ふざけた霊宝 蜀山人「半日閑話」
2025.2
訳者注:江戸時代には、本当に珍しい物から、つまらない物、サギっぽい物まで、さまざまな物が見世物に供されたが、これもその一つであろう。
原題は、「とんだ霊宝」 蜀山人「半日閑話」より
以下、本文。
先月頃より、両国橋広小路にて、「とんだ(おかしな、ふざけたとの意であろう)霊宝」の見せ物が、大いに流行した。
細工物宝物目録
細工人 鯰橋源三郎
古橋甚平
三尊仏
その中央の主尊は、飛び魚、頭は、くしがい(串に刺したアワビ)、後光は、ひだち(?乾燥させた太刀魚か?)、後光仏とこぶしの中にごまめのあたま、台座は吸い物椀。
不動明王
頭は、サザエ、顔はサケの頭、手足体ともサケの塩引き、御衣は、 ひだこ(干蛸、つまり乾燥させたタコだえあろう)、袈裟(けさ)は昆布、剣はさしみ包丁、ぼくの縄(?)は、つるし縄、火炎は鎌倉えび(イセエビ)、御台座はサザエ(殻)とアワビ(殻)。
役の行者(えんのぎょうじゃ:修験道の始祖)
頭手足とも干し大根、御衣はワカメ、髪は、ところの毛(山芋の根のひげ根)、御袈裟被り物(おけさ かぶりもの)は、干瓢。錫杖は、スルメの足。足駄は氷蒟蒻。岩は、から鮭。
後鬼
頭より腹まで、カナガシラ(魚の一種)。手足は、キス。腰巻きは椎茸。台は寒天。
前鬼
鎌倉エビ、腰巻きは、椎茸。よきは、かいじゃくし。台はから鮭。
以上の他は、数が多いので、略した。
目録 見せ物場にて、これを見た。
開帳 とんだ霊宝縁起であった。
上記のは、両国に三カ所、山下に二カ所に見せ物として出品している。
狂詩に云う
昔聞く 四国を巡り 左次 猿を作りて 帰る。
今看(み)る 両国を巡り 霊像 魚となりて 飛ぶ。
蜀山人「半日閑話」より
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