オショロコマの森ブログ5

渓流の宝石オショロコマを軸に北海道の渓流魚たちと自然を美麗画像で紹介します、

驚愕、羅臼川を占拠した巨大コンクリート魚道群、自然大破壊

2014-03-16 09:17:34 | 渓流魚、蝶、自然
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驚愕の魚道付きダム群建設後に羅臼川下流域のオショロコマ壊滅的激減 その参


















以下に私がとても気になっていた北海道新聞の記事を原文のまま、お示しします。

羅臼川の魚道設置 住宅地にサケ狙いクマ 町、接触恐れ警戒へ  2006/11/24
 
【羅臼】世界自然遺産知床を流れる羅臼川(根室管内羅臼町)に、サケ、マスを遡上(そじょう)させるための魚道を設置したところ、遡上してくる魚を狙って、クマが住宅地付近に出没し始めた。住民の反応はいたって冷静だが、町は住民や観光客とクマの接触を心配し、パトロールを強化するなど対策を検討している。

 同町湯ノ沢町の老人福祉センター裏手。河原にクマが食べたとみられるサケ、マスの死骸(しがい)が今秋、三十匹近く見つかった。環境省羅臼自然保護官事務所の石名坂豪自然保護官補佐はクマ三頭分の足跡も発見した。

 付近の住民も今秋、住宅地を歩くクマを目撃。今年、同センター裏手まで魚道が整備され、それからクマが現れるようになったという。

 羅臼川は羅臼町市街地を貫き遺産登録地域に続く全長九キロの道管理河川。洪水対策として十八基の段差を設けたため、魚が遡上できなくなっていた。

 遡上を復活させるため、釧路土現が1995年からスロープ状の魚道を設置し、これまでに十一基が完成した。

 クマの出没について、住民の反応は意外にも冷静だ。民宿経営の石橋福子さんは「川が自然の姿に戻るので、魚道は歓迎。夜はクマが好きな干し魚を家にしまうなど、注意しているので影響はない」と話す。

 魚道設置は国際自然保護連合が知床を世界自然遺産登録する際、日本に課した宿題の一つ。このため、釧路土現はさらに、ホテルが三軒並ぶ上流まで、五カ所に魚道をつける計画で、今後、住民や観光客がクマと接触する恐れは増す。釧路土現は「クマの出没は予想していたが、町の要望で魚道を設けてきた。クマ対策は町にお願いする」と話す。

 対応を任された形の羅臼町の田沢道広自然保護係長は「今秋はクマが警戒して、夜だけ魚を捕りに来ているようだ」とみる。

 ただ、「来年になると、慣れて昼も頻繁に現れる可能性がある」と心配しており、パトロールの強化や、川沿いにフェンスを設置することも検討している。

(北海道新聞 2006年11月24日)


地元住民は別として、私を始め多くの人がまったく知らないうちに、この荒っぽいダム建設計画が着実に実行に移されて巨大な魚道付きダム群が完成していたのであった。その結果、魚道により川が自然の姿にもどるのでは ? という民宿経営の石橋福子さんの素朴な願いとは全く逆の環境が出来上がった。
ヒグマの危険に関しては釧路土現は、おいらは頼まれてダムをつくっただけでヒグマ云々は羅臼町がみてくれや、と責任回避の態勢だ。そのうち一人でも魚道付きダムのためにヒグマに襲われることがあればすべてはおしまい。羅臼キャンプ場閉鎖の経緯をみてもいかに羅臼町がそれを危惧しているかが推察される。

羅臼川下流域にはオショロコマが無尽蔵にいるというのが2008年までの私たちの認識であった。おそらく今現在、羅臼町在住の人たちも羅臼川にはオショロコマがいくらでもいると信じているとおもう。実際、2008年7月2日に、釣り支度中に挨拶した羅臼町在住の人たちは私たちを見て、へーっオショロコマの写真を撮るのかい、この川にはオショロコマなんか雑魚みたいにたくさんいるよと話していた。

しかし、この羅臼川下流域からオショロコマは今正に姿を消そうとしている。川の生態系など眼中にないすざましい破壊的な河川工事が行われたことは明白だ。

かってのこの川の姿を知っている私は破壊された羅臼川と無味乾燥巨大なおびただしいコンクリート製の魚道付き砂防ダム群をみて絶望的な気持ちになった。あっという間に壊滅寸前まで追い込まれた羅臼川下流域のオショロコマに復活の可能性はあるのだろうか?。

羅臼川産のサケは 2004年132万粒、2005年188万粒(2004年の西別川は6297万粒なのでたいした規模ではない)を人工孵化させている。これらが放流された羅臼川のサケマスはこれまで、回帰したものが海で定置網捕獲されてきた。採卵用サケマスは河口でヤナと網で捕獲する。




2005年度は♂♀合計2239尾を捕獲している。これをいまさら羅臼川にのぼらせる( 結果として人間の生活圏にヒグマを呼び寄せる )意味合いや価値はあるのだろうか。いかに知床自然遺産登録のための約束事とは言え、自然愛護をうたった子供だましのマヌーバーにもほどがあるだろう。ただ、これは知床を自然遺産登録する際の交換条件であったため、これを履行しなければ自然遺産指定を取り消されてしまう現実的な恐怖があったのだと思う。

実際には孵化放流事業に必要な採卵用サケマスを十分に捕獲・確保したあとでなければ河口のヤナははずされず、サケマスは遡上できない。今年( 2008年度 )のように回帰サケマスが激減している年にはヤナは10月下旬になってもはずされず、結局巨費を投じ羅臼川の大破壊を行ったあげくに造られた壮大な魚道群を登ってゆくサケは今のところ(2008年10月17日)唯の一匹もいないのが現実の姿だ。

その上、上流域には魚道をのぼりつめたサケたちが産卵できるようなきれいな砂礫や小砂利のある豊かな環境はもはや極めて少ない。最後の魚道付きダムの上流には依然として大きなダムが行く手をさえぎっており、サケ・マスたちにはそこで無効産卵後斃死するしかない。

さらにもう一つ問題がある。遡上するサケマス、特にカラフトマスとオショロコマの産卵時期が一致するのだ。ささやかな自然繁殖にたよるオショロコマに対し人工孵化・大量放流に由来するおびただしい数の遡上カラフトマスやサケの産卵行動(たとえば、2003年度の10年ぶりのサケマス大豊漁の年など)の前には、かよわいオショロコマの産卵床など完膚無きまでに破壊されるだろう。

皮肉なことに多数の魚道無し砂防ダム群は、これまでオショロコマ産卵水域への人工孵化放流カラフトマスの侵入を防いでいたのだと思う。米国では貴重な渓流魚カットスロートを守るためあえてダムを造ってサケ・マス遡上を防いでいる川があるという。

私は長年オショロコマを見てきた。知床の渓流ごとに個体変異に富むオショロコマ個体群は、ある意味では人口孵化・放流されたサケマスよりも遙かに価値のある生き物だと思う。私は斜里川水系平野部に豊富に生息していたオショロコマはカラフトマス大量孵化放流事業に関連して激減したのではないかと密かに考えている。実際にそのような現場も目撃している。

羅臼川下流域においても魚道造設後のカラフトマス遡上がオショロコマ激減の理由のひとつかも知れない。私は道内各地の渓流で欠陥だらけの魚道付きダムをみてきたがいわゆる魚道さえ作れば物事が多少なりとも解決するという安易短絡的発想は極めて危険と断言する。

魚道は流木や土砂などで、そのままではすぐに機能しなくなる。維持管理は魚道をつくるよりも、もっともっと大変だ。魚道付きダムによるその後の環境変化も重大だ。たとえば斜里川源流域などでは魚道付きダムのためダム周辺にヘドロ状堆積が多いよどんだ高水温の汚水水域が増え、そのせいかオショロコマにこれまで見たこともない悲惨な皮膚病が急速に蔓延しつつある。

魚道を造りまくったところで、こんな川底にはサケもマスもオショロコマも産卵しません。 アホか。


この現象は斜里川と良く似た構造の羅臼川の魚道付きダム群周囲でも起こりうる(PS: これは杞憂ではなくその後現実のものとなった。そのうちこのブログでも現実の状況をお示しします。) 斜里川ではこの皮膚病はヤマベにも急速に広がりつつある。

2008年は、サケ漁獲日本一を誇ってきた知床半島羅臼側海域でのサケマス回帰が信じられないほどに激減している。オホーツク海水域も同様だ。海水温が異常に上昇しているという。これが一時的なものなのか、地球温暖化による恐るべき世界的現象の始まりなのかは今のところわからない。そうすると魚道やら河川環境破壊やら重箱の隅をつつくような話をしている場合ではないのかも知れない。

心配なのはオショロコマだ。低水温を特に好むオショロコマは地球温暖化で真っ先に消えてゆく生き物であろう。ちなみに羅臼川の水温はこれまで述べてきた種々の理由で知床の渓流では一番高い。2008年10月17日の羅臼川の水温は河口から最後の魚道付きダムまでは一貫して14.0~14.5度Cでオショロコマには極めて不適な高水温になっている。

ながらくオショロコマの宝庫と呼ばれてきた羅臼川下流域は今後どうなってゆくのだろうか。羅臼川下流域のオショロコマ激減→個体群壊滅の構図は私の一時的な杞憂であったと言える未来を祈るしかない心境だ。ただ、本音を言うと、ここまで完璧に壊された羅臼川には、心底呆れ果ててしまいもうあまり興味がなくなってきた。

羅臼川にかかわってきたいわゆる専門職の方々はこの渓流の主なる住人オショロコマに対する配慮があまりにも足りない。知床の川(北海道の川)にはオショロコマというあなた方より遙かに昔から先住している素晴らしい生き物がいることをどうかこれ以上無視せず、忘れないでほしい。


破壊された羅臼川を河口から最後の魚道付きダムまで入念に釣ってみた。わずかな生き残りオショロコマが確認されたが極めて少なかった。


地元の人との会話では羅臼川のオショロコマの激減に対して、心を痛めているか、またはちょっとやりすぎではないかと思っている人たちのかすかな気配も感じられた。

しかしその結果、さらに最も好ましくない状況が出てきている予感がした。 


羅臼川はもうどうでもいいや、これまでどおり、自然保護ごっこや、マスコミ受けしやすい孵化養殖放流サケマス登らせごっこや、100年一度の大災害予防ごっこが大好きな方々、何が何でもダムを造り続けなければ生活基盤を失う方々などが、それこそ好きなようにいじくり続けてみては ? といったすてばちな心境になりかけている。物事には壮大な無駄や、馬鹿を極限までやってみなければわからないこともある。

といった諦めムードだ。            この項、続く。



 


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