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吹き飛んだ将来の飯のタネ 東芝・日立は戦略見直しへ

2011年03月29日 19時53分00秒 | Weblog
Close-Up Enterprise 【第50回】
                   2011年3月29日 週刊ダイヤモンド編集部

福島第1原子力発電所の危機により、原発を設計し造ってきた東芝や日立製作所などのメーカーは、少なくともこの先5年の経営計画を見直す必要がある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、小島健志、柴田むつみ)

「われわれのエンジニアや研究者たちをもっと使ってくれれば、もっと早くに事態を収束できたはずだ。東京電力の地震後の対応にはがっかりだ」──。

 ある東芝首脳はこう吐き捨てた。危機的状況から脱せない福島第1原子力発電所の状況にいらだちを隠せない。

 加えて「日立製作所の設計した4号機についても、うちのエンジニアが対応できるように考えていた」(同首脳)。日立は茨城県の日立事業所が被災している。その対応に追われるだろうと、東芝は配慮していたのだ。メーカー側は企業の枠を超えて、福島第1原発の危機に対応する準備を整えていた。

 しかし、次々と起こる危機的状況に東電と政府は混乱していた。せっかくの準備をよそに、なかなか東電や政府から支援要請の声がかからない。それでいて状況は悪くなるばかり。前出の東芝首脳がいらだつのも無理もない。

 両メーカーは、日本の原発の歴史に深くかかわってきた。日々の点検や管理などで、実際に現場で手を動かすのはメーカーである。ゆえに、原発構造に関する知見も、当然ながら蓄えている。

「東電に原子炉に関する知見がないとはいわない。でも燃料や炉心、格納容器など、それこそなにからなにまでいちばんよく知っているのは実際に図面を描いたエンジニアでしょう」。メーカー側は口を揃える。

メーカーが福島の平穏を切望する最大の理由

 メーカー側には、福島の状況が一刻も早く落ち着いてほしいという自分たちなりの事情もあった。原子力は二酸化炭素を出さないエネルギー源として注目を浴びていた。また、爆発的に増える新興国でのエネルギー需要を賄うための救世主として、建設ラッシュが始まる、“原子力ルネサンス”の本格的な幕開けを目の前にしていた。

 地震大国の日本で、世界で最も厳しいといわれる耐震基準をクリアして原子炉を開発、設計してきた東芝や日立の技術力は、世界から求められていた。メーカーもそれを売りに世界中の原発需要でひと儲けしようと、そろばんを弾いていたところだったのだ。

 東芝は2006年2月に米大手原発プラントメーカーのウェスチングハウスを54億ドル(当時の為替レートで約6210億円)もの巨費を投じて買収。さらに、いちプラントメーカーにとどまらず、燃料調達なども手がける“原子力の総合企業”に生まれ変わるべく舵を切り、07年8月にはカザフスタンでウラン権益を確保するなど、事業構造の転換を急いできた。

 中期経営計画では15年度までに世界で39基を受注し、原子力事業だけで売上高1兆円という目標を掲げている。その目標も13年度に達成可能で、10年度は約6000億円の原子力事業での売り上げを見込んでいる。

 利益面での貢献も大きい。東芝のもう一つの主力事業であるLSIなどの半導体事業が、価格変動と需給バランスによって浮き沈みが激しいのとは対照的に、毎年100億~150億円の利益を生み出す“読める”事業だったのだ。

 ウェスチングハウスの投資回収は当初17年間だったが12~13年で回収可能と見ていた。

 日立も同じくバラ色の未来を描いていた。30年までに世界で38基の原発新設需要を取り込み、09年度に2100億円だった原発売上高を20年度には3800億円まで引き上げる目標を立てていた。

 震災4日前の3月7日には、不採算事業だったハードディスクドライブ事業を米ウエスタンデジタルに売却し、原発をはじめとするインフラ事業に集中すると発表したばかりだった。

将来の飯のタネ”である原子力事業計画の見直し

 しかし、今回の福島原発の影響で、こうした事業計画はすべて見直しを迫られることになる。

図省略 http://diamond.jp/mwimgs/4/c/499/img_4ce7e182e8dac50f0e06eb52c38ff10526927.gif

 国内で原発の新設計画を進めることなど不可能に近い。すでに東電が進めていた青森県の東通原発1号機、2号機の新設計画はストップする見通しだ。そのほかも、ほぼすべてが凍結されるだろう。

 下表にまとめたのは海外の原発開発計画の一部だ。総電力量の約75%を原子力で賄う原発大国フランスは従来どおり新設計画を進めると宣言しているが、多くの国で計画が遅れるか、見直される可能性が高い。

 ある外資系証券アナリストは「東芝や日立が今までのように原子力事業から利益を積み上げていくことはかなり難しい」と予想する。今後を楽観できる要素は一つもない。

図省略 http://diamond.jp/mwimgs/f/b/501/img_fb77723ac93aa514313a04740d6c9ad534019.gif

 こうした急ブレーキで、東芝はウェスチングハウスを買収した際に発生したのれん代の減損処理を迫られる可能性がある。54億ドルもの資金を投じたが、その価値は目減りしている。

 だが東芝首脳は「原子力事業の将来のキャッシュフローが見えない段階で、今すぐに減損処理を迫られることはない」と断言する。

 また別の東芝首脳も、今回の震災で世界の原発新設計画がすべて止まることはないと話す。依然として現在稼働している原発の燃料需要やメンテナンス需要が見込め、今までと同様に売上高と利益は積み上がっていくはずだと強気の見通しを示している。

 福島第1原発の危機的状況を前に、あまりに楽観的な将来見通しのように思えるが、その背景には、今回の事故は東電と政府の後手に回った対応が原因であり、東芝と日立は“被害者”だという思いがあるからだろう。

 今、東芝と日立の原子力事業のエンジニアたちは、国家の危機に対し被曝覚悟で福島で奮闘している。一方、被災した自社の拠点の立て直しにも追われている。そしてそのうえで、“将来の飯のタネ”である原子力事業計画の見直しという、3重の試練に直面しているのである。

http://diamond.jp/articles/-/11636

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「東電がロボット提供の申し出拒否」…仏企業 (原発作業ロボを日本が拒否と仏紙)
2011-03-29 20:11:34
(読売新聞) 2011年03月29日 11時41分

 【パリ支局】福島第一原発事故で、フランスのベッソン産業エネルギー・デジタル経済担当相は28日、東京電力からの支援要請を受け、仏原子力大手アレバ社が専門家2人を日本に派遣すると明らかにした。産業界との会合で述べた。

 放射能汚染された水の処理の専門家という。必要な人員を「何人でも送る用意がある」とも表明した。

 一方、アレバ社は28日、本紙に対し、原発事故用にフランスで開発された作業用ロボットの提供を申し出たところ、東京電力が断ったと明らかにした。

 ロボットは1986年のチェルノブイリ原発事故後に同社や仏電力公社が開発にあたり、高性能カメラや作業用アームを搭載。放射線量が高い場所で、遠隔操作により作業ができる。アレバ社報道担当は、「東京電力はロボット使用は決定的な効果がないと判断したようだ」と述べた。

http://news.goo.ne.jp/topstories/world/178/35b5f0533616c96ae89aa39daa0d2fd5.html
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【東日本大震災】東芝,原発事故と停電対策に1000人規模の人材を投入 (Unknown)
2011-03-30 12:57:32
 東芝は,東日本大震災後の電力システム復旧に向けた同社グループの対応状況を公表した。原子力発電所の事故に対しては,既に100人以上の技術者を現地に派遣,今後も状況に応じて増強していく。700人の技術者から成る対策チームも設置済み。米国からの協力も受けながら,原子力発電所の安全性確保に取り組む。東北・関東地域における電力供給不足に対しても,150人の対策チームを設置して関連事業所をフル稼働させる。被災設備の早期復旧や定期検査・休止中の発電所の再開を急ぐ。

 まず原子力発電所の安全確保に向けては,地震発生直後に約700人の技術者から成る専門対策チームを設けた。設置場所は,本社と,原子力発電関連技術のエンジニアリング拠点である磯子エンジニアリングセンター。現在は24時間体制で情報の収集や分析,対策の立案をしている。福島第一原子力発電所と第二原子力発電所には,日本政府および東京電力からの要請を受けて,100人以上の技術者を派遣した。技術的な支援と検討をしている。今後も状況に応じて順次増強していくとする。米国の原子力関連企業からも,東芝に対して原子力発電所の安全確保に向けた支援の申し出があり,具体的に協議していると言う。申し出ているのは,グループ会社の米Westinghouse Electric Co. LLC,改良型加圧水型原子炉(APWR)供給でパートナーの米Shaw Group Inc.,大手原子力関連機器メーカーの米Babcock & Wilcox Co.(B&W)などである。

 次に東北・関東地域における電力供給不足の解消に向けては,本社に 150人から成る対策チームを設置した。電力会社の要請に基づき,被災設備の早期復旧や定期検査・休止中の火力発電所の早期再開に向けた支援に取り組む。早期復旧では,被災した東京電力や東北電力の火力発電所,変電所,開閉所などの早期復旧に向けて,技術員の派遣や部品・修理品の納期短縮などを実施する。火力発電所の早期再開では,技術員の派遣や部品・修理品の納期短縮を通じて定期検査中の火力発電所における運転再開の前倒しに協力するとともに,休止中の火力発電所の運転再開に向けた支援などを実施していく。このために,電力システムの基幹4事業場(京浜事業所,府中事業所,浜川崎工場,三重工場)生産能力を最大限に発揮させ,関連機器の生産と供給を進める。Nikkei Business Publications
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110328/190611/



東北地方太平洋沖地震後の電力システム復旧への当社グループ対応について
            2011年03月22日

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により被災されました方々に、心よりお見舞い申し上げます。

今回の震災により東北、関東地域の電力供給システムに多大な損害が発生いたしました。当社グループは、電力システム供給企業として、政府及び電力会社からの要請に基づき、他の関連企業との連携を図りながら、原子力発電所の安全確保ならびに、被災地域の一日も早い電力供給の復旧に向けて最大限の対応をしております。

原子力発電所の安全確保に向け、当社グループは、地震発生直後に、本社、原子力のエンジニアリング拠点である磯子エンジニアリングセンターに技術者約700人からなる専門の対策チームを設け、24時間体制で情報の収集分析や対策の立案を進めています。また、政府および東京電力からの要請を受け、現在、100名以上の技術者を福島第一、第二原子力発電所に派遣し、技術的な支援・検討を行っており、これからも状況に応じて順次増強していきます。さらにグループ会社のウェスチングハウス、ABWR供給のパートナーであるショー・グループ、米国の大手原子力関連機器メーカーであるB&W社をはじめ米国の原子力関連企業から当社に対して原子力発電所の安全確保の支援の申し出を受けており具体的な協議を行っております。これらのパートナーの協力も得て当社グループは引き続き全力で対策と支援を行ってまいります。

また、政府、電力会社が、東北・関東地域に広がる電力供給不足を一日も早く解消する努力をされている中で、当社グループは本社に150人からなる対策チームを設けました。電力会社の要請に基づき、東京電力、東北電力の被災した火力発電所および変電所・開閉所など送変電設備の早期復旧支援、定期検査中の火力発電所の運転再開前倒しに向けて技術員の派遣や部品・修理品の納期短縮、休止中の火力発電所の運転再開に向けての支援等、最優先に協力を行っています。今後も当社グループとして技術面でのサポートや設備の点検・修理、必要部品の早期供給等の支援を行っていきます。

さらに、電力システムの基幹事業場である京浜事業所、府中事業所、浜川崎工場、三重工場では、最大限の製造能力を発揮して、関連機器の生産と供給を行い、一日も早い電力システムの復旧に協力してまいります。  東芝  
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2011_03/pr_j2201.htm                      
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IAEA勧告要請、安全委「国内判断問題なし」 (Unknown)
2011-03-31 22:50:08
 国際原子力機関(IAEA)が、高濃度の放射性物質が土壌から検出された福島県飯舘村の住民に対し、避難勧告を検討するよう日本政府に促したことについて内閣府の原子力安全委員会は31日、「国内では総合的に判断しており、現状の判断に問題ない」という見解を示した。

 同委員会によると、日本では、空気中や摂取する飲食物に含まれる放射性物質の濃度などを測定し、人への影響を考慮しているという。

 代谷誠治委員は「我々は、人体に直接的に影響を与える所を評価しているので、より正確である」と説明した。

 一方、経済産業省原子力安全・保安院も31日、飯舘村での累積放射線量を試算した結果、「いま避難する必要性はない」との見解を示した。
(2011年3月31日20時25分 読売新聞)


福島原発30~45キロ3地点、年間許容量超す

 福島第一原発事故の影響を継続して調査している文部科学省は31日、福島県内の大気中の放射線量などの測定結果を公表した。
 同省は原発から20キロ圏の外側で積算の放射線量も計測している。3月23日正午過ぎから7日間計測できた、原発から約30~45キロの4地点中、3地点で、7490マイクロ・シーベルト(北西約30キロ、浪江町)、4449マイクロ・シーベルト(北西約30キロ、飯舘村)、3428マイクロ・シーベルト(西北西約30キロ、浪江町)を記録、自然界や医療行為以外で人が浴びてよいとされる年間許容量1000マイクロ・シーベルトを超えた。一般に健康に影響が出るのは最大値の約13倍、100ミリ・シーベルト以上とされる。
(2011年3月31日20時34分 読売新聞)


福島・飯舘村、水道水の摂取制限を解除へ (3月31日 22:20)
農産物制限「原発収束前の解除も」…農水副大臣 (3月31日 18:42)
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放射性物質 飯舘村、避難基準超す 日本にIAEA勧告 (毎日新聞社)
2011-03-31 22:59:59
毎日新聞 3月31日(木)11時21分配信

 【ウィーン樋口直樹】東日本大震災に伴う福島第1原発事故で、同原発から約40キロ離れた福島県飯舘村で測定された放射線レベルが、国際原子力機関(IAEA)の避難基準を超えていたことが30日、分かった。IAEAはウィーンでの記者会見で、同原発から20キロ以内を避難指示圏に設定している日本政府に対し、状況を「注意深く」評価するよう勧告したことも明らかにした。

【福島・飯舘村】2地点で放射性物質急増 福島・飯舘村など(28日発表)

 IAEAのフローリー事務次長は会見で、飯舘村での放射線レベルの測定値が「IAEAの作業上の避難基準のひとつを上回った」と述べた。その上で「我々は(日本政府に)状況を注意深く評価するよう勧告し、日本は既に評価中であることを示唆している」とも述べた。日本に対し事実上、地元住民への避難指示圏の見直しを促したものとみられる。

 IAEAのこうした見解は、福島第1原発からどこまでの範囲の住民に避難指示を出すべきかを巡り、新たな議論を呼びそうだ。

 IAEAによると、今月18~26日に同原発から25~58キロ圏で土壌のヨウ素131とセシウム137の量を調べた。その結果、飯舘村は土壌1平方メートル当たり約200万ベクレルだった。IAEAの避難基準の約2倍に相当するという。ヨウ素131かセシウム137かは明確にしていない。同村の測定値は1カ所のみで測られた散発的なデータで、あくまで初期的な評価だという。

 飯舘村は、避難指示圏の外側に設けられた屋内退避指示圏(福島第1原発から20~30キロ)のさらに外側にある。福島第1原発から遠く離れた場所で放射線レベルが突出していることについて、日本の文部科学省は「地形や風向きの影響と考えられる」としていた。

 一方、天野之弥事務局長は30日の会見で、原発の安全対策などに関する初めての高官級会議を6月20~24日にウィーンで開催すると発表した。IAEA加盟国の首相や外相などに招待状を送るという。


福島第1原発:2地点で放射性物質急増 福島・飯舘村など

 文部科学省は28日、福島第1原子力発電所から北西約40キロの福島県飯舘村で26日に採取した雑草1キログラム当たりから、過去最高値の放射性セシウム287万ベクレルを検出したと発表した。北西約45キロの川俣町でも過去最高値のセシウム57万1000ベクレルを検出。これまで減少傾向だった放射性物質が2地点で急増した。文科省は「採取場所が全く同じではなく一概に評価できないが、高いレベルの放射性物質が残留していることは確かで、農作物への影響を注視する必要がある」と説明した。

 飯舘村の雑草のこれまでのセシウム最高値は20日採取分の265万ベクレル。セシウムの半減期は約30年で、採取地点付近では拡散しないで残留している可能性が高い。一方、放射性ヨウ素は20日採取分の254万ベクレルから103万ベクレルに減少。半減期が8日のためとみられる。

 川俣町で26日採取された雑草のセシウムは25日採取の49万7000ベクレルを上回ったが、放射性ヨウ素は66万3000ベクレルから48万8000ベクレルに下がった。これも半減期の差が影響しているとみられる。

 27日に採取した水道水1キログラムでは、茨城、栃木、埼玉、東京など10都県で放射性ヨウ素0.34~37ベクレル、栃木、東京など6都県で放射性セシウム0.25~5.2ベクレルが検出された。

 28日午前9時までの24時間で採取した1平方メートル当たりの定時降下物(雨など)は茨城県で放射性ヨウ素74ベクレル、放射性セシウム21ベクレルを検出。他に9都県でヨウ素6.3~59ベクレル、6都県でセシウム5.5~36ベクレルを検出した。

 都道府県に設置するモニタリングポスト(自動観測局、MP)は28日午後5時時点で茨城県0.229マイクロシーベルトなど7都県で1時間当たりの大気中放射線量の通常値を超えた。いずれも数値は低下傾向。

 一方、原発から20~60キロ離れた福島県内の41カ所の屋外で28日午前6時~午後4時にモニタリングカーで調査したところ、1時間当たりの大気中放射線量は0.3~77.6マイクロシーベルトだった。【篠原成行】


東日本大震災:福島・飯舘村、雑草にセシウム265万ベクレル 島根でも微量ヨウ素

 文部科学省は24日、福島第1原子力発電所から北西約40キロの飯舘村で20日採取した雑草から1キログラム当たり254万ベクレルの放射性ヨウ素、265万ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。文科省は「データを再検討するが、家畜が食べた場合は影響がある可能性が高い」と説明した。定時降下物(雨やちりなど)からは、西日本の島根県でも微量の放射性ヨウ素が検出された。

 文科省は18~21日に原発から25~45キロの6市町村の雑草を調査。飯舘村以外の放射性ヨウ素、放射性セシウムの最高値(単位ベクレル)は▽ 南相馬市(49万7000、2万4900)▽いわき市(69万、1万7500)▽川俣町(30万8000、13万8000)▽田村市(7万5700、5万)▽小野町(20万1000、7万3800)。

 23日に8地点で採取した土壌調査でも飯舘村が最高値で、それぞれ20万ベクレル、4万5000ベクレルを検出した。

 23日に初めて採取した原発沖約30キロの海域8カ所の海水1リットル当たりからは、放射性ヨウ素24・9~76・8ベクレル、放射性セシウム11・2~18・2ベクレルを検出。水中濃度限度は各40ベクレル、90ベクレルで、放射性ヨウ素が3カ所で限度を上回ったが、文科省は「すぐには影響はでないが、海洋生物への蓄積も考えられ長期的な調査が必要」と分析した。

 23日採取の水道水1キログラム当たり、10都県で放射性ヨウ素0・75~56ベクレル、6都県で放射性セシウム0・13~9・3ベクレルを検出。24日午前9時までの24時間の定時降下物は1平方メートル当たり、13都県で放射性ヨウ素0・96~1万6000ベクレル、11都県で放射性セシウム4・7~210ベクレルを検出した。

 モニタリングポスト(自動観測局)での大気中の放射線量は、24日午後5時時点で山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川の8都県で通常値を超えた。

 福島県では24日、原発から25~60キロの屋外27カ所で計測。1時間当たりの放射線量が最高だったのは浪江町(北西約20キロ)の106マイクロシーベルト。23日午前に103マイクロシーベルトだった飯舘村(北西約32キロ)は30マイクロシーベルトに下がった。【篠原成行】
 ◇家畜食べれば影響も

 飯舘村の雑草から検出された高濃度の放射性物質の数値について、野口邦和・日大歯学部専任講師(放射線防護学)は「同じ地域の野菜や土壌にも同じように放射性降下物が付着しているだろう」と分析。唐木英明・元東大アイソトープ総合センター長(獣医学)も「かなり高い濃度。もし畜産牛が食べれば牛乳や肉からも検出されるだろう」と話す。

 農林水産省は19日、東北、関東の畜産農家に▽原発事故の前に刈り取った飼料を使う▽家畜の飲用水には水道水や井戸水を使う▽当面は放牧をやめる--ことを呼びかけており、汚染された牧草を畜産牛が食べる可能性は現時点では低いとみられる。飯舘村は高級和牛ブランド・飯舘牛を育てる畜産農家が多いが、村産業振興課は「雑草を食べることはあり得ない」と話す。

 野口氏は「今後農作物を作ったり人が立ち入っても大丈夫なのか。現在の避難・屋内退避エリアでいいのかも検討した方がいい」と話し、政府に更に詳しい調査を求めている。【小島正美、五味香織】
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福島原発30~45キロ3地点、年間許容量超す (毎日新聞)
2011-03-31 23:47:27
 福島第一原発事故の影響を継続して調査している文部科学省は31日、福島県内の大気中の放射線量などの測定結果を公表した。

 同省は原発から20キロ圏の外側で積算の放射線量も計測している。3月23日正午過ぎから7日間計測できた、原発から約30~45キロの4地点中、3地点で、7490マイクロ・シーベルト(北西約30キロ、浪江町)、4449マイクロ・シーベルト(北西約30キロ、飯舘村)、3428マイクロ・シーベルト(西北西約30キロ、浪江町)を記録、自然界や医療行為以外で人が浴びてよいとされる年間許容量1000マイクロ・シーベルトを超えた。一般に健康に影響が出るのは最大値の約13倍、100ミリ・シーベルト以上とされる。
(2011年3月31日20時34分 読売新聞)


福島第1原発:累積放射線量 浪江町で年間限度の7倍超

 文部科学省は31日、福島第1原発から北西約30キロの福島県浪江町の国道399号沿いで23~30日の166時間の累積放射線量が人工被ばく年間限度(1000マイクロシーベルト)の7倍超となる7490マイクロシーベルトに達したと発表した。

 そのほかに累積放射線量が年間限度を超えたのは北西30キロの飯舘村で4449マイクロシーベルト、西北西30キロの浪江町の別の地点で3428マイクロシーベルト。

 30日に採取した水道水1キログラムでは10都県で放射性ヨウ素0・35~17ベクレル、5都県で放射性セシウム0・45~3・4ベクレルを検出。文科省が調査を始めてから初めて、新たに岩手県で放射性ヨウ素が0・36ベクレル検出された。

 大気中の環境放射線量を測定するため都道府県に設置するモニタリングポスト(自動観測局)は、31日午前9時時点で7都県で通常値を上回った。一方、原発から20~60キロ離れた福島県内29カ所で31日午前6時~午後3時にモニタリングカーで調査したところ、1時間当たりの大気中の放射線量は0.4~55.6マイクロシーベルトだった。

 また、文科省はモニタリングカーによる調査で30日、福島市で29日夕までの24時間で放射線量の増減がなかったと発表したが、実際には測定器の電池切れで線量測定ができなかったことを明らかにした。【鈴木梢】
毎日新聞 2011年3月31日 22時12分


東日本大震災:放射性物質規制値超え、福島県産野菜43品中25品 既に摂取制限対象

 厚生労働省は30日、福島県産の野菜43品を対象にした緊急時モニタリング検査で、25品から食品衛生法の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたと発表した。最大値を示した野菜は、大玉村で28日採取したホウレンソウで、放射性セシウムが規制値(1キログラム当たり500ベクレル)の68倍の3万4000ベクレル、放射性ヨウ素が規制値(1キログラム当たり2000ベクレル)の約3倍の5900ベクレルを検出した。

 他に高い値で放射性物質が検出されたのは本宮市のクキタチナから放射性セシウムが約37倍▽田村市のホウレンソウから同約33倍▽西郷村のサントウナから同約31倍など(採取はいずれも28日)。同省によると、今回の検査で暫定規制値を超えた野菜はすべて、摂取制限と出荷制限の対象品目になっているという。【佐々木洋】
毎日新聞 2011年3月31日 東京朝刊
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なぜ安全性を強調しなければならないのか (上杉 隆 【第169回】 2011年3月31日 )
2011-04-03 21:33:14
 少し考えれば、「α線で遮断しやすく、遠くまで飛ぶことはない」と「プルトニウムの危険性」が別問題であることは誰にでもわかる。

 にもかかわらず、なぜ安全性を強調しなければならないのか。そもそもプルトニウムの測定の単位だけが、これまでの放射性物質の測定の「一平方メートル当たり」ではなく、「一キログラム当たり」になっているのも不思議だ。

 大気に撒かれた放射性物質が深く土の中に潜るのには当然に時間がかかる。なぜ表面ではなく、土壌を掘り起こしての計測になるのか。パソコンの前に座ってばかりいる“ITジャーナリスト”に調べてもらいたいものだ。

 また、プルトニウムは肺に入らなければ安全で問題がないとするような「安全デマ」報道も続いている。

〈東京電力によりますと、検出されたのは、プルトニウムの仲間でプルトニウム238と239、それに240の3種類でグラウンド付近の場合、このうちのプルトニウム238が1キログラム当たり、およそ0.54ベクレル検出されました。この濃度は、国内の通常の土壌に含まれる濃度や、過去に大気圏内で行われた核実験で国内に降ったプルトニウムの濃度ともほぼ同じレベルです。仮に同じ濃度の食べ物を1キログラム食べたとすると、被ばく量は成人の場合、 50年で0.12マイクロシーベルトになります。これは一般の人が1年間に浴びても差し支えないとされる1ミリシーベルトの8000分の1ほどの値です〉(29日/NHKニュース)。

 テレビに登場したある原子力の専門家は、もっと直接的な表現でこれを説明したという。「仮に、プルトニウムを食べたとしても、命に別状はありません。よって神経質になる必要はありません。デマを信じないでください」(元動燃職員)

欧米メディアと日本メディアの“温度差”

 29日、「ニュースの深層」(朝日ニュースター)に出演した名古屋大学医学部の太田勝正教授はプルトニウムが人体に与える影響についてこう語った。

「そうですね、世界中でプルトニウムが恐れられている理由には内部被曝の問題があります。空気中に舞ったり、飲食物と一緒に体内に取り込んで、その粒子を吸い込んでしまって肺に到達しその内壁に付着した場合は、半永久的に放射線を出し続けることから、かなりの確率でがんになるリスクが高まり、危険と言えるでしょう」

 太田氏も指摘した通り、プルトニウムが危険だといわれる理由は、その長い半減期にもあるだろう。

 世界中ではプルトニウムの検出をもって、いよいよ日本は取り返しのつかない原発事故を起こし、政府はコントロールが失いかけているとみ始めている。

 欧米、とくにフランスを筆頭とした国々は、日本のことを悲惨な震災に見舞われた被災国というよりも、原子力エネルギーを管理できない核犯罪国家とみなし始めている。

 このままではG8の一員である先進国としてどころか、放射能汚染を放置する無政府状態の最貧国として扱われる日が近いのかもしれない。

 それでも、東京電力と政府と大手メディア、そこに群がる御用評論家たちは、プルトニウムは「危険ではない」と強弁している。

 最後には、日本人はプルトニウムに耐性があるのだ、などと言い出して、これ以上、世界に恥をさらさないことを祈るばかりだ。
以上、http://diamond.jp/articles/-/11689?より抜粋
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福島原発事故、周辺の地下水や海「著しい汚染」の恐れ=科学者団体 トムソンロイター ([ワシントン 28日 ロイター])
2011-04-08 23:21:14
2011年3月29日(火)13:02 
 科学者などで成る国際的な非営利団体「憂慮する科学者同盟」は28日、東京電力<9501.T>福島第1原子力発電所の事故の影響について、周辺の地下水、貯水池、海水が発電所から漏れ出た高濃度の放射能による「著しい汚染」に直面していると指摘した。

 数日前は、放射能は広大な海に流れ出れば薄まり、人体に影響を及ぼすリスクはないとの見解を示していた。しかし、28日に2号機のタービン建屋から外部につながる坑道(トレンチ)で高濃度の放射性物質を含む水が検出されたことから、より厳しい見解を示した。

 地震で冷却機能を失った原発にはこれまで、海水を注入するなどの作業が行われてきた。専門家は、各種報道によれば、使用済み核燃料棒プールの水は満杯、あるいは放射能物質を含む水が流れ出ている可能性があると指摘。

 原発の構造に詳しい物理学者である「憂慮する科学者同盟」のエドウィン・ライマン氏は28日の電話会見で「これによって海水が深刻な汚染に見舞われないとは考えづらい。希薄化される一方で、一部は再濃縮されることもある」と述べた。

 環境や人体への影響を正確に予測するには、日本側からのさらなる情報が必要としている。また、東京の水道水で低レベルの放射能物質が検出されたことと、最新の事実との関連性には言及していない。

 ライマン氏は、原発を冷却するために使用された海水は放射能物質を含み、周辺の海、貯水池、地下水を汚染する可能性とともに、原子炉内外から漏れ出た水が危険と指摘した。

 週末には2号機のタービン建屋地下にたまった水から原発通常運転時の10万倍という高濃度の放射性物質が検出されたと報道されたが、「憂慮する科学者同盟」の原子力の安全性プロジェクトの責任者で原発エンジニアのデビッド・ロックバウム氏は「(放射性)物質が漏れ出す経路はいくらでもある」と指摘。1号機、3号機、4号機は建屋が崩壊しているため、もはや汚染が防御されない状態で、建屋内にたまった水が蒸発することで、放射性物質が拡散する可能性があると述べた。
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福島原発「海の汚染」 東電のデータ、信頼性に疑問も (産経新聞2011年4月5日(火)08:00)
2011-04-08 23:23:35
 ■拡散で「魚の影響小さい」

 東京電力福島第1原子力発電所から、高濃度の放射性物質(放射能)に汚染された水が海に流れ続けている。4日には、低レベルの放射性物質を含む廃液を大量に放出し、海の汚染がさらに広がるのは避けられない。健康への影響は今のところ確認されていないが、東電は分析にミスがあったとして海水の汚染データの公表を一時中断し、同日再開するなど、肝心のデータの信頼性にも疑問が生じている。

 ◆コウナゴからヨウ素

 厚生労働省は4日、茨城県北茨城市の漁協で水揚げされたコウナゴから、1キロ当たり4080ベクレルの放射性ヨウ素131などが検出されたと発表した。

 放射性ヨウ素131は、福島第1原発周辺で、基準値を大きく超えて検出されている。ただ、壊れて放射能が半分になる「半減期」が約8日と短いことなどから、国際評価でも魚や肉に関する暫定基準値は定められていない。

 原子力安全委員会も、「水を通して摂取するよりも、体への影響は小さい」と説明するが、厚労省は同日、放射性ヨウ素が検出されたコウナゴを食用にしないように要請し、新たに基準値を定める方向で検討を始めた。

 一方、水産庁の調べでは、半減期が30年と長く暫定基準値のある放射性セシウムについて、3月23日~4月1日に千葉、茨城県沖などで採取されたイワシやアジ、ハマグリなどから、基準値を超えるものは検出されなかった。

 東京海洋大の石丸隆教授は、放射性物質が検出されたとしても、「現状は低レベルで問題ない。一年中食べ続けるわけではないので直接の影響はなく、心配はいらない」と、不安を抱える消費者に呼びかける。

 ◆数日かけて海底沈殿

 福島第1原発から漏れ出た汚染水はどこにいくのか。水産庁によると、海に流れた放射性物質は拡散して濃度が非常に薄くなり、数日かけて海底に沈殿する。さらに、海底を移動して、水深約3800メートルの深海に沈んでいく。

 また、独立行政法人・水産総合研究センターの中田薫研究主幹は「岩手県沿岸では南に向かって流れる津軽暖流があり、放射性物質が福島第1原発よりも北に流れる可能性は低い」とし、福島県よりも北の漁場は心配がないという。

 一方で、この時期、海を南下していくイワシやサバなどの回遊魚がいるが、石丸教授は、放射性物質が海流に乗って千葉県沖まで南下した場合、「黒潮に乗って拡散がさらに進む」ことから、放射性物質の濃度は薄まるとみる。

 ◆特定臓器の蓄積ない

 放射性物質を取り込んだ魚は大丈夫なのか。福島第1原発周辺で検出されているヨウ素131について、水産庁は「ヨウ素は急速に減っていくため、魚が取り込んでも影響は少ない」(研究指導課)とする。

 気になるのは半減期が長いセシウム137だが、水産庁によると、セシウムは魚が取り込んでも尿やエラから排出されやすく、約50日間で半減して特定の臓器に蓄積することはない。

 放射能で汚染されたプランクトンを魚が食べることで、放射性物質の濃度が高くなる「生物濃縮」の影響も小さいという。生物濃縮は、海中濃度に比べて水銀が約600倍、ダイオキシンが約1万2千倍。これに対し、セシウムは大型魚とプランクトンでほぼ同じ、5~100倍だ。

 石丸教授は「放射性物質の濃度が高い場所があっても、魚はずっと同じところにいない。高濃度の状況が長く続かない限り、心配はない」と話す。ミスが相次ぐデータの公表には「疑心暗鬼になる。正しい情報を一刻も早く公表すべきだ」と東電の姿勢を批判した。
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放射能汚染水、海洋生態系への影響は? (Christine Dell'Amore 2011年4月4日(月)18:55)
2011-04-08 23:36:56
 3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故の影響で、高濃度の放射能汚染水が海中に流れ出ている。止まらなければ、海洋生物への放射能汚染が深刻化する可能性があると専門家は指摘する。

「New York Times」紙によると、福島原発付近の太平洋沿岸で海水調査が3月23日から開始され、セシウム137、ヨウ素131をはじめとする放射性同位元素の濃度上昇が確認された。

 陸海を問わずすべての生物が一定量の電離性放射線を自然に浴びている。高周波の放射線は高エネルギーのため、被曝するとDNAの損傷を招くが、軽度のDNA損傷であれば自然に治癒する。だが、人工放射線は大量に被曝すると修復は困難になりやすい。

 原発周辺の海水の放射能濃度は日ごとに変動していたが、3月30日には法律で定めた濃度限界の3355倍に相当するヨウ素が検出されたと、原子力安全・保安院はAP通信に述べた。

 4月1日現在、これは事故後最高の数値で、放射性物質の海への流出を示すという。だが、汚染水のルートは複数あるとみられ、流出源は突き止められていない。また、3月28日には安全基準の20倍にあたるセシウムも検出されたと「New York Times」紙が伝えている。

◆放射能による遺伝子の突然変異

「放射性物質が海洋に入ると、生物にさまざまな影響を及ぼす可能性がある。死滅の直接的な原因となる場合もあれば、奇形の発生や、食物連鎖を通じて体内に蓄積する“生物濃縮”を起こす場合もある」とアメリカ、ニューヨーク市立大学リーマン校海洋河口研究所(Laboratory for Marine and Estuarine Research)所長のジョセフ・ラクリン氏は警鐘を鳴らす。「ある一定量の死滅を招く可能性がある。さらに心配なのは被曝による遺伝的な影響だ。遺伝子の変異によって繁殖率が低下する恐れがある」。

 一方、コロラド州立大学の放射線生態学者F・ワード・ホイッカー氏はメールでの取材に対して次のように述べる。「現時点で確認されているヨウ素とセシウムの濃度レベルは、大量死や繁殖率の低下を招くほどではない。炉心損傷による放射能漏洩で、太平洋岸沖の広い範囲で海洋生物へ直接的な影響が出る可能性はまずないとみている。また、法令基準で海洋生物への影響をはかることは意味が薄い。リスクを正確に知るには、福島第一原発周辺の海水や魚類などの実際の放射性ヨウ素濃度を把握することが重要だ」。

◆放射能の影響を最も受けるのは?

 福島原発周辺の放射能汚染が今後も広がれば、海洋生物へ影響を与える可能性はあるとホイッカー氏は指摘する。「最も可能性のある影響は、周辺に生息する魚類の繁殖率低下だろう。海洋生物の卵や幼体は放射線の影響を非常に受けやすく、DNA変異が起きる可能性がある」。

 前出のラクリン氏は次のように予測する。「DNAが変異した生物の大部分は生存し続けることができないが、一部の変異は次世代に引き継がれる。どちらにしても、被曝により長期生存能力が損なわれる可能性が高い」。

◆放射能の影響は一時的?

 フロリダ州立大学の海洋化学者ビル・バーネット氏は、「海洋生物が決定的な悪影響を短期的に受ける可能性がある」と話す。「ただし、ヨウ素は半減期が8 日間と短いため、放射能汚染水の漏出を止めることができれば一時的な問題で済むだろう。だが、セシウムは半減期が約30年と長いため、影響の長期化が懸念される」。

◆食物連鎖による放射能濃縮

 ラクリン氏は別の問題点として、「海藻や植物プランクトンを海洋生物が摂取した場合、食物連鎖を通じて放射性物質が濃縮、蓄積される」可能性も指摘している。

◆放射能に対する海の回復力

 最後にホイッカー氏は、「放射性物質は海流の循環により拡散して希釈される」と述べる。「時間の経過と共に放射能が減衰し分散すると、周辺海域の状態は改善する可能性がある。海には自然の回復力があるといえる。ただし、大量の放射性物質の流出による海洋生態系への影響はこれまでほとんど研究されていない。有効なデータといえば、1950~60年代に太平洋で英米仏が盛んに行った核実験データ程度だろう」。

 ラクリン氏も次のように警告する。「短期間であれば問題はない。だが、漏出が数カ月も続くようであれば、日本政府は海洋生物への影響をより深刻にとらえ、対処しなければならないだろう。海岸はチェルノブイリのように石棺で封じるわけにはいかないのだから」。
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「国は事故を過小評価」専門家から批判の声も (/yomiuri/world)
2011-04-15 01:35:05
2011年4月12日(火)20:20

 福島第一原子力発電所の事故の国による評価は、事故発生直後の「4」が3月18日に「5」に、そして20日以上たった4月12日になって最悪の「7」に変わった。

 専門家からは「国は事故を過小評価しようとしてきたのではないか」との批判の声も上がっている。

 原子力安全委員会によると、外部に出た放射性物質の大半は、1~4号機で水素爆発や火災などのトラブルが相次いでいた3月15日頃までに放出されていた。15~16日にかけ、放射性物質の放出総量が跳ね上がっており、安全委は2号機の圧力抑制室が15日に損傷し、大量の放射性物質が放出された結果と見ている。

 当時、すでにフランス原子力安全局は「6」、米民間機関「科学国際安全保障研究所」も「6または7」との見解を示していたが、保安院は「健康にかかわるものでない」として見直す姿勢は見せなかった。

 しかし、18日には国際世論に押されるように「5」に変更した。保安院の西山英彦審議官は「圧力や温度などが大きく変動し、評価が難しかった」と弁明。その後は「6にするには早い」と繰り返してきた。
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