江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

長徳寺

2015-08-22 | まち歩き

越後新発田藩の長徳寺については、2013年8月31日に当ブログで取り上げました。
今回の記事は、その時の記事に加筆したものです。

長徳寺は、越後新発田三ノ町(現新潟県新発田市大栄町)に在るお寺で、以前に御紹介した周円寺とは程近い位置関係にあります。創建は天正十三年(1585年)。新発田出身の赤穂浪士・堀部安兵衛の生家・中山家の菩提寺で、地元では、安兵衛が植えたとされる松が在るお寺として広く知られています。

現在の安兵衛手植えの松は二代目の松です。初代の松は、樹齢約300歳の大木で、幹には大きな洞(うろ)が在りました。小さな子供には、立派な枝振りよりも、何か出てきそうな、その洞の方が気になったものです。平成九年(1997年)に、老齢により惜しくも伐採されてしまいましたが、その実生から、現在の二代目の松が育てられました。

毎年8月13日には、ここ長徳寺でもお盆のお墓参りの日を迎えます。城下町新発田のお墓参りは他とはちょっと変わっていて、早朝に墓掃除を済ませ、日が落ちて暗くなってからお墓参りをします。地元では、それが当たり前なので、進学や就職、結婚等で新発田を離れて、初めて他とは違うということに気付く新発田っ子も多いようです。夜のお墓参りには、ぼんぼりを持参して、それをお墓の前に立てて、蝋燭を灯します。小さな子供の中には浴衣を着て、子供用の提灯を片手にお墓参りをする子もいます。お墓参りの静寂な雰囲気と線香の香りの中で灯る沢山のぼんぼりや提灯は美しいもので、故郷自慢になる風習の一つだと思われるのですが、地元の人にとっては、毎年の恒例行事なので、あらためて「幻想的だなぁ」と浸ることはありません。

最近は、少子高齢化のせいか、朝の墓掃除も夜の墓参りも昔ほどの賑わいはないように感じられます。昔は墓掃除に使う水を汲むのにも苦労するほど人が多かったですし、父親や祖父らに連れられて墓掃除に来る子供も多く見られました。夜の墓参りも、今よりも沢山のぼんぼりが灯っていましたし、お寺の鐘をつくには、長い列に並ばなければなりませんでした。今は水も楽に汲めますし、鐘もつき放題。待つ必要は無くなりましたが、反面、寂しさも感じます。

墓参りの後には、下町の新明宮隣のスギサキでかき氷を食べるのが定番だったりもします。スギサキは新発田では有名なかき氷屋さんで、お墓参りの日は、特別に夜間営業をしています。御先祖様も食べた新発田の味。御先祖様を家に連れ帰る前に寄り道をしたとしても、御先祖様に叱られることはないでしょう。

長徳寺は、池波正太郎著、堀部安兵衛(上)(新潮社)の中に登場し、主人公の安兵衛は、長徳寺の和尚から読書と習字の教えを受けるのが日課となっています。

 

長徳寺 新潟県新発田市大栄町2‐7‐22
JR羽越線・白新線新発田駅から約1.3km 徒歩約17分

 

右側の囲いの中に立つ松が二代目安兵衛手植えの松

 

8月13日の晩にお墓に灯されるぼんぼり

 

8月13日の晩の長徳寺。右側のシルエットが二代目安兵衛手植えの松。