江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

貧乏を治す薬  梅の塵

2020-03-07 19:22:57 | その他
貧乏を治す薬
                         2020.3
江戸時代には、面白い随筆や、小説があります。
先日、「梅の塵」という、随筆集を眺めていたところ、面白いのが、載っていました。


以下本文。

○貧病を治する法
世俗の諺に、四百四病の病より、貧乏ほど苦しいものはないと言っている。その貧乏の病を治す法がある。
手軽であり、怠らず服用すべきである。

処方は、以下の様である。

本方長者丸(ほんぽうちょうじゃがん)
○正直 三両   ○堪忍  三両  ○慈悲  三両   ○朝起  三両
○愛対 三両   ○分別  四両  ○始末  四両 
(漢方薬の処方は、**何g,**何gと書く。両は、お金の単位でもあるが、重さの単位でもある。1両は、約7グラム。)、

この七種を、細かい末にして、毎朝、手洗水にて服用すること。
どの位の借金でも、たちまちに返済できる。家計が立ち直ること、神のようである。
        
禁物

○不実○短気○気随(きまま)○朝寝○好色○自由○遊山。
この七種は敵薬である。
そのほか○物数寄(ものずき)○油断○作事○美き物(うまきもの)○大酒○夜遊。
この品々は、禁物であるので、堅く守って食べてはならない。
これらを用いる時は、薬(本方長者丸)の効果は得られない。

もう一つの法。

倹約丸(けんやくがん)
○倹約五両  ムダの皮を取り去り、工夫の水に浸す。
○始末四両  慾心を去って、心の水に浸す。
○世帯四両  世間の上皮(うわかわ)を取り去り、真実の水に浸す。
○堪忍二両  そのまま用いる。鉄の蓋を使わない。
○算用一両  算盤(そろばん)にあて、細かく刻む。

右、五味、思案の薬研(やげん:生薬を加工する道具)にて工夫する。
真実の火色(ほいろ)にかけてふるい分け、分別(ふんべつ)の糊を以って丸くし(丸剤と人間が丸くなるのとを、かけている)、知恵の衣をかけ(薬に衣をつける:糖衣錠にするなど。もの柔らかな態度をとる)、一時に一粒づつ服用すること。
禁物は前に同じ。

以上の、長者丸や倹約丸を用いれば、薄紙をはがすように、どのような貧乏の病も、治癒する事は疑いない。
この病いは、時節時節に起り、特に大みそかに、強く差し起こる。
しかし、常々絶えず薬を服用し養生すれば、次第に平愈する事。神のようである。

以上。

編者注:この書き方は、漢方薬の処方になぞらえてかかれています。
例を挙げると、葛根湯は、こんな感じになります。

葛根湯方
葛根(四両)、麻黄(三両:節を取り去る)、桂枝・ 甘草(炙)・ 芍薬(各二兩)、生姜(三両)、 大棗(十二枚)

以上の様に成分を列記します。
それに加えて、煎じ方を説明し、食生活の禁忌などを記述します。
この本方長者丸(ほんぽうちょうじゃがん)や倹約丸(けんやくがん)も、それに似せて書かれています。




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