ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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鬼平犯科帳(22)特別長編 迷路/池波正太郎

2006-12-25 22:38:01 | 
この季節になると鬼平を読みたくなる。
寒い季節に探索を終えた与力や密偵が「五鉄」に集まり、熱い酒で冷えた体を温める。肴は素朴だがなんとも気が効いている。
季節と寄り添いながら生活している江戸の庶民の描写も池波文学の醍醐味のひとつだ。

というわけで最近は決まってこの時期にちびちびと(読み終わるのがもったいないので)読んでいる鬼平だが、
この22巻目の長編は少し趣が違う。

平蔵の身近な人たちが何者かに襲われ次々に命を落としていく。そしてその犯人が誰なのかが分からない。
自分に恨みを持つ者の反抗には違いないのだが、それが誰かが分からない。
かつてないほどに苦悩を重ね憔悴する平蔵。
そして、解決しない事件は平蔵の罷免問題にまで発展するのだ。
平蔵が最も苦しみ悲しみ怒り、そして感情を乱してしまう状況設定に置いたという点でかつてない読み応えがある。

長編では平蔵をはじめとした登場人物たちの心の持ちようがいくつかの挿話とともに丹念に描かれている。
平蔵のさりげない心配りや、おまさの平蔵への想い、倅の辰蔵の成長ぶりなど・・・。
そうした登場人物の変遷もまた読んでいて楽しい。


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