goo blog サービス終了のお知らせ 

江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

出合の河童 「南紀土俗資料」

2025-03-24 18:49:20 | カッパ

出合の河童 「南紀土俗資料」

             2025.3

龍神村大熊(和歌山県田辺市)の出合の淵にも河童(があたろ)がいた。或時此の里の湯の倉といふ処の田圃の中へ牛を放して置いたところ、河童が上がって来て尻を抜こうとした。牛は驚いて河童を引きずりながら一生懸命大熊平と言う所まで逃げてきた。村人が飛んで行って、その危急を救って、大騒ぎとなった。
その結果、河童は生捕られた。そして、殴られたり、田ノ草取などをさせられて、こき使われた。
辛抱しきれなくなった河童は、とうとう
「今後、天に星が無くなり、河に真砂が消え、竜蔵寺に小松が生へるまで、此の地の湯野々から上の人には危害を加えません。」と誓約して放免された。

その誓文は石碑に刻して龍蔵寺の手水鉢の下に埋めた。
後に龍蔵寺の荊山といふ僧が住して庭前に二本の小松を植えた所、湯野々の某々二人が、ある時この川へ夜釣に行くとて、出たまま行方不明になってしまった。
これは龍蔵寺へ松を植えたので河童が災したに違ないと、人々は僧に談じて早速松を伐った。
それからは先は特別の異変もないと。

河童を捕へて、もう此の里へは上って来ないからと誓はせて放免したといふ伝説は川中村の田尻にもある。 

以上、「南紀土俗資料」土俗編、水界神話的伝説 より

 


明神橋下の河童   「南紀土俗資料」 

2025-03-23 20:45:56 | カッパ

明神橋下の河童   「南紀土俗資料」 

                 2025.3

ある年の牛休み 六月初丑の日に寒川村(和歌山県日高郡日高川町寒川) 土居の明神橋下の青淵で、ある人が牛を洗っていると、突如、河童(があたろ)が現れて牛の尻を抜こうとその足をつかんだ。しかし、物に動じ易い牛の事であるので、驚きあわてて、一目散に川原へかけ上った。ところが、河童は、余りに固くつかんでいたと見えて、とうとう川原へ引ずりあげられた。
それを寄ってたかって生どりにした。河童を鎖で繁いで明神様の境内の草取りをさせた。
さて、その監視をしている人が、
何となく気持が悪い、どうせ河童の事であるから、いつ何時、自分の尻へ手を出さないとも限らない、と心配した。それで小石を拾って、自分の尻へ当てがって置いた。口の悪い河童は、いっの間にか、それを見つけて「且那のお尻は石尻ですね」と皮肉ったそうである。
それから、この河童には、「将来この里へ入り込まない。」との誓いを立てさせて、放してやった。
それで今では、
河童は寒川へ入らないのだと言う。

以上、「南紀土俗資料」土俗編、水界神話的伝説 よ

 


「物類称呼(ぶつるいしょうこ)」での河童の名称 

2025-03-08 23:48:42 | カッパ

「物類称呼(ぶつるいしょうこ)」での河童の名称 

            2025.3.

「川童」、「かわたろう」。
畿内及び九州にて、「がわたろう」、又、「川のとの」、又、「川童」と呼ぶ。(九州に多し、特に筑後の森川が大変に多い)
周防(すおう:山口県)及び石見(いわみ:島根県)又、四国にては「えんこう」と言う。
土佐国の住民は「がわたろう」、又「かだろう」、又「えんこう」とも言う。その手の肱がよく左右に通りぬけて滑(かつ)であるからだ。猿猴に似ている故に河太郎も「えんこう」と言う。
東国では「かっぱ」と言う。(川わっぱをちぢめた言葉である。小児をしかるにも「かっぱ」とも言う。)越中にては、「がわら」と言い、伊勢の白子にては、「かわら小僧」と言う。

その姿は、四五歳ばかりの子供のようである。髪の毛が赤くて、頭の頂に凹んだ皿が有る。その皿に、水をたくわえる時は、カは大変に強い。性は、相撲を好み、人を水中に引入れようとする。
あるいは、怪しい事をして婦女を奸婬する。その災いを避けるには、猿を飼うのが一番良いと言う。
又、九州にて川を渉る人がこんな歌を吟ずる。
いにしえ(古)の やくそく(約束)せしを わす(忘)るなよ 川だち男 氏は菅原
この歌を、吟詠すれば、河童の害から逃(のが)れられると、言い伝えられている。

物類称呼 広文庫より

 


胡瓜をカッパと呼ぶ  「さへずり草 松の落ち葉」

2025-01-23 20:49:58 | カッパ

胡瓜をカッパと呼ぶ  「さへずり草 松の落ち葉」

                      2025.1.23

今、俗に胡瓜を食べ始める時期に、姓名などを書いて、川の水に投じる。
これは、カッパ(河伯)におもねるの意味である。
実に、カッパは胡瓜を好むからであろう。
それで、又世俗が、胡瓜に、カッパの名をつけたのも、面白いことである。

なお、また胡瓜を祇園の神に献上すること等もあって、河童の事を、「かっぱ天王」などとも言う。
尊い神様(天王は、仏教の守護神)に、いやしい河童の名をつけている。
俗のうつり言葉(流行語)は、今に始まったことではないが、畏れ多いこと甚だしい。

訳者注:カッパ巻きも そう。

 

「さへずり草 松の落ち葉」  広文庫より


水虎の名義 「さへずり草 松の落ち葉」

2025-01-22 20:46:21 | カッパ

水虎の名義 「さへずり草 松の落ち葉」

               2025.1.22

上記の水虎を所蔵している人の仕えている主の治めている肥後国の熊本にては、土地の人は、「ガワッパ」と呼ぶそうである。
按ずるに、「がわっぱ」、「カッパ」共に「川わっぱ」の中略であって、正しく言えば「川童」の訛(なまり)であろう。
又「川太郎」と呼ぶのは、こう言うことである。すべて物の魁(かい:さきがけ)なるを太郎と呼ぶのは、我が国の一般のことある。水属の物が大変に多い中に、この物はー種の怪物であって、その妖しいこと他の物にまさっている。
それで、「川太郎」の名があるのであろう。
又、因幡(鳥取県)の土地の人は「川小坊主」と言い、伊勢(三重県)の白子の土地の人が「川原小僧」と言うのも、又「川太郎」と同じ意である。
肥州佐賀にて「川僧」と言うのは、小の文字を略したもので、ともに同意である。
又、紀伊(和歌山県)、土佐(高知県)、長門(山口県)萩などにて「エンコウ」と呼ぶのは猿に似ている由の名である。
出羽庄内(山形県)では、「カワダロウ」、播磨(兵庫県)姫路にて「ガアタロウ」、土佐(高知県)では、又「カダロウ」などと呼ぶのは、ともに川太郎の訛である。
近江(滋賀県)彦根では、「がわた」、越後柴田にて「かわだ」などと言うのは、又川太郎の下を略したものであろう。越中にて「がわら」、薩摩にて「がわろ」などと呼ぶのも、又「太郎」の訛(なまり)や略である。
山城(京都市)、摂津(大阪、兵庫の一部)及び阿波(徳島県)、又筑州福岡では、「川太郎」と呼んでいるのを正式の名とすべきであろう。
又、出羽(山形県)久保田にて「カッパア」、肥前島原にて「がわっぱ」、日向(ひゅうが:宮崎県)及び安芸広島、又甲斐(山梨県)等にて「カワッパ」などと言うのは、ともに「カッパ」と同じく「川童」の訛である。
又、備前岡山、昨州(岡山県)津山にて「ゴンゴウ」と言っている。このもの、カッパは、もともと角力(すもう)を好んでいると聞いている。金剛(金剛力士:仏教の守護神)から来た言葉であろう。
又、能登にて「ミヅシ」と言うのは、尾州(愛知県)にて「ヌシ」と言うのと同意であって、水主の意味であろう。
又、豊州(豊前と豊後:主に大分県)府内にて「川のトノ」と言うのは、狐を「夜のトノ」と言うのと同意である。河童の妖を畏れて言う名でもあろう。
日向薩摩などにて一名を水神と言うのも、又おそれ崇(あがめ)る意であろう。
又、越中富山にて「ガメ」と言うのは、和名抄に鼈(すっぽん)は加波加米(かわかめ)と見えているが、上の加波(かわ)を略したものであろう。
又、松前(北海道南部)にて一名「コマヒキ」と呼ぶのは、このものがその妖力をもって牛や馬などをだまして、水中に引き入れる等の事があって、それにちなんだ名でもあろうか。
さて、紅毛(こうもう:オランダ)の言葉では、「トロンペイタ」と呼んでいる。

今、その名義について考察する事は出来ない。
さて、漢土(かんど:中国)にては、水虎と書いているが、水にての虎と言うことで、この川太郎とその意味がよく符合している。

「さへずり草 松の落ち葉」 広文庫より