ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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遥かなる山の呼び声

2006-08-01 23:18:47 | 映画
NHK-BSが山田洋次特集をやっていて、見るともなく見ていたら最後まで見てしまったという・・・。

殺人を犯した男(高倉健)が、女手ひとつで息子を育てながら牧場を切り盛りする女(倍賞千恵子)のもとに転がり込んでくる。
過去を明かさず無口な男は最初こそ警戒されたが、やがて誠実な寡黙さに母も子も惹かれていく。
ところがある日、警察に追われていることを知った男は出て行こうとする。そして思いがけず女の愛を知ってしまう。

映画の主題は「幸せの黄色いハンカチ」と同じで待つことと耐えることの切なさが描かれている。
山田作品における男女の愛というのは比較的乾いた描かれ方をされていることが多いが、
この作品では倍賞千恵子が徐々に妖艶になっていく。
この作品は一方で女を取り戻していくストーリーでもあるのだ。

出て行くことを告げた男が夜中遅く扉をたたく。
去る前に自分を求めに来たと思った女は、そうではなく牧場の牛の急病を告げに来たことを知り、泣きながら着替える。
この半泣きの倍賞千恵子の表情がエロティックなのだ。
この時点でこの映画を観るものは深く納得するのではないか。

脇を支えるハナ肇は「なつかしい風来坊」そのもので、渥美清の牛の人工授精士役もちょい役ながら笑える。
山田洋次の笑いの世界も取り入れてあるあたりが面白い。


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