ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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ゆっくり歩け、空を見ろ/そのまんま東

2007-01-24 21:26:21 | 
ここのところ郷里の宮崎が騒々しい。
いかにも狡猾で強欲そうで貧相な顔つきの前知事が逮捕されたのに始まり、鳥インフルエンザ、
そして出直し県知事選挙とそのまんま東氏の当選。
こんなに連日のように宮崎が報道されたのは初めてではないだろうか。
昨日も初登庁した新知事を前に、ガマガエルのような県議会議長が
「芸人上がりに何ができる」といわんばかりの態度で挑発していた。

郷里での出来事を少なからず関心を持って見ていた者にとっても
今回の知事選の結果は驚きだったが、そんな選挙戦のさ中に図書館の棚で
偶然に見つけたのがこの本だった。

著者が数年前の淫行問題によってマスコミから身を隠すところから物語は始まる。
ノンフィクションなのか小説なのか判然としないような作品だ。
英夫は隠遁生活のさ中、ふと生き別れになった父を探すことを思い立ち宮崎へと向かう。
英夫は妾腹の子であった。
不動産で財を成した父は豪放な男で、妾である母はそんな父に翻弄され続けた。
大切な母の涙を何度も見せられてきた英夫にとって、父は許してはいけない存在であるとともに、
やがて自分を映す鏡のような存在になっていく。

かつての父がそうであったように、自分もまた大切な家族との「何か」を失いそうになっているのだった。
父と母と姉との遠い生活に思いを馳せながら、父を探して宮崎をさまよい歩く英夫。
物語は今のそのまんま東と小学生の英夫との間を、だから父と英夫の間を行きつ戻りつしていく。

本職の小説家の書いた小説ではないということもあるのだが、
全体に文学的な修辞に背伸びしようとするかのような無骨さと愚直さがある。
ある種の衒いをもって書かれたような作品だと思う。

・・・どこかナイーブなところのある芸人そのまんま東は、東国原英夫として為政者となった。
プロではない彼は小説を書いたのと同じ衒いを持って、無骨に愚直に県民への奉仕者となっていくのだろう。
政治家がプロである必要はないのだから。




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