横手の白いカラス
2024.3
羽州(出羽:山形県)横手の城は、佐竹家の家臣の戸村氏が守っている。
城中に二羽の白い烏がいた。長年棲んでいて、地元の人はよく知っていた。
城下の酒屋に、ある時、農夫が白い烏を持ってきた。
酒屋にいた者達は、みな珍しがった。
農夫は、興に乗って、「白い烏は、この城下には、すこし多くいる。私たちが、山で仕事をする時は、白い烏は、いつも見ているので、珍しいものではない。
ただ平日は、高い樹の上のみにいるのを見かけます。
これは、たまたま近くにいたので、捕まえることが出来た。
酒屋の亭主は、これを聞いて、
「今日、白い烏を見るのは、珍しいことです。百姓の家で飼っても、なにも益がないでしょうから、私どもに下さい。
そうすれば、見物に来る人も多いでしょうから、お酒も多く売れるでしょう。」
と言った。
農夫は、それならば、とこの白い烏を亭主に与えた。
それから、この烏を見ようと、酒を飲みに来る人が増えて、日毎ににぎわった。
酒屋はおおいに儲かって喜んでいたが、少しして烏は死んでしまった。
それで、酒を買いに来る人も減ったそうである。
「一話一言補遺 」 蜀山人全集 より
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