柴又帝釈天は、映画「男はつらいよ」の舞台として全国に知られる葛飾柴又に在るお寺です。正式名称は題経寺。帝釈天というのは通称で、本来は仏教の重要な神様の一人を指しますが、ここではお寺そのものが帝釈天と呼ばれています。故渥美清さん演じるフーテンの寅さんが自己紹介をする際の啖呵「帝釈天で産湯を使い」はお馴染みの台詞です。また、「男はつらいよ」の第1作で寅さんが好きになったのは、帝釈天の御前様の娘さんでした。
帝釈天の名は、寅さんと共に、多くの人に知られています。反面、帝釈天がどこに建つかは、その名前ほどには知られていないのではないかと想像します。「男はつらいよ」の人情味あふれるストーリーから、東京中心部の下町を想像する人もいるかもしれません。しかし、それは「はずれ」です。答えは東京の一番東端。日本橋からだと直線距離でも12キロメートル以上も離れた場所に建っています。帝釈天の裏を流れる江戸川を、細川たかしさんのヒット曲でも知られる「矢切の渡し」で渡れば、向こう岸は千葉県です。
現代の世であれば、東京の中心部から電車や車を使って簡単に帝釈天を訪ねることが出来ますが、江戸の頃だったら、そうそう気軽に訪ねられる距離ではなかったはずです。みをつくし料理帖(高田郁著、ハルキ文庫)の中では、その距離にも関わらず、主人公・澪と同じ長屋に住む大工の伊佐三は、麻疹にかかった息子・太一の回復を願い、帝釈天に一粒符という御守りをもらい受けに行きます(花散らしの雨、一粒符「なめらか葛饅頭」に収録)。また、みをつくし料理帖の中には、この他にも帝釈天が登場する作品があります。内容が分かってしまうので、詳しくは書けないのですが、とても印象深い形で帝釈天が登場しています。尚、作品に登場している一粒符は実在するもので、実際に帝釈天で求めることが出来ます。
みをつくし料理帖ゆかりの地
柴又帝釈天 東京都葛飾区柴又7-1-3
京成線柴又駅から約300m 徒歩約4分。
飲む御守り「一粒符」