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美しい死の渓流のオショロコマ
20XX-7-8 (金) 曇り 小雨 寒い
この日、意を決してこれまで余りにも自然度が高いため、長年入ることを恐れていたM川最源流域へ入ってみた。
ニジマス繁殖河川M川水系下流域はオショロコマのピンポイント生息地がパラパラと残存しているため、オショロコマ撮影にはいることがある。
しかし、さすがにこの川の最源流域だけはおいそれと入って行くのがためらわれるほどの畏敬と恐怖の念が先立つ原始の森であった。
今は放棄された荒れ放題の林道があるが各所で崩壊、草木が生い茂り林道は大自然に呑み込まれて消えつつある。
基本的には入林禁止の場所だ。
どこまで入って行けるのか、いってみなければわからない。
長年、ここから先は入らないと決めていたのだが、この日、発作的に草木灌木で消えかけている林道へ愛車フォレスターで侵入した。
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キィィーッ、キーッと灌木の枝が車体を傷つける音を聞きながらしばらく走ると、意外と林道の状態が良くなったり、と思ったとたんに路肩が崩れたり、土砂・岩石が崩れ落ちたりしている。
崖から転がり落ちた大きな岩をせっせと除けたり、道をふさぐ倒木をノコギリで切ったり、最後は土砂崩れ頻発域をなんとか突破すると、とたんに古い林道は消えてしまった。
ここで車はストップ。ターンすることもできない。
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崖には初めてみる野性のミヤマオダマキが群生していて美しい。
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深山幽谷の崖には珍蝶エゾツマジロウラジャノメの食草タカネノガリヤスが群落をつくっており、日高の千呂露川源流のエゾツマジロウラジャノメ生息地にそっくりだ。
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今日は、曇りで小雨もよう、気温が低く寒い。もしこの蝶がいても飛ぶことはなさそうだ。
渓流をみると、まさに源流域の渓流。変化に富む類まれな美しい渓流だ。ところどころ、ほれぼれするような溜まり、淵、瀬が続く。
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岩は美しく苔むして川底は一見安定しているかに見える。水は限りなく透明で冷たい。
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渓流の両脇は深い谷なので崖がせまっている。
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いったい、どんなオショロコマがいるのだろう。
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わくわくしながら振り込んだが思いがけず、まったく魚信がなかった。
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ウソダローッとつぶやきながらこまめにさぐってゆくが、どこをさぐってもまったく魚信なし。
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普通、淵や瀬じりには多少ともオショロコマの姿が見えるものだが、一切魚影がない。
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実際釣ってみると、こんなにも素晴らしい渓相なのに、どこもここもまったく魚信がなく、溜息がでてしまうが、理由がわからない。
強いて理由を考えると、狭い谷底の渓流は、大雨増水時などには、あまりの暴れ川になるため、オショロコマが棲めないのかもしれない。
それとも過去に毒流しや、林業のため殺鼠剤を撒き続けるなどの異変がありオショロコマが絶えたか。
とにかく理由はわからないが、今現在はどうやら 死の渓流 のようだ。
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その後、きっとこれが原因ではないかといった歴史的経緯に思い至ったがここでは触れないでおきます。
ドッキリ。 ヒグマ君が枯れた倒木内の甲虫幼虫を探して食べた跡。
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また、危険な林道をゆっくりもどって、無事探検は終わり、コンビニの握り飯で昼食。
この渓流の下流域には魚止めの大きなダムが数基続いている。
この渓流独特の背部網目模様がよく発達したオショロコマをダム間渓流で少し釣って撮影した。
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この日は個体数は少なくて喰いはあまいが良型も多かった。
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背部網目模様がよく目立つのが、ここのオショロコマの特徴です。
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ダムで各個体群間の交流は完全に遮断されているため遺伝的多様性は落ちる一方、血は濃くなる一方なので明るい未来は約束されていないとおもう。
ただ、100年後、これらのダムが土砂堆積で埋まってしまったり底抜けが起きて崩壊する可能性がないわけではありません。 ダムの寿命は意外と短いことが多い。
この日も撮影記録させていただいたオショロコマたちは全て丁寧にもとの場所にリリースしました。
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