ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

フラガール

2007-10-14 16:29:23 | 映画
相変わらず映画をゆっくりと観る時間がない。いや、重い腰を持ち上げて映画館に行けば済む話なのだけど・・・。

この作品は知人から借りたDVDで見た。なぜ借りたのかというと、最近スパリゾートハワイアンズに行ったからだ。
ハワイアンズ。昔の常磐ハワイアンセンター。斜陽化する東北の炭鉱町を常夏のハワイにしようという、夢のようなプロジェクト。
閉鎖される炭鉱の雇用の受け皿として、従業員だけではなくフラダンサーまでも地元の娘たちを採用して、というのは事実らしい。

ダンスを教えてくれる先生は東京から一流の先生を呼んで、というはずがどうも訳ありの呑んだくれダンサー崩れがやってくる。
その、実力を持ちながらも借金から身を崩した元SKDのダンサー、平山まどか先生を演じているのは松雪泰子。
冒頭の彼女のダンスシーンがすばらしい。
もともと実力はあるのに、というよりもあるからなおさら自分がこんな田舎の炭鉱町に来る羽目になったことに納得のいかないまどか。
一方、ダンサーとして集められた炭鉱の娘たちはフラなんて踊ったこともないド素人。
まどかはしぶしぶ指導を引き受けるが、生徒たちのあまりのひどさにまったくやる気がおきない。
それでも斜陽の町を復活させるのは自分たちしかいない、という自負と情熱を持った娘たちに次第に引き込まれながら、
厳しい特訓を続けていく。
やがて本番の舞台に立つまでに成長していく娘たちと次第に心を通わせていく。

まどかはもともとは一本気で正義感の強いキャラクターとして描かれている。
だから、炭鉱を解雇された鬱憤を娘にぶつけた父親が許せないし、プロ意識に欠ける生徒たちが腹立たしかったりするのだ。
実は一本気で情にもろいのだ。
そんなまどかに強い憧れを持ちながらも反発を繰り返していた紀美子も、やがてまどかと深く感応し合うようになる。

そして紀美子の母、千代である。千代は炭鉱事故で夫を亡くしながらも二人の子を育て上げた炭鉱の女である。
裸に近い格好でダンスを踊って金を儲けるなど、軽薄この上ないと紀美子やまどかと対立する。
しかしその千代も、紀美子らのダンスにかける深い情熱に接するうちに、新しい時代の新しい女の生き方を見出す。

この映画は、まぎれもなくまどかというひとりの女性の成長の物語である。
しかし同時に紀美子の、そして千代の、ひとりのダンサーとしての、ひとりの母親としての物語でもある。

ラストのダンスシーンが圧巻である。フラというものがこれほどまでに崇高で熱いものを持ったダンスなのかと改めて気がつかされる。
それは踊っている彼女たちから、演技を超える何かを感じるからだ。
このダンスシーンだけでも見るに値する作品だ。


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