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バルダイ:EU・ロシア関係は見直し&一極妄想解剖

2020-10-23 22:47:25 | 欧州情勢複雑怪奇

毎年秋に開かれるロシアのシンクタンク「バルダイ・クラブ」の会議が今年も行われた。

この催しはプーチンが最終セッションに出てきて、かなり率直なことを言うので西側主流メディアが無視しようとも注目はされている。

名高い、テロリストっていいますけど彼らは傭兵、俺らはいくら払われているかも知ってる、と西側のジャーナリスト向けに言い放ったのもここ。

去年は、中国の早期警戒システムの構築をロシアは手伝っていると明らかにし、この中露間の包括的戦略関係はますます充実しちゃったとちょっとした衝撃が走った。そんなものなんでもないんだ~と言いたい人はそう思っていればいい。

ロシアは中国の早期警戒システム構築を支援してる by プーチン

 

今年は、プーチンの登場前の、ラブロフ外相がハイライトされたセッションが興味を引いている模様。アメリカからジョン・ミアシャイマー、イギリスからドミニク・リーベンなどが登場していた。

Valdai Club Presents Its Annual Report ‘History, To Be Continued: The Utopia of a Diverse World’

https://valdaiclub.com/multimedia/video/live-valdai-club-presents-its-annual-report-the-utopia-of-a-diverse-world-how-history-goes-on/

 

このへんのレベルの高いインテリのさんたちは程度の差や見方が異なっていても、基本的に、西側主流メディアとNATO推進派であるAtlantic Councilなんかがやってる、一極支配的な言辞と行動に非常に批判的で、既にもはやそのフェーズも過ぎて、もう無理、もうそんなの出来てないという考えに傾いているといっていいと思う。

今回の「歴史、続きはまた後で:多様な世界のユートピア」という奇妙な遊びっぽいタイトルはそれを物語ってるのかなと思う。いろいろあるだろうが歴史は続いて行く、それは、だってそりゃ多様な世界としか言えない世界でしょ、といった感じだろうか。

冗談っぽいけど、これはつまり、ぎゅーぎゅーに人々の思考、ものの見方を締め付けてる「一極支配モデル」はもうありませんということでしょう。

「歴史の終わり」とかいう、リベラルデモクラシー万歳主義を書いた人は、本当に恥ずかしいおっちょこちょいだった。もう忘れてあげたいぐらい馬鹿。

 

■ EUとは話そうにも話せないの

で、その中でラブロフが1カ月半ぐらい念押ししながら、あっちでもこっちでも話している1つの重要な問題がここでも出されていた。

それは、EUとの関係はもはや「business as usual(いつもの通り)」とはできないということ。

2カ月ほど前ベラルーシで騒乱が起こった頃に、ロシアのラブロフ外相がEUとの関係が困難になってきたという認識を示していたことが初期の言明ですかね。

ルカちゃんソチへ行く & EUドイツの属州路線

そして、ナワリヌイ事件が来て、ドイツはわんわん大騒ぎをして、野党指導者を毒殺しようとしたプーチンという説を広め、9月末に、こんな国となど協調などできません!と、いう論調を作った。

欧州委員会のトップであり、かつ、世界経済フォーラムの理事でもあるフォンデアライエンの発言が、この話のピーク。

フォンデアライエンは、

「ロシアとの緊密な関係を主張する人たちに、私はこう言おう、アレクセイ・ナワリヌイを高度な化学物質で毒をもったことは偶然ではない。

私たちはこのパターンを、グルジアでもウクライナでも、シリアでもソールズベリーでも見ている。そして、世界中の選挙介入。このパターンは変わらない」

とロシアをなじって、こんな国と和解などできないと結んだわけ。

Ursula von der Leyen warns over Russia rapprochement

https://www.ft.com/content/68001b80-145d-4741-99cb-e5003ff6370a

 “To those that advocate closer ties with Russia, I say that the poisoning of Alexei Navalny with an advanced chemical agent is not a one-off,” said Ms von der Leyen, a former German defence minister. “We have seen the pattern in Georgia and Ukraine, Syria and Salisbury — and in election meddling around the world. This pattern is not changing.”

 

大笑いするしかないんだけど、現在のドイツはその路線一色になって、もはや誰も覆せない状況。

昔の国会議事堂放火事件を思い出すとこの間書いたけど、そうなってる。きっぱり。

ワイマールからヒトラーへ v.2(ただし気分とカッコだけ)

 

事実として、既に70年ぶりにウクライナ侵略をやってのけたわけだから、この人たちは相も変わらず、他人を下等だとみなして侵略したがる人たちだ、以上、って感じでもう別にドイツについて弁解する必要ってないんだけど、でも1/3ぐらいのドイツ人(殊に東ドイツを知ってる人たち)には、とても気の毒な感じはする。

 

で、それを受けてラブロフが、これはもうEUとはしばらく話し合うことはできないだろう、という認識を示し始めた。

10月14日付けの中国Global Timesもこのラブロフの発言を拾っていた。

西側の外交方針に責任を持っている人たちは、相互に尊重しあう対話の必要性を理解していない。我々はおそらく彼らとしばらく対話を停止する必要があるだろう

"People who are responsible for the Western foreign policy and do not understand the need for mutually respectful dialogue, we probably have to suspend dialogue with them for a while. Especially since [President of the European Commission] Ursula von der Leyen is saying that the geopolitical cooperation with the current Russian authorities is not working. So let it be if that's what they want," Lavrov said at a session of the Valday discussion club.

Russian FM Lavrov Says Moscow May Stop Dialogue With EU if Bloc Doesn't Respect Russia

https://www.globaltimes.cn/content/1203423.shtml

ラブロフは機会あるごとに同じ趣旨のことを言ってた。

Russia-EU relations unlikely to be good in foreseeable future, says Lavrov 

https://tass.com/politics/1212181

"It is unlikely that [the relations] will become good in the foreseeable future, but it will not be our fault. We are always ready to restore them, normalize and rejuvenate them on an equal and mutually respectful basis," he said.

 

■ 枠組みが変わる

ということで、今後どういう効果が出てくるのかわかりませんが、EUとロシアの関係は、今後も現在の制裁だらけの関係が続くことはとりあえず確定ですね。

ノルドストリーム2の行方も相当怪しくなった。バルト三国とロシアの間には未だにソ連時代の電力とかガスが通っているところがある(どころか多分かなり?)はずなので、そこらへんも見直しになるのではなかろうか。買いたくないなら買わないでいいわけだからね。

 

また、ロシアとドイツの間のナラティブも変わるでしょうし、おそらく、ロシアは今後もっとたくさんのことを言い出すのではあるまいか。

というのは、そもそも、ソ連が崩れる時、ゴルバチョフは西側と、特にドイツと仲良くやっていける将来を見てたわけですよ。信じちゃった、ゴルビーはアホやねんと言ってもいいけど、騙したドイツの性質の悪さを見る方が、人間としては正しい姿勢かもしれないですね。(一部ドイツと一部アメリカ、というべきだろうけど)

      • ベイカーは、シュワルナゼに、「NATOの範囲または戦力は東には動かないという厳格な(iron-clad)保証」を約束した。
      • そして、同日、モスクワで、ゴルバチョフに対してあの有名な一言が来る。この同盟(NATO)は「東には1インチ」も動かないという、それ。
      • 1990年2月、ドイツのヘルムート・コールも、同じことをゴルバチョフに語る。

NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた

 

しかし、第二次バルバロッサ作戦のようにウクライナ侵略は発生し、懲りずに、東方拡大を続けているのがドイツ。もちろん西側全体ではあるが大国としてEUを引っ張っているのはドイツ。便益を得てるのもそう。であれば責任ないわけもない。

 

で、今回ロシア政府がはっきりさせたのは、その時代が終わった、ということでしょう。

上述の通り、具体的に何を意味するのか現時点ではわからないけど、ロシアはヨーロッパ人エリートが勝手に作りまくった欧州なんちゃらかんちゃらというシステムの中にたくさん名前を連ねているわけですが、これも切っていくのではなかろうか・・・。多分。

ドイツがEUを代表して、お前は敵だと叫んでいるんだったらそりゃもう協力なんかできるわけもない、ということ。

 

■ ナラティブも変わる

今後は多分、インチキな話に乗らない言説がロシアにおいては主流となることは疑いもないですね。

「ホロコースト」犠牲者の4割はソ連市民

「ホロコースト神話」(西側謹製)が崩れてる

 

ソ連に苦労してもらってナチを倒して、日本を倒して、その果実を盗んだアメリカとイギリスが罰当たりなのは紛れもないけど、それにやすやすと与したドイツ(と日本)は救われない。

WW2の決定的な勝者はソ連だよと人々が言うの巻

 

(ってことは、MRA問題にいずれ到達するのだろうか? いやぁさすがにそれはない、と一応思ってるけど、でもちょっと楽しみが増えた。)

 

■ 風邪の心配をするプーチン ^^;

で、バルダイ会議の最終日に出てきた今年のプーチンは、謎の一言を残した。

我が国を強くしつつ、世界を、他の国々で起こっていることを見るに、ロシアが徐々に終焉を迎えることをまだ待っている人たちに私はこう言いたい。

私たちが心配しているのはただ1つ、あんたの葬式でどうやったら風邪をひかないようにするかだけ。

"Strengthening our country and looking at what is happening in the world, in other countries, I want to say to those who are still waiting for the gradual demise of Russia: in this case, we are only worried about one thing — how not to catch a cold at your funeral", Putin said on Thursday at a meeting of the Valdai Discussion Club.

Putin to Russia's Ill-Wishers: We Only Worried About How Not to Catch Cold at Your Funeral

https://sputniknews.com/russia/202010221080850196-putin-to-russias-ill-wishers-we-only-worried-about-how-not-to-catch-cold-at-your-funeral/

 

コロナの折、皆様安心して葬儀にも出られませんものね、などと受け取ってももちろんOKだろうけど(笑)、いやしかし、グサッという意味だとももちろん取れる。

どこかがひっくり返るような大騒ぎになった時に、どうやって影響を最小限にするかに腐心してんだよ、ということでしょう。

 

ということで、今年はホントにたくさんの暴露ものがあって、それを整理しているロシアとも言えますね。

 

■ 関連記事

成り行きとしては、リベラル勢の危機ですが、でもまぁthe Westの危機ですね。これしか文明がないかのようなことを教えてた(つまり一極妄想派ってこと)日本はホントはとっても危機。でもきっと無視するでしょう。私たちって金魚鉢の中で世界を見てるようなものだから(笑)。

 

田岡俊次の「古い」解説&リベラル勢の危機

 


 

 


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1 コメント

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濡れ衣と約束破りの西側暗黒外交! (ローレライ)
2020-10-24 19:53:58
イランやロシア中國に濡れ衣で制裁してNATOは不拡大約束破り、日本は尖閣棚上げ破りをして東側の悪魔化非難が前提として外交している。
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