2006.08.25
(青海に向かうフェリーの中で)
中国に聖山5岳あり!そして中でもこの泰山はその最高峰に位置づけられ「中国一聖なる山」と言っても異論を差し挟む者はいないだろう。
さらに付け加えるならば、この山1個を制覇しておけば残りの4つをカットしたところで「俺は中国一の聖山に登ったんだ!」と言い訳すれば済むと言うお得な山であろう。
これは「プロフェッショナル・デューク東城」としては見逃すわけには行かない、日本を出発する前から入念に計画して準備を進めてきた事はわざわざお伝えしなくても良いことだろう…
決して韓国であった「ヤス」氏が「青海から入って北京に向かうなら泰山に行ってきたらどうですか?一番有名な聖山ですよ」と教えてくれたから急遽慌てふためいて予定を変更した訳などどこにも無いと敢えて言明しておこう!
また彼は「せっかくだから歩いて登ったらどうですか?」などと言っていたが、いくら「世界7大大陸を制覇」した男等と言っても残念ながらその辺りは所詮アマチュアだ。この私はプロとして、そして一人の男として「決してキツイ事はしません」と心に決めた男である。
早速ガイドブックを調べると通常は登るのに5,6時間、下山に2,3時間らしいが中腹までバスを利用し、頂上までロープウエイを利用すれば往復で2時間ぐらいでいけることが判明した。
「これを利用しない手は無い…」
私がこう考えたのは「プロ」として当然のことだろう…
2006.08.25
青海に到着!歩いて鉄道駅に向かう途中にMacを発見、早速中国マックのデビューを果たす。幸先のいいスタートだ。昼過ぎに港に到着したために鉄道もバスも泰山行は無く、仕方なしに済南までバスで行きそこで1泊する。明日はいよいよ泰山のお出ましだ…
2006.08.26
済南から1時間くらいかけて泰安に到着、朝のんびりしたためにホテルに着く頃はもう正午を回っていたが私の計画では午後1杯あれば十分に間に合う。ホテルに荷物を置いて早速泰山行きのバス停に行き一路泰山を目指す。
ふもとのバス停に1330頃に到着、ここから中腹にある中天門行のバスに乗り換えてさらに20分、まだ1400前だ。雨が降り始め、山はちょっと霞がかって視界が悪いのが気に入らないがこの辺りは仕方が無い。天候を選んで無駄に待ち時間を作るなど私の性分では無いからだ。
早速ロープウエイ乗場へと向かう、値は貼るが疲れるよりはましだ!そもそも「山は歩いて登らなければいけない」なんて法はどこにも無い。「アマチュアのバックパーカー」達の落とし穴の常として「安いが一番」とばかりにただセコクやってしまい、結局疲労した挙句に滞在日数が延びて結局多くの金を費やす等とは愚かな事この上ない。プロとしては「費用対効果」、いかに効率良く、そして楽に楽しむかが一番だ。とっとと見学してすぐに北京に向かおう!それにロープウエイからの景色は決して徒歩では見れない眺めが楽しめる…
チケット売り場に到着、売場は開いているものの乗場は閉まっている…
「なぜ…??」
早速質問すると
「天候不良の為に欠航中…!!」
「ああああぁ~!なんてこった…!!ただでさえ登りたくも無いのに雨の降っているこの天気の中をテクテクと歩くしか選択肢が無いのか…!!!」
泰山入場料の80元(約1200円)はもう払ってしまっている。ここで引き返すにはあまりにも勿体無い金額だ…
もう一度考えよう!
ここはやはり歩くしかないだろう!動かないならしょうがない!泰山に登らずに戻ったら「ここに来た意味」そのものも無くしてしまう。頂上までどのくらいかは分からないが「中国人は歩いて登る」のがメジャーな方法らしいし、彼らに歩けるなら「このプロフェッショナル」も多分大丈夫だろう。老若男女問わず歩いて上がっている姿も目に入っている。すべて石段と言うのがちょっと気に入らないがまあなんとかなるだろう。それになんといってもロープウエイ代は節約できる。「安いが一番」だ。疲労なんかは飯を食って寝たら回復するし「タダに越したことは無い!」それにそもそも「山は歩いて登るものだ!」頂上に到達したときの達成感を味わい、そこから見る絶景に感動する為には歩くのがセオリーだ!
結論は出た。よーし、歩いてみよう…
2006.08.26:1400
最初の一段を踏みしめる、階段は急峻で靴1足分の幅もない。常に爪先立ちの状態で上がることとなる。視界に入るのは階段ばかり...たまに平地に出るがそれもすぐに終わり階段、そしてまた階段...
いつまで続くのだろうか...??
階段を上がり終え広場に出て前を見るとやはりまた階段...
もう1時間は登っている。
そろそろじれてきたので「歩き方」を出して今どのあたりか確認し煙草に火を点ける...
どうやら私がスタートした「中天門」から頂上の「玉皇頂」までは3.5Km、今が「対松亭」の辺りだから後1.6kmは残っている勘定になる。一番下からだと全部で9km、約7500段の階段があるそうだから途中から登っても3000段近くの階段を上がらなければならないことが判明した!
普段の生活で階段を3000段も上がることがあるだろうか??せいぜい駅の階段で数100段も上がればOKではないのか??それに日本の駅の階段なら整備もされていてそれほど苦痛を感じないが山に作られたこの階段はどう見ても快適さとは程遠い...溜息もこぼれようなものである!
「まだ半分くらいか...」
しかも上を見上げれば「階段」、下を見下ろせばそこもまた「階段」...
「階段上」
「階段下」
こいつは単なる「階段地獄」に違いない!
仕方がないのでまた登る...
階段を上がって、ちょっとした踊り場に出てまた階段を登る...
いつ終わるのかも良く分からないままひたすら「階段」を眺めて登る...
足も痛いけど上も階段下も階段...
そこから大体また1時間、ようやく頂上から0.8km離れた「南天門」に到着。ここはちょっとした繁華街が出来ており、ホテルもあれば食堂や休憩所もある。泰山は朝日を眺めるのに有名な場所なのでこんな所にわざわざ町を作っているのだった。
ようやく頂上に近づいてきたので気持ちを取り直して前に進む。
ここでもまた階段...
ちょっと登って休んで階段...
そしてそこから30分、なんとか「玉皇頂」に到達、海抜1545m!
しかし、ここに至るまで見たものは「階段」しか記憶にない。現地の人たちはそういえばよく休み休み登っていた。こちらは時間を省略する為に脇目も振らずにただ登っていただけだ。抜かされた記憶もない。道中の景色こそ楽しんでいないがそれもここからの「絶景」を味わえばいい事だろう。
さっそく頂上の縁に立ち、古来から多くの文人墨人に讃えられ続けてきた泰山の絶景を眺めようとする。
「...」
「...」
「きっ、霧で何も見えねぇ~...(涙)」
泰山山頂から見た深遠な...というよりも何も見えない眺め...
辺りを覆う濃霧は深く、私の視界には霧と微妙に透けて見える他の山の頂っぽいシルエットを見るのが限界であった...
「何の為にここまで無駄に頑張ってきたのか...」
悲しみは海よりも深い...
しかしめげてはいられない、ここから降りて街に戻らなければいけない!
泰山の頂上を制覇し、景色を見たことには変わりはない。これで良しとしよう。
そして下山することにする。
途中の南天門に戻って下りのロープウエイを確認すると引き続き運休中、やっぱりまたしても歩きだ。
階段はひたすら急だったが今度は下りだ、登りとは逆に足は常に踵だけ接地するというまたしても人を疲労させるだけの具合の悪さだ。しかし足にかかる負担こそ引続き大きいものの速度は速い、2時間半かけて登ったのに1時間で中天門に到着。
しかしそれにしても...
ロープウエイさえ動いていれこんなしんどい思いをしなくてもよかったのに...
もう一度恨めしそうにロープウエイを眺める
「あれっ!ちょっと変だぞ...」
「ロープウエイが...」
「動いている...!!」
なんだこの嫌がらせのような運営は...おまけに雨までやんで天気も回復し始めている...
私の登って降りるタイミングに併せて天気を悪くしているようだった...
かといってもう一度登るなんて真っ平だ!
バスに乗り市内へ戻る。
今日は具合の悪い一日だった。せめて飯ぐらいは豪勢にと夜はチェーン店でご飯と牛肉をほおばる!
「なんて幸せ...」
そして夜...
「なんかお腹が痛いょ~」
「あっ!」
「飯があたった...!!」
幸いトイレシャワー付のシングルだったので夜にトイレに10回ぐらい...、おまけに一度吐いてしまう...
翌日、午前中に世界遺産の岱廟を観光しただけで残りはダウン...北京行は当然延期...
聖なる山「泰山」
この「プロフェッショナル」の思惑通りに決してさせず、苦労だけさせた挙句に腹まで壊させ、おまけに出発予定まで狂わせてしまうとは...
これが本当の「階段話」であるに違いはないだろう...