであるにもかかわらず内装や調度品は
大時代な中世様式の絢爛たるもので、城の中にわざわざ人工の洞窟まで作ってあったりする。

この城を作ったルードヴィッヒ二世のことを描いたルキノ・ヴィスコンティの最高傑作ともいえる、
「ルードヴィッヒ」の未公開部分を加えた4時間を越える完全版が、先日NHK-BSでオンエアされたので、
寝ないよいうにかなり気合を入れて見た。
オリジナル版は最初にフュッセンを訪れた頃に見たので十数年ぶりである。

狂気の王と言われたルードヴィッヒ二世は若くしてバイエルンの王位に就く。芸術をこよなく愛した彼は、
ワーグナーのパトロンとして、贅の限りをつくしてワーグナーの音楽、とりわけ「ローエングリン」を聴くための城を作る。
彼の贅沢により王室財政は危機に瀕し、プロイセンとオーストリアとの戦争の渦中で政治的にも翻弄された彼は、
やがてノイシュヴァンシュタイン城の築城と芸術へと逃げ込み次第に精神を病んでいく。
側近たちにパラノイアであると断罪されて幽閉されたルードヴィッヒはやがて破滅的な終焉へと向かい始める・・・。

写実的なヴィスコンティの演出が重厚で、セリフの一つひとつが胸に迫ってくる。
ただ、史実を知ってこの映画を見ていると居たたまれなくなってくる。
ましてあの豪華な城のことを思い出しながら見るこの映画はかなりつらいなあ、と思う。
そう思わせるヴィスコンティはやはりドラマの達人だな、と感心しながら。


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